今日(1月27日)はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Johannes Chrysostomus Wolfgangus Theophilus Mozart)の生誕259年目の日です。
ハイドン、ベートーヴェンと並んでウィーン古典派三大巨匠のひとりと呼ばれ、誰もが知る有名な音楽家ですね。
その作品総数は未完のものも含めて900曲以上に及び、ジャンルもあらゆる分野に渡るまさしく天才。
そんなモーツアルトの作品の中から、今回はオペラに注目してみたいと思います。
クラッシックは聴くけどオペラはちょっと、と敬遠しがちな方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとだけお付き合いください。
モーツァルトはあらゆるジャンルの曲を書き残していますが、実は彼が一番書きたかったのは何といってもオペラでした。
モーツァルトが生きていた18世紀の時代では、オペラを書いてこそ音楽家として一人前とみなされ、世間からも認められる存在といわれていたためです。
というのも、当時オペラは王や領主の宮廷で上演される社会的な意味合いが強いイベントとして扱われるもの。
対して当時の室内楽とか独奏曲は、今のように評価されていた訳でもなく、扱われ方自体が大きく異なっていたためです。
そのため、モーツァルト自身もオペラには特別の思い入れがあったことが伺え、結果数多くのオペラ作品を生み出しています。
そもそもオペラの起源は、16世紀最末期のフィレンツェで誕生した音楽劇と言われており、当時のオペラはギリシャ神話を題材として、音楽よりもストーリーに比重を置いたものでした。
17世紀になるとローマやヴェネツィアでも盛んに上演され、やがてオペラの中心はナポリへと移り、この地で音楽史上大変重要な変化が起こります。
それまでのオペラと言えばあくまでも神話劇、歴史劇もしくは悲劇などを題材として作られていたのですが、幕間に上演されていたインテルメッゾ(幕間劇)が発展してオペラ・ブッファと呼ばれる喜劇へと変遷し、18世紀後半には伝統的なオペラセリア(正歌劇)を凌ぐようになっていくのです。
そんなオペラ変革の真っただ中にあったモーツァルトは、単なる庶民喜劇のレベルを越えて独自の世界を展開し、代表的なオペラ「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」「魔笛」などの傑作を生み出していったのです。
ここで注目したいのは、モーツァルトの才能についてです。
モーツァルトというと、新しい音楽を生み出していった天才という評価が高いですが、オペラという観点でみた場合に、音楽という領域だけに留まらない才能が垣間見えます。
勿論オペラの台本自体は台本作家というのがおり、「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」の台本はロレンツォ・ダ・ポンテという詩人・台本作家が手がけていますし、「魔笛」の台本は劇場支配人・興業主・俳優・歌手のエマヌエル・シカネーダーが自分の一座のために手がけたものです。
しかしモーツァルトはオペラを書く場合、どんな台本を与えられてもそのまま台本に合わせて作曲した訳ではなく、台本にいろいろと注文をつけ、部分的には自分で直したりしていたことから、音楽とストーリーのバランスや構成に大きくこだわって作品を作り上げていたことが伺えるのです。
モーツァルトは単に音楽が素晴らしいだけの音楽家ではなく、ある種シェークスピアに匹敵するほどの情景と情感をストーリーとして頭の中で描き、それを譜面にしていた非常に多才な才能を持ち合わせていた稀有な天才であった訳です。
作品の中身を見ても、その多才さが良くわかります。
浮気をする伯爵を成敗する「フィガロの結婚」、女好きで遊び人の貴族を地獄に落とす「ドン・ジョヴァンニ」、許婚の女性が貞節か否かを試す「コシ・ファン・トゥッテ」、王子がいろいろな試練を乗り越えて可愛い娘と結ばれる「魔笛」といった具合に、啓蒙時代の貴族をあれこれ皮肉った要素も盛り込みながら、通俗的なだけでなく不思議なことにどこか抽象的な要素を感じさせ、聴き手によっていろいろな感じ方で楽しめることも、非情に優れたオペラ芸術として仕上がっている証です。
