兵法三十六計から学ぶ!現代ビジネスに通じる処世術!

『兵法三十六計』は、兵法における戦術を六段階三十六通りに分けてまとめた中世頃の中国の兵法書です。
著作年代も著者名もはっきりしていませんが、全体は六部に分かれ、優勢に処する計として勝戦、攻戦、併戦の三部と劣勢に処する計として敵戦、混戦、敗戦の三部に分かれています。
この二種類の計は多くの兵家の、敵をくらます謀に属し、もし妥当な運用をすれば、弱を以て強を抵ぎ、劣勢を優勢へと転じることができ、それは歴代兵家の『詭道』の集大成であるとも言える著書でもあるのです。

なお『兵法三十六計』は、各計の解題が半ば『易経』の言葉で構成されているのですが、これは中国古代の軍事家はみな『易』の理に精通しており、これを軍事に用いていたことが伺えます。
『易』は、一般に占いの原点として印象づけられていますが、これは通俗観念であり、本質はまったく異なります。
※)このあたりの詳細については、以下も参考にしてみてください。
 当たるも八卦、当たらぬも八卦 易経って何?
 易経 実際に占う方法です
 易経 実際に易を占ってみましょう。
 易経 本来の在り方を知ることが大事です。
 干支から見る、2014年甲午から2015年乙未の解明・啓示
上記からもわかるように、『易』に示される吉・凶は、変えることのできない運勢判断ではなく、従うべき法則を示すことによって運命を主体的に切り開くことを促すものです。
『易』の核心は、陽と陰(剛と柔、乾と坤)の対立という陰陽二元論で、あらゆる事物は孤立して存在するものではなく、必ず対になるものがあって、対立することによってはじめて成立します。
しかもこれらは(陰は陽に変じ、陽は陰に変ずるという具合に)つねに相互に転化し、相互に作用することによって新しいものを生み、発展させるものです。
陰陽は、互いに消長することによって循環し、互いに働きあうことによって新しい発展を生むのですが、これが『易』における弁証法的認識でもある訳です。
こうした『易経』を元に、効率的に纏め上げられた『兵法三十六計』は、現代の中国のビジネスマンが『孫子』以上に慣れ親しんだものでもあるのです。
※)『孫子』を含めた武経七書については、以下も参考にしてください。
 孫子から学ぶ!処世哲学の在り方
 呉子から学ぶ!一兵家、一為政者のあり方
 尉繚子から学ぶ!人間本位のリーダについて
 六韜から学ぶ!太公望の虎の巻
 三略から学ぶ!柔よく剛を制す
 司馬法から学ぶ!司馬穰苴の兵法
 李衛公問対から学ぶ!解説書、文献としての価値について

その上で『兵法三十六計』のポイントを整理すると、ざっと以下のようなものになるかと思います。
・戦争には法則性がある故にその流れにしたがって追求すべきである。
・戦争の策略は、変幻自在で、意外な詐術、料りがたい陰謀に満ちており、容易くは掌握できない。
・まず状況を察し、「疑いて実を叩き、察して後に動く」必要がある。
・「心を攻め気を奪い」「その勢いを消す」方略の運用を重視すべきこと。
・方略の運用は「事理人情」に合致しなければならない。
・劣勢な条件のもとでは、断固として「走ぐるを上となす」策を採るべきこと。

こうしてみるとお分かりのように、争いの戦略としてだけでなく、広く人間社会の活動全般に応用できることは間違いありません。
いかがでしょう。
改めて『兵法三十六計』を見直してみてはいかがでしょうか。
きっと参考になるはずです、ご一読ください。

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以下、参考までに『兵法三十六計』のそれぞれのポイントを整理しておきます。

【勝戦の計:こちらが戦いの主導権を握っているときの定石】

第一計
瞞天渡海(まんてんかかい) 天を瞞いて海を過る
普段見慣れているものは気づかれにくい、油断させて攻撃する。
「瞞天過海」の「天」は皇帝のことで、全体で「皇帝をだまして平穏無事に大海を渡る」という意味になる。露呈されているものに秘計を隠し、見慣れていると少しも奇妙に思わない錯覚を巧みに利用して、軍事的な目的を実現することを言う。
防備をしっかり固めているところでは、往々にして頭脳が麻痺する。ふだんから見慣れているものには。疑問を感じないことが多い。秘密は公然としているものに隠されており、秘密と公開は決して対立するものではない

