【東洋医学】五臓六腑と臓象学について!

五臓六腑と五行

東洋医学は、人体の五臓六腑を五行に配し、人体の各部分の相互関係や病理の変転を明らかにしてきました。
※)五臓六腑の五臓とは、心、肺、脾、肝、腎のことで、六腑とは、胆、胃、大腸、小腸、膀胱、三焦を表しています。
東洋医学における五臓六腑は、西洋医学のように特定の臓器や器官など解剖学的な概念だけを指すのではなく、その生理学的、病理学的な概念をも含めて表しています。

東洋医学の臓腑理論は、相生、相尅の法則に基づいて、臓腑に内在する生理的機能を解明していますが、その大きな特色は、五行の生尅制化によって各器官や臓腑はもちろん、体全体が影響し合い、関連し合うと考えるところです。
各臓腑と器官は、相生によって互いの機能を活発にし支援し合う一方で、相尅によって互いに制約を加え合い臓腑の機能を正常に保っているのです。

しかし、この五行の生尅制化の機能が失われますと、疾病が発生することになります。
五臓六腑は、互いに関連し、影響を及ぼしあっているので、ある臓器に病変が表われると、他の臓器にも病変があらわれることになりますし、他の臓腑に病変が表われれば、先の臓器の機能にも影響が出て、異常現象があらわれることになります。
つまり、治療においては特定の臓器だけを治療するのでなく、関連している他の臓器も治療対象となる場合が多くなります。

臓象学説

臓象学説というのは、人体の観察を通じて、おのおのの臓腑、組織、器官の生理功能、病理的変化及びその相互関係を研究する学説であり、内在する臓腑の生理的活動や病理的変化が外部に現れる現象を指しています。
臓とは、人体の内臓を指し貯蔵するという意味を持ち、象とは、外部に現れる内臓の生理現象のことを意味します。
すなわち、人体の生理と病理を解明し、治療する為の普遍的意義を有しています。

臓象学説では、臓腑に基礎を置きます。
臓の主な機能は、栄養物を貯蔵し、精気を蓄え、それを無駄に流出させないことにあります。
五臓には、この他に心包絡と呼ばれる一系統がありますが、これは心の保護器官であると考えられています。
機能は、心の機能の中に含まれます。

腑は中空の管状または袋状の内臓のいい、その主な機能は水穀(飲食物)を運般し運搬中に消化吸収して、その清濁を選別することにあります。
この他に奇恒の腑として、脳、髄、骨、脈、胆、子宮が含まれ、分類されています。
「奇恒の腑」は、平常と違うという意味があり、臓と腑の中間型というべきものという意味となります。

五臓六腑の陰陽関係では、臓は陰に属し、腑は陽に属します。
また臓と腑の間には十二経脈の連系を通じて表裏の関係にあります。
臓は裏に属し、腑は表に属します。臓の経脈は、腑に繋がり、腑の経脈は臓に繋がることによって、互いに経気(人体の正常な生活力と免疫力・自然治癒力)を通わせ、作用し合っています。
例えば、肺の故障は大腸の異常とも結びつきやすく、心の病変は象徴の異常と結びつきやすいとされています。

臓腑の機能は、以下の4つの点で西洋医学とは大いに異なっています。

では五臓六腑の働きについて、順番に見ていきましょう。

まずは、「五臓」の働きからです。
それぞれの臓に対して、他の臓との関係、その臓と最も深い情緒、味覚、季節などの関係性を整理して説明したいと思います。

五臓 心

心は、「心は神を蔵す」といい、心が神を通じて、五臓六腑を統率し、意識と精神活動を受け持つとしています。
神志とは、精神・意識・思惟活動など、生命活動の総合を指しており、心は大脳新皮質を首とする高次神経系の機能を有すると考えます。
また心を神に通じる統率者としたのは、心臓が最も重要な臓器であるという考え方に基づいてます。思惟活動を行う上で、また心は、心臓の拍動に基づき血液循環をさせ脈の働きをつかさどります。
血液は血管を絶え間なく運行しています。運行は「心の陽気」と、脈の働きの双方の力を頼ってなされています。

