日本語って本当に素晴らしいと思えるのが、様々な機微や心情、そこから見える景色や風景を、それぞれの情感と共に言葉として美しく言い表せているところです。
最近ではなかなか使うこともなくなってきている言葉ばかりではありますが、例えば風を表す言葉ひとつとっても、ホント素敵だなあ、という気持ちにさせてくれます。
ということで、春にちなんだ風の言葉を集めてみました。(多少関係ないものも交じっていますが、そこはご愛嬌ということで。。。)
日常の中で、美しい言葉を使い続けていきたいものですね。
東風 ―こち―
「東風吹かば匂いおこせよ梅の花、主なしとて春な忘れそ」菅原道真の歌以来、東風は春を告げる風として有名です。けれども、東風と呼ぶ例は比較的少なく、その上に何らかの名詞や形容詞がつくことの方が多いようで、それによって意味も変わってきます。雲雀東風(ひばりごち)、へばるごち、あめごち、鰆(さわら)ごち、桜ごち、梅ごち、正東風(まごち)、強東風(こわごち)などがあります。
春一番 ―はるいちばん―
春になって初めて吹く強い南風のことで、春の嵐です。もともと一部の漁業関係者の間で使われていた言葉が広まったものです。春一番に続く強い南風を、春二番、春三番と呼ぶことがあります。
比良の八荒 - ひらのはっこう-
陰暦二月二四日前後に寒気がぶり返し、琵琶湖上に吹き降りる強い風をいいます。関西では、比良の八荒が済まないうちは本当の暖かさにはならない、とされ、これを荒仕舞い(あれじまい)といいます。涅槃西風の別の呼び名と思われます。 漣(さざなみ)の比良山風の海吹けば釣りする蜑(あま)の袖かへる見ゆ(万葉集巻第九)
風光る - かぜひかる-
うらうと晴れた春の日は、光が満ちて風が光っているように感じられます。風を心地好いと感じるのは、厳しい冬を乗り切ったあとの心のゆとりかもしれません。 日の春のちまたは風の光哉(暁臺)
八重の潮風 ―やえのしおかぜ―
はるか遠くの海から吹いてくる風。
吹花擘柳 ―すいかはくりゅう―
花をそっと吹き開かせ、また柳の芽を割き分けるようにそよぐ春の風。
清明風 ―せいめいふう―
春分を境に風も明るさを増してくる、南東から吹く風。
東尋坊 ―とうじんぼう―
北陸地方の、八十八夜の頃の西よりの暴風。
東尋坊は平泉寺の東尋坊が殺された断崖の名前ですが、その東尋坊の怨霊の祟りの風といわれるそうです…。
梅風 ― ばいふう―
梅の花の香りをとどけるような風。
梅の花は春を告げる花とされています。
彼岸西風 ―ひがんにし―
釈迦涅槃会の頃に吹く柔らかな西風のこと。
西方浄土から吹くと言われます。
春嵐 ―はるあらし―
春先に吹く強い風。
木の芽風 ―このめかぜ―
木の芽を吹出させる春の風。
木の下風 ―このしたかぜ―
木の下を吹く風。
恒風 ―こうふう―
つねに同じ方向に吹く風。
貿易風・偏西風・極風などのこと。
暁風 ―ぎょうふう・げうふう―
明け方の風。
川風 ―かわかぜ―
川の上を吹き渡る風。川から吹いてくる風。
凱風 ―がいふう―
南からやわらかに吹く風。おだやかな風。
夜半の嵐 ―よわのあらし―
夜吹く風。
また、一夜で桜花を散らす嵐。
裂葉風 ―れつようふう―
葉っぱを切り裂くほど激しく吹く風。
筍流し ―たけのこながし―
筍の生える時分の涼しい南風。 多くは雨を伴う。
茅花流し ―つばなながし―
茅花が咲くころの、湿気を含んだ南風。
茅花の穂がほぐれるころ吹く南風。
花風 ―はなかぜ―
桜を散らすように吹く風。
花嵐 ―はなあらし―
桜の花の盛りのころに吹く強い風。
また、その風で桜の花が散り乱れること。
初瀬風 ―はつせかぜ―
大和の初瀬の辺りを吹く風。
刃風 ―はかぜ―
刀で激しく切るときに生じる風。
羽風 ―はかぜ―
羽の動きによって起こる風。
あるいは舞人の袖による風。
天狗風 ―てんぐかぜ―
突然はげしく吹きおろす旋風。つむじかぜ。
袖の羽風 ―そでのはかぜ―
衣の袖をうち振るときに起こる風を、鳥の羽風にたとえていう語。
黒風 ―こくふう―
砂塵を巻き上げ、空を暗くするようなつむじ風。
光風 ―こうふう―
晴れあがった春の日にさわやかに吹く風。
また、雨あがりに、草木の間を吹き渡る風。
葛の裏風 ―くずのうらかぜ―
クズの白い葉裏を返して吹く風。
花信風 ―かしんふう―
花の咲くのを知らせる風。
初春から初夏にかけて吹く風をいう。
黄雀風 ―こうじゃくふう―
陰暦5月に吹く東南の風。
この風の吹くころ海魚が変じて黄雀になるという中国の言い伝えによる。
油風 ―あぶらかぜ―
4月ころ吹く南寄りの穏やかな風。油まじ。油まぜ。
煽風 ―あおちかぜ―
物がばたばたして起こる風。
朝東風 ―あさごち―
春の朝に吹く風。
若葉風 ―わかばかぜ―
若葉を吹きわたる風。若葉の頃の風。
突風 ―とっぷう―
瞬時に吹く強い風。積乱雲などに伴って起こる。
春風 ―はるかぜ―
春に吹く風のこと。
山背 ―やませ―
春から秋に、オホーツク海気団より吹く冷たく湿った北東風または東風(こち)のこと。
特に梅雨明け後に吹く冷気を言うことが多い。
やませが長く吹くと冷害の原因となるそうな。
青嵐 ―あおあらし、せいらん―
青葉のころに吹きわたる風。
初夏の青葉を揺すって吹き渡るやや強い風。
あいの風 ―あいのかぜ―
春から夏にかけて、日本海沿岸で吹く、北ないし北東の風。あい。あゆのかぜ。