第二計
囲魏救趙(いぎきゅうちょう) 魏を囲んで趙を救う
魏の大軍が包囲している趙に正面から救援に行かず、手薄になっている魏を攻める。
敵軍が主力を集中して隣国に進攻し、双方が退治して激戦を展開している機に乗じて、敵国の本土の要害の地を急襲し、敵軍が進攻を中止してあたふたと救援に向かうように仕向け、その機に乗じて途中で待ち伏せ攻撃して殲滅する戦略である。

第三計
借刀殺人(しゃくとうさつじん) 刀を借りて人を殺す
自分の戦力を消耗させることなく、同盟者や第三者が敵を攻撃するように仕向ける。
自分は手出しをせず、策略を巡らし、自分が滅ぼしたい人を殺害することであり、軍事的には、自国の兵力を温存し、さまざまな矛盾を利用して、他国の兵力で敵軍を撃破する策略である。「離間の計」を採用して敵国の重要な将軍や策士を謀殺する策略である。
敵軍の状況が明らかになっているのに、友軍が決断せずにためらっているときは、さまざまな手段を講じて友軍に敵軍を攻撃させ、自軍の戦力を温存しなければならない。

第四計
以逸待労(いいつたいろう) 逸を以って労を待つ
味方の力を温存し、敵の疲れを待つ。
自軍に有利な地歩を確保し、敵軍を困難な立場に追い込んで、すぐには進攻せず、「剛と柔は互いに転化する」という原理にもとづいて、積極的防御の戦術を取って敵軍を徐々に殲滅、疲労させ、強を弱に変え、受動的立場から主動的立場に転じることである。
強大な敵軍に対しては、戦闘を焦ってはならず、積極的防御の戦術を取り、敵軍が疲労して戦力が衰えるのを待って進攻する。

第五計
趁火打劫(火につけこんで、おしこみを働く)
火事場泥棒。相手の弱みにつけこんでどんどん攻める。
他人の家の家事に乗じて略奪を行うという意味であり、軍事的には、敵軍が困難や危機に遭遇したら、その気に乗じ出兵し、絶対的に優勢な戦力で苦境に陥っている敵軍をたたきのめす戦略である。
敵軍に重大な危機が生じたら、その機に乗じて攻撃し、勝利を勝ち取る。

第六計
声東撃西(せいとうげきせい) 東に声して西を撃つ
東を攻めると見せかけて、西を攻める。 陽動作戦
東方に進撃すると思わせて実際には西方に進撃し、敵軍を混乱させて統制不能に陥らせ、水位が高くなると堤防をいつでも決壊させることができるように、敵軍の混乱に乗じて進攻し殲滅する戦略である。
沢水[兌]が地上[坤]に集まって物を潤すのが萃であるが、人や物がたくさん集まれば思いがけない変事が生じやすいので、その機に乗じて敵軍に進攻して殲滅する。

【敵戦の計:余裕をもって戦える、あるいは同じ力の敵に対する戦略】

第七計
無中生有(むちゅうせいゆう) 無の中に有を生ず
無いものをあるように見せる、あるものを無いと見せる。 虚虚実実のかけひき
虚々実々、虚から実へ、虚中に実を在りなどの方法を利用し、見せかけの形勢で敵軍を欺き、敵軍の情勢判断と軍事行動を誤らせ、敵軍の不意をついて殲滅する作戦である。
騙すことは騙すことではない。それゆえ、騙さなければならない。すなわち、偽りもあれば真もあるので、偽りで真を覆い隠し、敵軍が真偽を判断しにくいようにして騙さなければならない。

第八計
暗渡陳倉(あんとちんそう) 暗かに陳倉に渡る
相手の虚をつき、油断している場所を攻める。 迂回作戦
正面から攻撃するように見せかけ、敵軍の注意を引き付けておいて、遠回りをして奇襲をかけ、勝利を得る作戦である。
自軍の行動を敵軍にわざと見せ、敵軍が防備を固めるのを利用して、敵軍が防備を固めたところを避けて主導的に奇襲をかけ、敵軍の虚に乗じて勝利を勝ち取る。

第九計
隔岸観火(かくがんかんか) 岸を隔てて火を観る
相手に内紛の兆しがあるときは、じっと相手の自滅を待つ。
敵軍の内部矛盾を利用して、敵軍が互いに殺戮し合うように仕向け、戦わないで勝利を勝ち取る計略である。単に「火」を静観するだけでなく、積極的に「火」をつけなければならない。すなわち、人を送って敵軍の内部に矛盾を生じさせるのである。
敵軍が内部分裂し秩序が混乱に陥ったときには、静観しつつ、敵軍の情勢が引き続き悪化するのを待つ。そうすれば、敵軍は横暴残忍になり、反目し合い、恨みのために殺し合い、自滅していく。敵軍の情勢の変化に合わせて準備を整え、絶好の機会をとらえて策謀し、座して漁夫の利を収める。