心の機能に異常が生じると、血液の循環に変化をきたし、脈や心拍数にも異常が現れます。心の異常は顔色または舌先の変化となって現れやすいものです。

ところで、現代医学では、心臓・循環器系と、大脳新皮質は少々距離がありますが、東洋医学においては、両方の作用の組み合わせで考える必要があります。
東洋医学では、心臓・循環器系と大脳新皮質、すなわち血脈と神には密接な機能があり、心気の機能が正常であれば、心の気血が満ちたりて思惟活動が活発になり、元気が満ち溢れると考えます。

「心は小腸と表裏をなす」。これは、心と小腸が密接な関わりがあることを示しています。
「血脈を主る」。心が血の生成と脈管内での運行とに大きな関わりがあるということで、西洋医学の心臓と血液循環の関係と似ています。
「神明を主る」。神明とは、精神、意識、思惟などを指し、心が精神思惟活動を主宰していることを示しています。「心は神を蔵す」ともいいます。
「舌に開竅する」。「舌は心の苗たり」ともいわれ、舌と心との関係が、最も密接であることを示しています。
「汗は心の液である」。汗の生成と排泄が、心と密接な関係があることを示しています。
「五志は喜である」。心が五志という情緒と関連が深いことをあらわしています。
「心―火―赤―苦―南―夏」。心は五行では火、五色5では赤、五味では苦、五方では南、五季では夏になります。

※)「五志」怒・喜・思・憂・恐という五つの精神情緒のことで、五臓にそれぞれ対応。
※)「五行」木・火・土・金・水という五つの要素のこと。世界のすべての事象はこの五つの要素に分けることができる。
※)「五色」青・赤・黄・白・黒という五つの色のことで、五臓にそれぞれ対応。
※)「五味」酸・苦・甘・辛・鹹という五つの味のことで、五臓にそれぞれ対応。
※)「五方」東・南・中央・西・北という五つの方位のことで、五臓にそれぞれ対応。
※)「五季」春・夏・長夏・秋・冬という五つの季節のことで、五臓にそれぞれ対応。

五臓 肺

肺は「相傅の官」と呼ばれ、君主である心を補佐する宰相の役割を果し、人体の血液の循環を調節し、気血を調節して、五臓をよく協調させています。
したがって、血液異常では、肺に対する治療も大切になります。
人間は呼吸によって自然界の清気を取り入れ、体内の濁気を外へ排出します。呼吸による清濁の気の交換は、人体の生命維持に不可欠なものです。肺は全身の気を主り、自然界の清気と水穀の精気は胸中に集めます。
自然界の清気と水穀の精気は胸中で結合して「宗気」というものになります。
宗気には、肺の呼吸作用と心と協力して血液の運行を助ける作用があります。つまり、血の循行には宗気が深く関わっています。

「肺は大腸と表裏をなす」。これは、肺と大腸は密接な関わりがあることを示しています。
「気を主り、呼吸を主る」。これは、肺が気の生成と運搬に関与し、呼吸を主宰していることを示しています。
「宣発粛降を主る」。宣発とは、外向き上向きに布散することであり、粛降とは下向き内向きに収斂することを示しています。
「水道を調節する」。これは、肺が水液代謝を調節し維持することを示しています。
「鼻に開竅する」。これは、鼻は肺の門戸で気体が出入りする通路であることを示しています。
「涕(てい)は肺の液である」。涕は鼻腔内の分泌物で肺と関係が深いことをあらわしています。
「五志は憂である」。これは、肺が憂という情緒と関係が深いことをあらわしています。
「肺―金―白―辛―西―秋」。肺は五行では金、五色では白、五味では辛、五方では西、五季では秋になります。

宣発

肺には宣発と粛降の作用があります。宣発とは、肺の気を上方へ昇宣し、外周に発散させる作用のことです。
肺は宣発によって、気血や津液を全身に輸送して配布し、皮膚を温め、潤します。
また肺は宣発作用を通じて、体表の皮毛に衛気や水穀の精微を送ります。

皮毛は体表で外邪の侵入を防ぐ役割をしているので、肺気が不足すると、皮毛は衰え、外邪が侵入しやすくなって風邪を引きます。肺が皮毛を主るというのは、この為です。

粛降

粛降の「粛」は清粛の意味で、「降」は下降の意味であり、粛降作用とは、肺気の下方への通行と、呼吸道の清潔を保つ作用のことです。
清気は軽く散らばりやすいものなので、肺の粛降作用によって清気は下降し、精微と合わさり宗気となって、各臓器に分布されるようになっています。
また、この粛降作用は、水分代謝にも関わっています。脾の運化作用、腎の気化作用、肺の粛降作用は、それぞれが絡み合って水分代謝を促進しています。

