【千夜一夜物語】(26) 黒檀の馬奇談(第414夜 – 第432夜)

前回、”「蕾の薔薇」と「世の歓び」の物語”からの続きです。

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昔、ペルシャにサブールという名の王がいて、王には3人の美しい王女と、カマララクマールという名の1人の美しい王子がいた。
ある春の祭りの日、3人の学者が王に贈り物をした。
ヒンディー(インド)の学者の献上品は「黄金のラッパを持った黄金の人形」で、その人形は遥か彼方の敵を見つけラッパの音で追い払うものであり、ルーミ(ギリシャ)の学者の献上品は「黄金の24羽の雌孔雀と1羽の雄孔雀」で、24羽の雌孔雀は1日の24時間を表し雄孔雀が1時間ごとに別の雌孔雀の上に載り時を知らせる時計であり、ペルシャ人の献上品は「黒檀の馬」で、それに乗れば空を飛んでどこへでも行けるというものであった。
王は喜び、学者たちの願いに従い、3人の姫をそれぞれ結婚させることにした。

しかし、ペルシャ人の学者と結婚することになった末の王女は、ペルシャ人が非常に高齢な醜い老人だったので結婚を嫌がり、泣き出し、それを見たカマララクマール王子はサブール王に結婚の取り止めを申し出たところ、王は黒檀の馬のすばらしさを見れば王子も考えが変わるだろうと言ったので、王子は黒檀の馬を試すことになった。
ペルシャ人学者は結婚に反対した王子を快く思っていなかったので、王子が黒檀の馬に乗った際にまず上昇する栓だけを教え、それを回した王子は黒檀の馬とともに上昇し戻ってこなくなってしまった。
王は怒り、ペルシャ人学者を土牢に入れた。

カマララクマール王子は遥か上空まで行き死を覚悟したが、下降の栓を見つけ黒檀の馬を制御することを覚え、空中の旅を楽しみ、夜になってアル・ヤマーン(イエメン)の都サナの王宮の屋上に降り立った。
王子は王宮に忍び込み、部屋の寝台で全裸で眠っている美しいシャムスエンナハール王女を見つけ、そっと右頬にキスをすると王女は目を覚ました。
王子と王女は互いが好きになり、寝台の上で語らっていたが、王子の進入に気付いた侍女と宦官が王に知らせ、王は王女の部屋に来て王子をとがめ、翌日、王の軍と王子が戦い、王子が勝てば王女は王子のものになるということになった。
翌日、戦いが始まると、王子は黒檀の馬に乗り空を飛んで逃げてしまった。

カマララクマール王子はペルシャの父王の王宮に帰り、ペルシャ人学者を牢から釈放したが、美しいシャムスエンナハール王女を忘れられなかった。
王子は再び黒檀の馬に乗り、アル・ヤマーンのサナの都の王宮に忍び込み、王女と再会し、互いの愛を確かめ、王女と共に黒檀の馬に乗って飛び立ち、ペルシャの父王の王宮の庭園に降り立った。
王子は王女を王宮の庭園に置いてサブール王に報告に行ったが、その隙にペルシャ人学者が庭園に入り黒檀の馬とシャムスエンナハール王女を見つけ、王子の使いで王女を離宮に案内すると王女を騙し2人で黒檀の馬に乗って飛び立ってしまったため、王子が庭園に戻った時には王女はどこにも見つからなかった。
王子は悲しみ、黒檀の馬が消えていることからペルシャ人学者が連れ去ったのだと考え、王女を探す旅に出た。

ペルシャ人学者はシャムスエンナハール王女を連れて黒檀の馬に乗りルーム人の国に飛んで行き、ある牧場に降り立ったが、ちょうどそのとき、その国の王が近くに来ていたため、王の奴隷たちが学者を捕まえてしまった。
シャムスエンナハール王女が王にペルシャ人学者に誘拐されたと訴えたため、ペルシャ人学者は土牢に入れられた。
王女は王の城に連れて行かれ、王から結婚を申し込まれるが、カマララクマール王子と離れ離れになったことを悲しみ病気になってしまった。
王は数々の医者に治療をさせるが、一向に王女の病気は治らなかった。

一方カマララクマール王子は王女を探す旅を続け、ある町の宿屋で黒檀の馬とペルシャ人学者と美女の噂を聞き、その町に行き、旅の医者と言って王に謁見し、王女を診ることになった。
シャムスエンナハール王女は、カマララクマール王子を見るとすぐに病気が治った。
王子は王に、黒檀の馬の魔神(ジンニー)が病気の原因で、再発を防ぐには、黒檀の馬が降り立った牧場に黒檀の馬と王女を連れて行き魔神を封じる必要があると言って用意させ、そのまま王女と黒檀の馬に乗って空を飛んで逃げてしまった。
王は怒り、ペルシャ人学者を死刑にした。

カマララクマール王子はシャムスエンナハール王女と黒檀の馬に乗って、ペルシャのサブール王の王宮に戻り、結婚した。
王子はシャムスエンナハール王女の父に手紙と大量の贈り物を送り、結婚したことを知らせた。
サナの王は喜び、カマララクマール王子は毎年贈り物を続けた。
サブール王は再び王子がいなくならないようにと、黒檀の馬を壊してしまった。
カマララクマール王子の末の妹は、サナの王の王子と結婚した。
カマララクマール王子、シャムスエンナハール王女をはじめ全員が幸せに暮らした。

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次回は、女ペテン師ダリラとその娘の女いかさま師ザイナブとが、蛾のアフマードやペストのハサンや水銀のアリとだましあいをした物語です。

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