第十計
笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)  笑いの裡に刀を蔵す
笑顔で近づき油断を誘う。 ほめ殺しもこの計の一手
表面は友好的であるかのように装い、ひそかに戦備を整え、時機が到来したら、戦備を整えるのを怠った敵軍の不意をついて打ち破る計略である。
敵軍を安心させて油断させ、ひそかに策略を巡らし、十分に準備を整え、時機が到来したら、機を逸することなく出撃し、敵軍の不意をつく。闘志は内に秘め、外は柔和を装う。

第十一計
李代桃僵(りだいとうきょう) 李が桃に代って僵れる
皮を斬らせて肉を切り、肉を斬らせて骨を断つ。
形勢が発展して損失が避けられない場合には、局部の損失を出して全局の勝利を勝ち取る作戦である。
「李が桃に代って僵れる」というのは「李の木が桃の木に代わって死ぬ」という意味で、自分が犠牲になって他人を助けたり、他人を犠牲にして自分が助かったりすることである。すなわち、局部を犠牲にして全局の勝利を勝ち取るのである。

第十二計
順手牽羊(じゅんしゅけんよう) 手に順って羊を牽く
少しの利益でも取れる時にとる
乗ずべき機会であればいかに小さいものでも利用し、得るべき勝利であればいかに小さなものでも得るという作戦である。
わずかな隙でも絶対に利用しなければならないし、小さな勝利でも絶対に得なければならない。わずかな隙を利用し、小さな勝利を得れば、全面的な勝利の機会と発端を手に入れることができる。

【攻戦の計:相手が一筋縄ではいかない場合、上手く勝つための戦略】

第十三計
打草驚蛇(だそうきょうだ) 草を打って蛇を驚かす
草を叩いて蛇がいるか調べる。 偵察を出して反応を探る大切さ
敵軍が潜んでいるところで意識的に小さな軍事行動を起こして敵軍の反応を偵察し、敵軍の陰謀や謀略を暴く作戦である。
敵軍の行動が疑わしい場合には、徹底的に偵察してから行動を起さなければならない。偵察を繰り返さなければ、敵軍の仕掛けている罠は発見することができない。

第十四計
借屍還魂(しゃくしかんこん) 屍を借りて魂を還す
役に立つか立たないかは利用方法しだい、利用できるものは何でも利用する
利用しうるあらゆる力を利用して、自分の意図を実現する計画である。
才能のある者は、利用することができない。才能のない者は、助けを求めてくる。才能のない者を利用するというのは、才能のない者に助けを求めることではなく、才能のない者が助けを求めることなのである。

第十五計
調虎離山(ちょうこりざん) 虎を調き山を離れさす
敵に利のある地で戦えば、自ら負けに行くようなもの、味方に有利な地で戦う
戦闘において、有利な地勢にいる敵軍を誘きだして殲滅する計略である。
敵軍を不利な地勢のところに誘き出し、包囲して疲労困憊させ、敵軍に進攻するのが危険な場合には敵軍が進攻してくるようにしむける。

第十六計
欲檎姑縦(よくきんこしょう) 擒えようと欲すれば姑く縦て
敵をわざと逃がして、気を緩ませた所を捕らえる。 交渉事でも相手の逃げ道を作る
敵軍を捕捉し殲滅するために、しばらく敵軍に対する行動を控え、敵軍の兵力が分散、減退したり、敵軍の作戦が明らかになったりしてから、行動に出る作戦である。
敵軍に肉薄すれば、敵軍は必死に反撃してくる。敵軍を逃してやれば、逆に気勢をそぐことができる。敵軍にぴったりついて追撃しても、ただちに攻撃せず、相手が兵力を消耗し、闘志を失い、戦力が分散、減退するのを待って捕獲すれば、流血の戦闘を回避することができる。

第十七計
拠磚引玉(ほうせんいんぎょく) カワラを抛げて玉を引く
海老で鯛を釣る戦法。 うまい話で相手を誘い出す
偽りの状況を設定し、敵軍を罠にかけて勝利を勝ち取る計略である。
類似の事物で敵軍を惑わせて罠にかけ、混乱に陥れ、その機に乗じて打ち破る。