五臓 脾

東洋医学の脾胃と言われる臓腑の機能は、現代医学の脾臓の働きとは異なり、消化器官の働きの方に相当します。
脾は、水穀(飲食物)の精微(栄養物質)の吸収し、その運化(輸送と消化)を主ります。この「運化を主る」という言い方には、二つの大きな意味が含まれます。
一つは、水穀の精微(栄養成分)を全身の各組織に輸送・配布することで、もう一つは水液の吸収と排泄を促進することです。

消化された飲食物は、まず小腸にてその清濁を分別します。小腸にて得られた有用成分と水分は、脾が吸収し、全身の各組織に輸送し、配分します。この時、脾は余分な水分を体外に排泄する働きもします。
水分代謝は非常に複雑で、脾の水分代謝促進作用、肺の粛降作用、腎の開闔作用が互いにからみ合い水分代謝を進行し、体内の水分バランスを正常に保ちます。
吸収された精微物質は、まず血中に入り、肺に転送され、全身に巡って栄養分が散布されます。

「脾は胃と表裏をなす」。これは、脾と胃とが密接な関わりがあることを示しています。
「運化を主り、後天の本である」。これは、脾が胃と共同して飲食物を消化し、水穀の精微や水液を吸収して運輸する機能を示しています。
「昇清を主る」。これは、脾が清(精微物質)を上昇・運輸することを指しています。脾は、水穀の精微を吸収して肺に上輸し、心・肺と共同して気血を化成して全身に輸布し栄養します。
「生血・統血する」。これは、脾胃が運化した水穀の精微は、血を化生する源であり、また脾気は血液を脈内に統摂して外部に漏れさせないようにすることを示しています。
「肌肉・四肢を主る」。これは、脾胃が運化した水穀の精微によって肌肉・四肢が栄養されることを示しています。
「口に開竅する」。これは、脾の機能は味覚・食欲と密接に関係し、機能状態が口に反映されることを示しています。
「涎(えん)は脾の液である」。これは、脾と涎は関連が深いことをあらわしています。涎は、よだれのことです。
「五志は思である」。これは、脾が思という情緒と関係が深いことをあらわしています。
「脾―土―黄―甘―中央―長夏」。脾は五行では土、五色では黄、五味では甘、五方では中央、五季では長夏になります。

脾と筋肉・四肢

脾は、水穀の精微を運化するので、脾の機能が正常であれば、四肢の筋肉はよく濡養されます。筋肉がついて、全身に力が満ち溢れます。このため脾は、四肢・筋肉を主ると言います。
脾の統血作用

脾は、統血の作用があります。統血の「統」は、統帥する、また抑制するの意味であり、統血とは、血液を固摂し、血が管道より溢れ出ないようにして、体内を正常に循行させる作用のことを言います。
脾気が不足すると、運化が滞り、脾はその統血機能を失います。
つまり、脾の飲食物の運化がうまくいかなくなると、血液成分が変化し、出血しやすくなるのです。
脾の統血作用は、出血性の疾患に対して、治療の有力な根拠となります。

脾は口に開竅する

脾気が足りていると、食欲が出て味覚が良くなりますが、脾気が不足すると、食欲を失い味覚は鈍くなります。また唇は脾の象徴であり、脾の機能が正常であれば、唇は紅く潤いがあります。

五臓 肝

「肝は疎泄を主る」と言われますが、「疎」とは「通」の意味であり、「泄」は「散」の意味であるので、肝は気持ちよく全身に気が通じ、散じることを好むという意味になります。
人間の精神的な活動は、心が主る以外に、肝とも密接な関係を持っており、自律神経系の活動を調節する機能は、肝の疎泄作用の一つです。肝の疎泄作用が正常であれば、情緒が安定し、快適な精神状態が保たれます。

肝は五行では木に属すので、木のように自由に生長し、抑制を嫌う性質があり、動と昇を主るのです。
そこから、肝は「将軍の官」と呼ばれ、外敵を防ぐ思慮・計謀を主り、剛強であるとされてきました。
外部からの刺激によって、感情を害すと、肝の疎泄作用は鈍り、抑鬱状態や興奮状態に陥ってしまいます。