モーツァルトのオペラは、人間の持ついろいろ多面的な要素を否定することなく、登場人物それぞれに共感を寄せられるように人のありのままの姿を活き活きと描かれることが特徴なのです。
またモーツァルトのお話の一番のポイントとなるのは、オペラの作品が彼の人生の様々なテーマと関わっていたことです。
一番大きな問題は、やはり父子関係でしょう。
父の英才教育と各国を回って吸収した多くの経験が、モーツァルトが数々の作品を生み出した原動力になっています。
そんな父を尊敬し愛していながら、その父は生前生後に渡り自分の自由を奪う存在であり続け、結婚を巡っても大変な対立をしたことが残されていますし、こうした矛盾に満ちた父子関係をモーツァルトは死ぬまで抱え込んでいました。
ある批評家は「モーツァルトのオペラはすべて父と息子を巡る物語だ」と説明していますが、そう言わせてしまうくらい父子の関係の影響は、いろいろ作品に現れているのです。
他にも、各国で仕えた王やパトロンとモーツァルトとの主従関係であったり、恋愛問題、浪費を尽くした生活など、モーツァルトの人生における特徴的な問題が彼のオペラの作品の中にも顕著に表れているのです。
どうでしょう。
せっかくのモーツァルトの誕生日を機に、一度彼のオペラにも触れてみてはいかがでしょうか。
以下、代表的なモーツァルトのオペラのあらまし、です。
『フィガロの結婚』
この作品(K.492、1786年ウィーン、30歳、イタリア語台本)は、フィガロという召使が自分の主人アルマヴィーヴァ伯爵からの妨害に対して、自分の才知を駆使して主人をやり込め、逆に恥をかかせるという話です。
『フィガロの結婚』というのはもとは芝居で、フランスの劇作家ボーマルシェが書いた原作は、フランスでは発禁になっていました。
話の内容が貴族の支配を転覆させかねないようなものであったため、ウィーンでも芝居としては上演できなかったものです。
しかし、進歩的な考え方の啓蒙専制君主であった当時のウィーンの皇帝ヨーゼフ2世は、全面的には禁止せずに、「オペラとしてなら上演してよろしい」ということになりました。
モーツァルトの『フィガロの結婚』は、ヨーゼフ皇帝だったからこそウィーンで上演することができたオペラ作品です。
確かに原作の芝居が持っていた相当過激な政治的メッセージはカットされはしたのですが、このアリアを聴けば、モーツァルトが言葉の上でカットされたメッセージを彼の音楽によってあり余るくらい補い、召使の怒りを雄弁に表現していることが分かると思います。
あらすじ
【時と場所】
18世紀半ば、スペインのセヴィリャ
【登場人物】
アルマヴィーヴァ伯爵(Br): 領主
伯爵夫人(S): 伯爵の妻
スザンナ(S): 伯爵家の女中
フィガロ(Bs or Br): 伯爵の従者
ケルビーノ(Ms): 伯爵邸に住む少年
バルトロ(Bs): 伯爵家お抱えの医者
マルチェリーナ(Ms): 伯爵家の女中がしら
バジリオ(T): 伯爵邸の音楽教師
ほか
【第1幕】
時は18世紀、舞台はスペイン、セヴィリャのアルマヴィーヴァ伯爵の館。伯爵の従者フィガロと、同じく伯爵家の女中スザンナの結婚式当日の話です。フィガロはスザンナから驚きの事実を聞きます。それは、二人の主人である伯爵が、手先の音楽教師バジリオを使って、スザンナを誘惑しているというのです。フィガロは怒って、伯爵をこらしめる作戦を考えます。
【第2幕】
その作戦とは、伯爵に仕える少年ケルビーノにスザンナの服を着せて、伯爵がスザンナと夜こっそり会おうとしたときに、彼を差し向けて驚かせようというものでした。事情を知った伯爵夫人の協力のもと、スザンナが少年ケルビーノに女装をさせます。そこへ急に伯爵が現れて大混乱。結局、フィガロの作戦は失敗します。その上、フィガロにお金を貸していた女中マルチェリーナおば様が、弁護人バルトロといっしょにやって来て、「借金を返さないなら、フィガロは私と結婚する約束だったわ」と言い出します。フィガロとスザンナの結婚のゆくえはわからなくなりました。