第十八計
擒賊擒王(きんぞくきんおう) 賊を擒えるには王を擒えよ
日本では「将を射んとすれば、馬を射よ」という諺になっている
まず敵軍の主力を殲滅し、敵軍の指導者をとらえて、敵軍を混乱させ、瓦解させる作戦である。
敵軍の主力を打破し、敵軍の指導者を捕らえて敵軍を瓦解させれば、竜が大海を離れて陸上で戦うように絶体絶命の立場に追い込むことができる。

【混戦の計:相手がかなり手ごわく、乱戦時の戦略】

第十九計
釜底薪抽(ふていちゅうしん) 釜の底から薪を抽く
敵を直接攻撃するより、補給路を断つ。
戦闘のカギを握る問題を自軍に有利に解決し、敵軍の戦闘能力を奪って勝利を勝ち取る作戦である。

第二十計
混水摸魚(こんすいばくぎょ) 水を混ぜて魚を摸る
相手の内部混乱に乗じて勝利を収める戦略
敵軍が混乱に陥ったとき、機に乗じて自軍の利を計る作戦である。
敵軍の混乱に乗じ、其の弱小な戦力と定見の無さにつけ込み、自軍の思いどおりに引き回し、時機に応じて食事や休息をとる。

第二十一計
金蝉脱穀(きんせんだっかく) 金の蝉、殻を脱ぐ
変化がないようなふりをして、移動したり、退却したりする
現有の態勢を維持しているふりをしてひそかに主力を移動させ、戦略上の目的を実現する作戦であり。
陣地の原型を保持し、強大な威勢を誇示し、友軍にも疑間を抱かせず、敵軍にも軽挙妄動させずに、ひそかに主力を移動させ敵軍に打撃を与える。

第二十二計
関門捉賊(かんもんそくぞく) 門を関ざして賊を捉える
敵の退路を断ち、包囲殲滅する。 第16計の反対
敵軍の退路を断って包囲し、殲滅する作戦である。
弱小な敵軍に対しては包囲、殲滅する。しかし、瀕死のあがきをする敵軍に対して、背後から急追、深追いするのはきわめて不利である。

第二十三計
遠交近攻(えんこうきんこう) 遠くと交わり近くを攻める
遠くの相手と同盟を組み、近くの敵を叩く。 外交戦術の基本
敵の同盟国を瓦解させて各個撃破する、すなわち、まず遠国と同盟を結んで隣国を攻め滅ぼす作戦である。
戦闘は地理的条件に制約されるので、近隣の敵を先に攻撃するほうが有利であり、遠隔の敵を先に攻撃するのは有害である。火は上のほうに燃え、河は下のほうに流れる。同じように、敵に対する対策も臨機応変に立てるべきである。

第二十四計
仮道伐鯱(かとばっかく) 途を仮りて虢を伐つ
小国は救援という大義名分のもと併合してしまう
隣国に対して他国を攻撃するために軍隊を通過する許可を求め、実際には隣国を攻撃して殲滅する作戦である 。

【併戦の計:味方同士の中で、優位に立つための戦略】

第二十五計
偸梁換柱(ちゅうりょうかんちゅう) 梁を偸んで柱に換える
相手の中に味方を送り込み、相手を骨抜きにする戦略
ひそかに事物の本質と内容を変えてしまい、相手をだます計略である。
敵軍に対して作戦を展開するには、主導権を握り、頻繁に敵軍を出動させ、その部署配置変更させ、主力を奔走に疲れさせ、敵軍が敗色を濃くするのを待って攻撃する。車輪をしっかり押さえ、車の進行方向を掌握するのである 。

第二十六計
指桑罵槐(しそうばかい) 桑を指して槐をののしる
本来の相手で無い別の相手を批判し、間接的に本来の目的を達する
脅迫と利益誘導を結び付けて、戦わずに敵軍を屈服させる作戦である。
弱小の者を屈服させようとする強大な者は、警告という方法で誘導することができる。態度が強硬で、行動が果敢であれば、弱小の者を服従させることができる。

第二十七計
仮痴不癲(かちふてん) 痴を仮りて癲わず
愚かな振りをして、相手を油断させる。 織田信長もこの手を使った
自軍に不利な形勢のもとでは、見せかけの情報を作り出して敵軍を欺き、自軍に対する敵軍の警戒心をゆるめさせ、その機に乗じて敵軍を殲滅する策略である。
愚かで何もできないふりをしてもかまわないが、知ったかぶりから無分別な行動に出てはならない。ひそかに準備を整え、相手に気付かれないようにして、雷のようにエネルギーを蓄積して発散しないようにする。

