南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領が、27年間の投獄中に心の支えとした詩『インビクタス』。
ラテン語で「負けない」「不屈」を意味するこの詩の作者は、イギリスの詩人・ウィリアム·アーネスト·ヘンリー(William Ernest Henley)です。
ウィリアムは12歳の時、骨結核を患い左足を切断。
ロンドンに移り住み、ジャーナリストになることを試みるも、病弱なためその後8年間入院生活となり、右足も切断しなければならないほどの危機にまで遭遇。
※)ロバート・ルイス・スティーヴンソンが書いた『宝島』に登場するジョン・シルバーは、左足を失ったウィリアムがモデルといわれている。
やがて結婚をし娘を授かるも、6歳のとき病気で亡くしてしまう。
こうしたさまざまな人生の試練に向かい合った際の、ウィリアムのわが身の魂の救済、心の奥底からの不屈の叫びを、詩『インビクタス』は歌っているのです。
2013年12月10日に行われたウィリアムの葬儀では、オバマ大統領がスピーチの中で『インビクタス』の一部が引用されました。
ネルソン・マンデラ元大統領を題材とした映画でも、この詩のタイトルが使われています。
『インビクタス/負けざる者たち』
大統領に就任したばかりの南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領(モーガン・フリーマン)は、長年のアパルトヘイトのせいで、黒人と白人がお互いに相手を憎んだり怖れたりしてバラバラになりそうな国民の気持ちを1つにまとめるのに、1995年に自国開催されるラグビー・ワールドカップで南ア代表チーム、スプリングボクスの優勝を望み、その主将フランソワ・ピエール(マット・デイモン)と接触。
マンデラが「状況は変わっている。スポーツを利用して新しい国家の建設を目指し、我々の考えを広く伝えるしかない。そうすることが、この国の平和と安定に繋がる」と説得する中、国際試合から締め出されてきた影響もあって、それまでまったく振るわなかったスプリングボクスが大方の予想を裏切って、ついにはワールドカップで優勝したという実話に基づいた感動の映画です。。
どんなに理不尽で過酷な運命にも決してくじけず、自分の運命は自分で切り開くと宣言する詩から、力強い何かを感じてみてください。
『インビクタス(Invictus) ウィリアム・アーネスト・ヘンリー』
私を覆う漆黒の夜
鉄格子にひそむ奈落の闇
私はあらゆる神に感謝する
我が魂が征服されぬことを
無惨な状況においてさえ
私はひるみも叫びもしなかった
運命に打ちのめされ
血を流しても
決して屈服はしない
激しい怒りと涙の彼方に
恐ろしい死が浮かび上がる
だが、長きにわたる脅しを受けてなお
私は何ひとつ恐れはしない
門がいかに狭かろうと
いかなる罰に苦しめられようと
私が我が運命の支配者
私が我が魂の指揮官なのだ
『INVICTUS – William Ernest Henley』
Out of the night that covers me,
Black as the Pit from pole to pole,
I thank whatever gods may be
For my unconquerable soul.
In the fell clutch of circumstance
I have not winced nor cried aloud.
Under the bludgeonings of chance
My head is bloody, but unbowed.
Beyond this place of wrath and tears
Looms but the Horror of the shade,
And yet the menace of the years
Finds, and shall find, me unafraid.
It matters not how strait the gate,
How charged with punishments the scroll.
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.