【第3幕】
ところが大変な事実が発覚します。捨て子だったフィガロ、実は、マルチェリーナおば様と弁護人バルトロの二人が若かりし頃、恋の火遊びをした結果、できてしまった子供だったのです。つまり、父母、息子の関係でした。この3人にスザンナを加えた4人はすっかり意気投合。無事、フィガロとスザンナは結婚式を挙げることができました。
さて、一方の伯爵はというと・・・、まだこりずにスザンナを誘惑しようとしています。見かねた伯爵夫人は、今度は自分がスザンナの服を着て、密会の現場に行くことを決心します。
【第4幕】
その夜、屋敷の裏庭。伯爵は、スザンナと秘かに会えるのを楽しみにやってきます。そして、スザンナの服を着た伯爵夫人をスザンナと勘違いして、甘い言葉をささやくのです。これで証拠は押さえられました。伯爵夫人は何も知らない伯爵に正体を明かします。スザンナと思って近寄った伯爵は、実はそれが自分の妻だったことを知って驚きます。深く反省した伯爵のことを、夫人は温かく許してあげたのでした。
『ドン・ジョバンニ』
この作品(K.527、1787年/プラハ、31歳、イタリア語台本)では、劇の冒頭で女たらしの主人公が、ドンナ・アンナという女の父親を殺してしまいます。
ドン・ジョヴァンニは最後の場面で、殺した父親の亡霊によって地獄に引きずり込まれてしまうわけです。
精神分析的に見れば、「父親を殺した息子が父親に罰せられる」という物語です。
興味深いのは、モーツァルトがこの『ドン・ジョヴァンニ』を作曲していた1787年という年が、まさにモーツァルトの父が亡くなった年であることです。
モーツァルトは、父が死んだという知らせを受けた頃、ちょうど『ドン・ジョヴァンニ』を作曲していました。
「父親を殺す放蕩息子」という『ドン・ジョヴァンニ』の物語は、モーツァルトの深層の罪の意識を呼び起こしたのかもしれません。
だから『ドン・ジョヴァンニ』は、尋常ならざる迫力を持ったオペラになっているのではないかと思うのです。
あらすじ
【時と場所】
17世紀、スペイン
【登場人物】
ドン・ジョヴァンニ(Br): スペインの貴族(ドン・ファン)
レポレッロ(Bs): ドン・ジョヴァンニの従者
ドンナ・アンナ(S): オッターヴィオの婚約者
ドン・オッターヴィオ(T): ドン・ジョヴァンニの友人
ドンナ・エルヴィラ(S): ドン・ジョヴァンニのかつての恋人
ツェルリーナ(S): 農民の娘
マゼット(Bs): ツェルリーナの婚約者
騎士長(Bs): ドンナ・アンナの父
ほか
【第1幕】
時は17世紀、舞台はスペイン。伝説のドン・ファンことドン・ジョヴァンニは、女であれば誰でも口説き、そして裏切ります。今夜も従者のレポレッロに見張りをさせて、ドンナ・アンナの寝室に忍び込みますが、失敗し騒がれます。ドンナ・アンナの父、騎士長が駆けつけましたが、ドン・ジョヴァンニは彼を刺し殺し、レポレッロとともに逃げ失せました。
こんなことでは懲りないドン・ジョヴァンニは、街で別の女性に声をかけます。しかし、その女はかつて3日間だけ恋人だったドンナ・エルヴィラでした。捨てられたことを怒る彼女を従者レポレッロに押しつけて、ここもうまく逃げ出します。
次の標的は、ある村で農夫マゼットと結婚式を挙げていた娘ツェルリーナ。ドン・ジョヴァンニは村人全員を自分の邸宅に招待して豪華な宴会を催し、その上で、ツェルリーナをこっそり頂こうという手筈を整えます。しかし、あと一歩でツェルリーナをものにできるというところへ、ドンナ・アンナ、その婚約者ドン・オッターヴィオ、そしてドンナ・エルヴィラの3人が現れ、彼の悪行を暴露します。ドン・ジョヴァンニと従者レポレッロは、その絶体絶命の窮地を何とか切り抜け、逃げ去ったのでした。
【第2幕】
それでもまったく意に介さないドン・ジョヴァンニは、レポレッロと服を交換した上で、また女性を誘惑しに出かけてしまいます。一方、ドン・ジョヴァンニの服を着せられたレポレッロは、本人と勘違いされて、またもやドンナ・アンナ達に取り囲まれてしまいました。