第二十八計
上屋抽梯(じょうおくちゅうてい) 屋根に上らせて梯子をはずす
二階に上げてはしごを外す。 相手をおびき出して戦力を分断する
敵軍を自国に深く引き入れて、その補給、援護、退路を断って殲滅する作戦である。
自軍の欠陥をわざと敵軍に見せ、有利であるかのように錯覚させ、自国に深く引き入れて、物資の補給、後方支援、退路を断った後、兵力を集中して殲滅する。

第二十九計
樹上開花(じゅじょうかいか) 樹に花を咲かす
こちらを大きく見せて相手を威圧し、時間を稼ぐ。 ハッタリ戦法
欺瞞的で狡猾な手段を借用し、大仰に騒ぎ立て、弱小な兵力を強大に見せかけ、敵軍を震撼させる作戦である。
他軍の局面を借りて有利な陣形を作れば、兵力が弱小であっても、陣容を強大に見せることができる。鴻は天空に翔けて帰ってこないが、その落した羽は儀式の飾りにすることができるようなものだ。

第三十計
反客為主(はんかくいしゅ) (客を反して、主となす)
客のうちはじっと耐え、機会がおとずれたらすばやく動いて主導権をとる
機に乗じて敵軍を吸収し、客軍を変じて主軍に転ずる作戦であり、受動から主動に転じて、戦争の主導権を勝ち取るのである。
空隙に乗じ介入して前進し、あらゆる手を尽くして敵軍の主要な機関と要害を支配下に置き、手順に従って漸進する。

【敗戦の計:圧倒的に劣勢の場合の戦略】

第三十一計
美人計(びじんけい) 計略に美人を用いよ
美人を使ってでも相手のやる気をなくさせる
美女(金品を含む)で敵を誘惑して女色(享楽)に溺れさせ、闘志をなくさせ、その機に乗じて勝利を収める作戦である。
勇猛な将兵を擁する敵軍に対しては、あらゆる手を尽くしてその武将を篭絡しなければならない。智謀の優れている敵軍の武将に対しては、その闘志を打ち砕かなければならない。敵軍の武将が闘志を失い将兵の士気が衰えれば、敵軍の戦力は自然に低下する。敵軍の弱点を利用して瓦解させれば、形勢に順応して自軍の戦力を保持することができる。

第三十二計
空城計(くうじょうけい) 空城(空っぽの城)を用いて敵を惑わせよ
わざと隙を見せて、敵の動揺を誘う。 窮余の策
虚々実々の手段で敵軍を惑わし、敵軍の攻勢をやめさせたり、無にしたりする作戦である。
兵力が手薄な場合には、故意に兵力が手薄なことを敵軍に見せ、なにか策略を巡らしているのではないかと疑心暗鬼に陥らせる。敵軍が優勢な緊急事態にこの作戦を行えば、その妙はいっそう計り知れない。

第三十三計
反間計(はんかんけい) 敵の間者(スパイ)を逆利用せよ
スパイを利用し偽情報を流して相手を混乱させる
敵軍の間諜を買収したり利用したりして、自軍のために利用する計略である。
疑陣の中にさらに疑陣を配し、勢いに乗じて敵軍の間諜を自軍のために働かせれば、自軍の戦力を温存して勝利を勝ち取ることができる。

第三十四計
苦肉計(くにくけい) 自らを苦しめ敵を欺け
多少の犠牲は覚悟の上で行動する
自分を傷つけて(自軍の部隊を攻撃したり、ひいては殲滅させたりして)、敵軍に錯覚を起こさせ、敵軍の離間を策す作戦である。
自分で自分を傷つけるものは無く、必ず他人から傷つけられる。傷つけられたと嘘の芝居を演じて、敵側にその芝居を信じ込ませることができれば、敵側を離間させることができる。

第三十五計
連環計(れんかんけい) 必ず数計を用いて連鎖反応・相乗効果(総合戦果)を収めよ
敵の勢力が強大な時は正面から攻撃するのは愚策、策を練り相手の動きを弱める
さまざまな計略で数珠つなぎのように罠を仕掛け、敵軍の強大な兵力を弱小にして目的を遂げる作戦である。
敵軍の戦力が強大なときは、無理に戦いを挑んではならない。さまざまな計略を用いて牽制し、その優勢な戦力を弱体化させなければならない。

第三十六計
走為上(そういじょう) 走げるをもって上策となす
勝算が無ければ戦わずして逃げ、次回に備える
軍事的に劣勢にある場合は、主導的に撤退して兵力を温存し、機会をとらえて敵を打ち破る作戦である。
全軍が退却し、優勢な敵軍との戦闘を避けて戦力を温存し、機に乗じて敵軍を打ち破る。この退却を進撃とするやり方は、決して正常な用兵法に反するものではない。