江戸時代後期に制作された、歌川(安藤)広重の傑作「東海道五十三次」。
江戸から京都までの道のりにおける、53の宿場と行き交う人の様子を描いた浮世絵で一見53枚かと勘違いしがちですが、実はスタートの江戸とゴールの京都を合わせて合計の枚数は55枚からなる、浮世絵木版画の連作です。
広重も以前は安藤広重とも呼ばれていましたが、安藤は本姓、広重は号なので、双方を組み合わせた呼称もおかしな点と、広重自身もそう名乗ったことはないことから、現代では歌川広重が一般的となっています。
以前整理した北斎※)と同様、ゴッホやモネなどの画家に影響を与え、世界的に著名な画家でもあります。
※)葛飾北斎の傑作「富嶽三十六景」は、四十六景だって知ってました?
今では、東京から京都まで新幹線だと2時間20分弱ですが、江戸時代当時の人々は江戸日本橋から京都まで約500kmの東海道を、2週間程かけて旅していたそうです。
今では考えられませんが、日本橋から京都に連なる53の宿駅の旅は、次々に変わる景色、季節、時間、行き交う人々の生き生きとした営みをひとつひとつじっくりと味わうことのできた情緒豊かな道行だったに違いありません。
広重はそんな「東海道五十三次」を、それぞれの宿駅ごとに季節感のある題材として選び、浮世絵風景画最大の特色とも言える郷土色を豊かに描き出した傑作です。
実は広重は、生涯に東海道を描いたシリーズを20種類以上制作しているのですが、この「東海道五十三次」は、思わず感情移入してしまう程に人情味溢れる人物たちが多く登場する、日本美術史上に名を残す永遠のベストセラーとなりました。
『東海道五十三次』