【千夜一夜物語】(12) 「幸男」と「幸女」の物語(第237夜 – 第248夜)

前回、”カマラルザマーンとあらゆる月のうち最もうるわしい月ブドゥール姫との物語”からの続きです。

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昔、クーファの町に「春」氏というの豪商がいた。
ある日、春氏に男の子が生まれ、その子は「幸男」と名づけられた。
春氏は、奴隷市場で、生まれたばかりの女の子をつれた女奴隷「栄え」を買い、女の子を「幸女」と名づけ、幸男の妹のように育てた。
幸男も幸女も美しい若者に育ち、二人が12歳になったとき、二人は結婚した。

4年後、クーファの太守ベン・ユーセフ・エル・テカフィは、16歳になった幸女の美しさを聞き、誘拐して教王(カリーファ)アブドゥル・マリク・ビン・マルワーンに献上しようと、老婆を雇った。
老婆は祈祷者の振りをして春氏の家に入り込み、幸女を家の外に誘い出して誘拐した。
幸女は教王に献上されたが、あまりに泣くので、教王の妹セット・ザヒアは不憫に思い介抱した。
しかし、幸女は何日経っても泣くばかりで病気になってしまった。

一方、幸男は幸女を捜すが、まったく見つからなかった。
ペルシャ人の学者に占ってもらうと、幸女はダマスにいると出たので、幸男とペルシャ人学者はダマスに行き、そこで医者を始めた。
医者は大評判となり、ある日、後宮の老婦人が相談に来たが、それは幸女の病気のことであった。
幸女が後宮にいることが分かったので、幸男は老婦人の手引きで女装して後宮に忍び込んだが、部屋を間違え、セット・ザヒアに見つかってしまった。
親切なセット・ザヒアは事情を聞き、幸男を幸女に合わせてくれた。
そこに教王が入ってきた。

セット・ザヒアは教王に
「昔、ある国で兄妹のように育てられた子どもが大人になり結婚したが、妻はさらわれ王の後宮に献上された。
 夫は妻を捜し後宮に忍び込んだが、王に見つかり、2人とも処刑されてしまった。
 この話の王の行為をどう思うか」と尋ねた。
教王が「その王の行為は軽率である。」と言ったので、セット・ザヒアは事情を話し、後宮に忍び込んだ幸男を許すよう教王に頼んだ。
教王は幸男を許し、幸女を幸男に返し、褒美を与えた。
またペルシャ人学者を侍医に任命した。
幸男と幸女はクーファに帰り、幸せに暮らした。

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次回は、「ほくろ」の物語です。

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