400年近く前に書かれた近江商人の家に古来から伝わる「商売の十教訓」というものがあります。
近江商人というと「三方よし」が有名ですが、この教訓もひとつひとつじっくり読んでみると、昔の商売に留まらず現代のビジネスの中でも十分に参考にできるものだと思いましたので、参考までに挙げておきます。
(ご存知の方は、読み飛ばしください)
1. 商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり。
これは利真於勤そのものですね。利益はその任務に懸命に努力した結果に対する「おこぼれ」に過ぎないという考え方です。
2. 店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何。
3. 売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる。
これはまさに三方よしでいう”売り手よし、買い手よし、世間よし”であり、商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献するべきという考えそのものですね。
4. 資金の少なきを憂うるなかれ。信用の足らざるを憂うべし。
5. 無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ。
徹底してお客起点であるべし、ということですね。
6. 良き品を売ることは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり。
これは陰徳善事の人知れず善い行いをすることを言い表したものだと思います。自己顕示や見返りを期待せず人のために尽くすことは大事ですよね。
7. 紙一枚でも景品はお客を喜ばせるものだ。つけてあげられるもののない時は笑顔を景品にせよ。
8. 正札を守れ。値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ。
9. 常に考えよ、今日の損益を。今日の損益を明らかにしないでは寝につかぬ習慣にせよ。
10. 商売には好況、不況はない。いずれにしても儲けねばならぬ。
当たり前ですが、それだけに深い教訓ですね、一番最後に持ってきていることからもビジネスの原則をしっかり据えていることがよくわかります。
あと、十教訓には入っていませんが、近江商人の基本戦略として、
1. 強い相手と戦わない。
2. 地域戦略(人口の少ない地域)を重点地域とする。
3. 出店は郡部の一騎打ち戦的場所で。
4. 軽装備
5. 卸はしないで直売
もあるようです。
時代を超えた教訓、大事にしたいですね。