やっとの思いで逃げ出したレポレッロは、墓場でドン・ジョヴァンニと落ち合います。その墓場にはあの騎士長の石像が立っていました。ドン・ジョヴァンニが反省せずに女遊びのことをレポレッロに話していると、なんと石像が口を開き、彼に悔い改めよと語りかけたのです。しかしドン・ジョヴァンニは動ぜず、不敵にもその石像を夕食に招待するのでした。
その晩、ドン・ジョヴァンニが豪勢な食事をしていると、信じられないことに騎士長の石像が訪ねてきます。ドン・ジョヴァンニが「私は何も悪いことはしていない」と言うと、石像は彼の手をつかんで、地獄に引きずり落としたのでした。
『コジ・ファン・トゥッテ』
この作品(K.588、1790年/ウィーン、34歳、イタリア語台本)では、姉妹の恋人である二人の男が、それぞれの相手の貞節を試すために互いの相手を口説いたら、二人とも心変わりしてしまったのだが、どちらにも言い分がありそのまま認めあうしかないものだということを説いて聞かせるものです。
内容が不道徳であるとして評価が低かったものの。20世紀に到って再評価され、『フィガロの結婚』、『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』の3大オペラにこれを加えて4大オペラと呼ばれています。
あらすじ
【時と場所】
おそらく18世紀当時、ナポリ
【登場人物】
フィオルディリージ(S): ナポリの貴婦人
ドラベッラ(Ms): フィオルディリージの妹
デスピーナ(S): 姉妹に仕える女中
フェルランド(T): 士官、ドラベッラの恋人
グリエルモ(Br): 士官、フィオルディリージの恋人
ドン・アルフォンソ(Bs): 老哲学者
【第1幕】
時は18世紀、舞台は地中海に面したイタリアのナポリ。カフェの店先で、二人の士官フェルランドとグリエルモが、老哲学者ドン・アルフォンソと言い争いをしています。若い二人は、彼らの恋人が自分たちを裏切るようなことは決してないと信じていますが、アルフォンソは、そんなことはない、人間なら女性でもふとした出来心はあると、彼らの純真さを笑います。そこで、どちらの言い分が正しいか賭けをすることになりました。アルフォンソの策略が始まります。
まずアルフォンソは、海辺の庭園にいたフィオルディリージ(グリエルモの恋人)と、その妹ドラベッラ(フェルランドの恋人)に、彼女たちの恋人二人が急に戦争に行かなくてはならなくなったと伝え、士官二人には実際に船に乗って出発するふりをさせます。恋人がいなくなって悲しむ姉妹。その上でアルフォンソは、士官二人にひげを付けたり帽子をかぶせたりして変装させて、姉妹に別人として紹介し誘惑させようとします。
姉妹の家で変装した二人を紹介する際には、アルフォンソは女中のデスピーナにあらかじめ小遣いを与えておき、協力させました。変装した二人は姉妹に言い寄りますが、このときはまだ見向きもされません。
【第2幕】
しかし、しばらくして女中デスピーナが部屋で姉妹の世話をしながら、男遊びもいいものよと浮気を勧めると、姉妹は、もし選ぶならこっちの人かしら、と話し始めます。お互い元の恋人と違う相手を選んでいました。
そしてとうとう変装したグリエルモは、フェルランドの恋人ドラベッラを口説き落とします。逆にフェルランドも、グリエルモの恋人フィオルディリージを口説くことに成功します。フェルランドとグリエルモは、恋人の裏切りに激怒しますが、アルフォンソになだめられました。“女はみんなこうしたもの”だと。
さてその後は・・・。姉妹は変装した二人と結婚契約書を交わしますが、そこへ戦争に行ったはずの士官二人が帰ってきて、その契約書を見て怒ってみせます。そうしておいてから、慌てふためく姉妹にフェルランドとグリエルモは種明かしをしました。
姉妹は許しを請い、士官二人はもう恋人を試すようなことはせずに信じると誓います。老哲学者ドン・アルフォンソは、みんな笑い飛ばしてしまおうと恋人たちをねぎらうのでした。
『魔笛』
この作品(K.620、1791年ウィーン、35歳、ドイツ語台本)は、王子タミーノがいろいろな試練を乗り越えてパミーナという娘と結ばれる話です。
