【千夜一夜物語】(43)  寛仁大度とは何、世に処する道はいかにと論じ合うこと(第714夜 – 第720夜)

前回、”若者ヌールと勇ましいフランク王女の物語”からの続きです。

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【サラディンとその大臣の物語】

昔、帝王(スルターン)サラディンに仕える大臣の元に、美しいキリスト教徒の少年奴隷がいたが、ある日帝王の目に留まり、帝王は心を奪われたようであった。
大臣は少年を手元に置いて帝王の不興を買うことを恐れ、少年を帝王に献上した。
またある日、大臣は美しい少女奴隷を買ったが、いつの日か帝王の目に留まることを恐れ、先回りして少女を帝王に献上した。
大臣の評価は高まり、帝王は大臣を重用した。

しかし、回りの者は大臣を羨望し、帝王に「大臣は少年奴隷を帝王に取られたことを恨んでいる」と嘘の噂を伝えた。
そこで、帝王は大臣の忠誠を試すため、少年奴隷に「何らかの手段で、私を帝王から取り返して欲しい」という大臣宛の手紙を書かせ大臣に届けさせた。
大臣は手紙を開封せず、「すでに帝王に献上したものは帝王のものだ」と言って手紙を返した。
帝王の大臣に対する信用は益々上がった。

【比翼塚】

アル・カイシの息子アブドゥッラーがメディナのムハンマドの墓に参拝した際、美しい少年が泣いているのが目に入った。
少年はアンサール(ムハンマドがメディナに移住(ヒジュラ)した際、ムハンマドを受け入れたメディナの住人)のアル・ジャムーの息子アル・ムンディールの息子アル・フバッフの息子のオトバーで、寺院でお祈りをしていたときに、美しい女性たちの一団が入ってきて、その中のひときわ美しい少女が「オトバー様、あなたと結婚したいと思っている女性と結婚なさいますか」と一言いって出て行き、そのまま見失ってしまったため泣いているのであった。

翌日寺院に行って調べると、少女は遊牧民スライム族の族長アル・ギトリフの娘リヤで、既にユーフラテス河に向けて出発したとのことであった。
そこで、アンサールたちはスライム族を追いかけることになり、6日で追いついた。
オトバーが結婚を申し込むと、アル・ギトリフは娘を弟の息子に嫁がせるつもりだったので、法外な婚資をふっかけて話を壊そうと思い、婚資として純金の腕輪1000個と、金貨5000枚と、5000個の真珠をちりばめた首飾り1個と、絹織物1000反と、黄皮の長靴12足と、なつめやしの実10袋と、家畜1000頭と、牝馬1頭と、麝香5箱と、バラの香油5瓶と、龍涎香5箱を要求した。
オトバーはそれらの品を揃え、リヤと結婚した。

オトバーがメディナにリヤを連れて帰る途中、スライム族がリヤを取り返すため襲いかかり、オトバーたちはスライム族を撃退するが、オトバーは傷を負い死に、リヤも悲しみのため死んでしまった。
オトバーとリヤは一緒に埋葬され、墓は比翼塚と呼ばれた。

【ヒンドの離婚】

アル・ヌマーン王の美しい娘ヒンドは、イラクの太守アル・ハジャージと結婚したが、アル・ハジャージは奇形で不能だったので、ヒンドは悲しみ、アル・ハジャージを牡騾馬にたとえたため、アル・ハジャージはヒンドを離婚した。

教王((カリーファ))アブドゥル・マリク・ビン・マルワーンはヒンドの美貌を聞き、結婚を申し込むが、ヒンドは「アル・ハジャージが裸足でラクダを引いて教王の御殿まで私を連れて行く」ことを条件として結婚を承諾した。
教王はアル・ハジャージにそう命令し、ヒンドはアル・ハジャージを辱めた。

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次回は、処女の鏡の驚くべき物語です。

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