肝には、血を貯蔵して、体の血量を調節するという働きもありますが、これも肝の疎泄作用の一つです。
この肝の疎泄機能が悪く、気血が鬱滞すると、筋肉の強張り、月経不順、子宮筋腫、目のかすみ等の症状が現れます。
筋肉の正常な状態を保つ為には、肝血の濡養をはかる必要があります。
肝血の不足は、四肢痙攣や麻痺を起こします。

「肝は胆と表裏をなす」。これは、肝と胆が密接な関わりがあることを示しています。
「疏泄を主る」。これは、肝が気の疏通と昇発・宣泄の機能を持つことを示しています。
「血を蔵す」。これは、肝が血を貯蔵し血流量を調節することを示しています。
「筋を主る」。これは、肝と筋の密接な関係を示しています。
「目に開竅する」。これは、肝は目と関係が深いことを示しています。
「涙は肝の液である」。これは、肝と涙が関係が深いことを示しています。
「五志は怒である」。これは、肝が怒という情緒と関係が深いことをあらわしています。
「肝―木―青―酸―東―春」。肝は五行では木、五色では青、五味では酸、五方では東、五季では春になります。

五臓 腎

「腎為先天之本」と言い、泌尿生殖器系と一部の神経系、造血系、内分泌系の機能を包括したものの総称で、古来、腎には二葉あって、左側を、“腎”、右側を、“命門”、としています。
腎は、陰を主り、水に属し、命門は、陽を主利、火に属します。
そこで“腎”は「水火の臓」の呼称もあります。
腎は“精を蔵し、命門の火を主る”と言い、これは、人体の成長、発育、生命活動に必要な「精(腎陰)」「命門の火(生命のエネルギー、腎陽)」の相互作用によって、生長、発育、人体の機能調節を行っています。

「腎は膀胱と表裏をなす」。これは、腎と膀胱に密接な関係があることを示しています。
「精を蔵し、生殖・発育を主り、先天の本である」。これは、「精を蔵す」のが腎の主要な機能であり、腎が蔵する精は「腎精」と呼ばれ、生命の根本であることを指しています。
「水を主る」。これは、腎が水液代謝を調節する機能をもつことを示しています。
「納気を主る」。これは、腎が肺の吸入した気を取り入れて呼吸を調節する機能をもつことを指しています。
「骨を主り、髄を生ず」。これは、腎精が骨格の成長発育を促進し、骨髄・脳髄を滋生することを示しています。
「耳に開竅する」。これは、腎は耳と関係が深いことを示しています。
「二陰を主る」。これは、二陰とは前陰(尿道と外生殖器)と後陰(肛門)であり、腎と関係が深いことを示しています。
「唾は腎の液である」。これは、腎が唾(つば)と関係が深いことをあらわしています。唾と涎は、ともに口津(唾液)ですが、やや粘調なの唾で、希薄なのが涎です。腎の液が唾で、脾の液が涎ということです。
「五志は恐である」。これは、腎は恐という情緒と関係が深いことをあらわしています。
「腎―水―黒―鹹―北―冬」。腎は五行では水、五色では黒、五味では鹹、五方では北、五季では冬になります。

六腑 胆

胆は、水穀(飲食物)を受け入れないので、他の五臓と異なるところから「奇恒の腑」の一つともしています。
胆の主な機能は、胆汁を貯蔵して、必要に応じて腸に胆汁を送り込み、食物の消化を助けることにあります。
また胆は、「中正の官」であり「決断を主る」とも言います。
人間の精神活動は、心が司令し、統率しますが、決断を下す時は、胆が主ることになります。

つまり胆は、人間の精神活動に深く関与しており、中正の優れた判断は胆にて下されるのです。
思慮深く、あれこれ思いを巡らしても、優柔不断で決断ができない人は、胆が虚であるとか、胆が病気であると考えます。
肝の素晴らしい謀慮も、胆の働きをなくしては、決断力を欠き、実行不能となってしまうのです。
といって、胆が盛んすぎると、人は気が短くなり、怒りやすくなったりもします。

「肝と表裏をなしている」。これは、肝と胆が密接な関係にあることを示しています。
「胆汁の貯蔵と排泄」。これは、西洋医学と同じです。
「決断を主る」。これは、胆が事物を判断するということがらに関与していることを示しています。