モーツァルトは、そこにふざけることが大好きなパパゲーノという道化的な人物を登場させ、メルヘンの世界となっていて、ややストーリーにつじつまの合わない箇所がありますが、それでも楽しいエピソードが繰り広げられる娯楽作品です。
誰でも知っているメロディーとオペラらしいメロディーが魅力の本作では、例えば、夜の女王のアリア・コロラトゥーラと呼ばれるソプラノ歌手が綱渡りのように最高音を出すことで、このオペラの名物となっています。
タミーノのアリア「なんと美しい絵姿」を歌う主役テノールは叙情的で優しい声が必要です。
また、パパゲーノとパパゲーナの二重唱「パ・パ・パ」は、何とも楽しい歌です。
一説には、フリーメイソンのさまざまなシンボルや教義に基づく歌詞や設定が用いられていると言われており、3人の僧侶、3人の侍女、3人の童子、3人の奴隷という人物設定や三重唱や三重奏が多用されm序曲では3つの和音が連打されるのは、いずれもフリーメイスン・コードの3という数字を表しているとも言われています。
・第2幕第1場で示される王子タミーノの聖なるグループへの入門式はフリ-メイスンそのものだとか、
・ザラストロが示す理性による光の世界=善と夜の女王が示す非理性的な闇の世界=悪は、つまりザラストロ対.夜の女王という対立の図式として表現されているだとか、
・タミーノ&パミーナとパパゲーノ&パパゲーナという対になる人間の対比もフリーメイスンの教訓的教義を映し出している
・当時皇帝から圧迫を受けつつあったフリーメイソンの宣伝であった
と捉えられるためだそうです。
真偽は定かではありませんが、モーツァルトの急死はフリーメイソンの教義を漏らしたため、フリーメイソンのメンバーが暗殺したという説さえまことしやかに言われていたようです。
あらすじ
【時と場所】
古代、エジプト
【登場人物】
タミーノ(T): 王子
パミーナ(S): 夜の女王の娘
パパゲーノ(Br): 鳥刺し
パパゲーナ(S): パパゲーノの恋人
夜の女王(S): 世界征服を狙う女王
ザラストロ(Bs): 大祭司
ほか
【第1幕】
時は古代、舞台はエジプトで架空の世界。王子タミーノは岩山で大蛇に襲われ気を失いますが、「夜の女王」配下の3人の侍女達が彼を助けます。それなのに、鳥の狩猟中にたまたま通りかかったパパゲーノが、助けてやったのは自分だと嘘を付きました。パパゲーノは侍女達によって、口に錠を掛けられてしまいます。
王子タミーノは、侍女達から女王の娘パミーナの絵姿を見せられ一目惚れします。女王は、悪人ザラストロに捕らえられた娘を救い出してくれれば、娘を王子に与えると約束しました。王子は侍女達から「魔法の笛」を受け取り、ザラストロの神殿に行くことにします。一方、口の錠前を外してもらえたパパゲーノも成り行きで王子について行くことになり、「魔法の鈴」を受け取りました。
ザラストロの神殿で離ればなれになってしまった王子タミーノとお供のパパゲーノ。パパゲーノが先にパミーナを見つけました。その後、魔法の笛と鈴の力で導き合ったタミーノとパミーナは、ザラストロの前でついに対面。お互いを運命の人だと思います。
実はザラストロは悪人ではなく偉大な祭司で、世界征服を企む夜の女王の邪悪な野望の犠牲とならないようにパミーナを保護していたのでした。
【第2幕】
ザラストロはタミーノに、パミーナを得るための試練を授けます。ついでにパパゲーノも恋人を得るために試練を受けることになりました。まずは「沈黙」の試練。沈黙するタミーノに、事情を知らないパミーナは深く悲しみますが、立派に耐え抜きます。次の「火」の試練、「水」の試練は、タミーノとパミーナの二人で「魔法の笛」の力を借りて乗り越えました。
一方のパパゲーノはというと、辛抱するのは大嫌いで、試練から脱落してしまいます。それでも「魔法の鈴」の力を借りて、とうとう若い娘パパゲー“ナ”と出会い、恋人になりました。
さて、こうなってしまっては夜の女王も黙っていられません。侍女達とともに、自らザラストロの神殿に侵入を試みます。しかし、雷に打たれ闇夜に落ちていきました。
ザラストロは試練に打ち勝ったタミーノ、パミーナたちを祝福して、太陽神の子オリシスとイシスを讃えたのでした。