【千夜一夜物語】(24) 奇怪な教王(第393夜 – 第399夜)

前回、”智恵の花園と粋の庭”からの続きです。

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アル・ラシードとジャアファル、マスルールはいつものようにお忍びで遊びに行こうとしたが、出した覚えのない船遊び禁止令が出ていることを知る。
教王に扮した若者を中心として、ジャアファルらのそっくりさんを揃えたにせものの教王一行が町に出没しているのだ。
次の日、アル・ラシードはにせものの後をつけてみるが、すぐに見つかって捕まってしまう。
何者かと問う若者に異国の商人だと答えると、若者はアル・ラシードらを宮殿に連れていった。

そして酒宴になるが、歌手が悲恋の歌をうたい出すと、若者は衣服をやぶり、叫び声をあげて気を失う。
すぐに息をふきかえしたが、その騒ぎでアル・ラシードらは、若者の身体に棒やムチで叩かれた跡が無数についていることに気づいた。
訳を問うと、若者は次のことを話しはじめた。

若者は宝石商組合頭の息子ムハンマド・アリで、父の遺産を受け継いで何不自由なく暮らしていた。
ある日美しい乙女が彼の店にあらわれ、宝石を見せてくれという。
秘蔵の首飾りを示すと、乙女は代金を取りに来てくれといい、若者を自宅へ招いた。
乙女は若者とふたりきりになると、わたしはあなたが好きなのだ、今日のことはすべてあなたを招くための口実なのだと告白する。
若者は、乙女が総理大臣の妹だと知ってとまどったが、求愛を受け入れ、ふたりはその場で結婚の誓いをした。

一か月のちのこと。
乙女は湯浴みに行ってくるので二三時間待っていてくれ、その間どこにも出かけてはならぬと言い置いて外出する。
すると直後に、セット・ゾバイダの使いが来て、総理大臣の妹の夫にぜひ会いたいと申し入れてくる。
断るわけにいかず、若者はセット・ゾバイダに対面して帰った。
すると乙女はかんかんに怒り、若者の首をはねようとする。
セット・ゾバイダと乙女は、互いに仇敵として憎み合っている仲だったのだ。
使用人たちのとりなしで死はまぬがれるが、若者は杖とムチでさんざんに打たれ、放り出された。

傷が治ると、若者は教王のコスプレをして町を歩くようになった。
それは、教王の后と総理大臣の妹のあいだで翻弄された心の傷を癒すためなのだ。

自分の宮殿へ帰ったアル・ラシードは、若者を呼び出し、同じ話をさせた。
そして総理大臣の妹も呼び出し、互いに異存がないことを確認すると、ふたりをふたたび娶せた。

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次回は、「蕾の薔薇」と「世の歓び」の物語です。

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