六腑 胃

胃は「水穀の海」とも呼ばれ、飲食物はまず胃で受納され、腐熟(消化)します。
脾と胃は表裏の関係にあり、飲食物は胃で「受納」した後、下降し、脾によって「運化」されます。
脾が「昇」を主るのに対して、胃は「降」を主ります。
胃気が降りることによって、水穀は下降して、消化されますが、脾気は昇ることによって、精微を全身に散布するのです。
つまり脾と胃は、密接な関係があり、相互に依存しながら、共同してそれぞれの機能を高めています。
また脾胃は五臓六腑の活動源である水穀の精微の、受納・運化を主るところなので、脾を後天の本と言い、人間の豊かな身体形成の関わる根本とされています。

「脾と表裏をなす」。これは、胃と脾が密接な関係があることを示しています。
「水穀の受納と腐熟を主る」。これは、胃が消化吸収の機能をもつことを示しています。
「通降を主る」。これは、飲食物の下方への運行を示しています。

六腑 小腸

小腸は、飲食物の清濁を分別を主る機能を持っています。
小腸によって、栄養分は脾に取り込まれ、不要分のうちの水液は膀胱に、固形物は大腸へおろされます。
心と小腸は、経脈を通じて互いに繋がっています。
つまり心火が小腸に移ると、小便は赤くなり、血尿が現れることもあります。

「心と表裏をなす」。これは、小腸と心が密接な関係があることを示しています。
「受盛の官」。これは、胃で腐熟(消化)された水穀の精微のうち、濁の部分を受け取ることを示しています。
「清濁を必別する」。これは、胃から送られた濁を、さらに清と濁に分け、濁を大腸に送ることをあらわしています。

六腑 大腸

大腸の上は小腸につながり、下は肛門になっており、主に糟粕を伝送し、肺とも関係があります。
飲食物は脾、胃、小腸で消化吸収された後、余分の水分や糟粕は下の方に送られ、糞便となり、肛門から体外に排出されるのですが、便秘、下痢、大便失禁などの疾病は大腸の伝送異常となります。
肺と大腸は表裏をなしており、経絡循行上関係しています。
肺の粛降機能は大腸の伝導を助けるし、大腸の伝導作用は肺の粛降を助けるのです。

「肺と表裏をなす」。これは、大腸と肺が密接な関係があることを示しています。
「槽粕の伝導を主る」。これは、糟粕(かす)を肛門から出すことをあらわしています。

六腑 膀胱

膀胱の主な機能は尿の貯蔵と排泄であり、腎の気化作用と密接に関係しています。尿の貯蔵は腎気の固摂作用であり、排泄は腎気の通利作用です。この二つの作用を腎の「開合作用」といっています。
この腎気の「開合作用」は尿が膀胱に下注し、一定量貯ってから排泄するという作用をコントロールしています。
膀胱の気化作用は腎の気化作用の一部分であるので、腎の開合が失調し膀胱の水門がよく開かなければ尿閉、排泄困難を起こし、水門がよく閉じなければ遺尿になる。膀胱の「開合作用」は、腎の「開合作用」のコントロールの如何にかかっています。

「腎と表裏をなす」。これは、膀胱と腎が密接な関係があることを示しています。
「尿の貯蔵と排泄」。これは、西洋医学とほぼ同じです。

六腑 三焦

六腑の一つで上焦、中焦、下焦に分かれています。
上焦は一般に胸から上の部位で心、肺が包括され、中焦は胸から下、臍から上の部位で脾、胃が包括され、下焦は臍から下の部位で腎(肝)、膀胱、小腸、大腸が包括されます。
要は三焦は、各臓腑の水液の代謝と気化を行っているのです。
三焦の問題は、《内経》の昔より現代に至るまで種々の論争があり、漢方界で最大の問題になっているが、未だに明確な結論が出るまでに至っていない。ここで、その中で比較的はっきりした点について述べる。

「心包と表裏をなす」。これは、三焦と心包が密接な関係があることを示しています。
「気機の昇降出入を主る」。気機の昇降出入とは、前回の「気・血・津液」で説明したとおり、気が昇ったり、降りたり、出たり、入ったりすることで、三焦がこれに関与していることを示しています。
「水液運行の通路である」。これは、三焦が水液の運行・代謝に関与していることを示しています。
「三焦の部位」。三焦は、上焦、中焦、下焦の三つを合わせたもので、隔膜より上を上焦、隔膜から臍までを中焦、臍から下を下焦としています。

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