蒔絵!漆工芸の装飾技法の極み!

漆芸の装飾技法の一つで、漆で描いた下絵に金粉や銀粉、色粉などを蒔き付けて文様を表す蒔絵。
今回は、日本オリジナルの伝統工芸・漆器※)の芸術性を高める上でも欠かせない蒔絵についてです。
※)漆器に関しては、以前に整理した内容も参考にしてください。
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蒔絵といってもピンと来ないかもしれませんが、身近なところだとお椀や硯箱、携帯に貼るシールなどにも使われていますね。
蒔絵シール

蒔絵の技法は、奈良時代にその源流がみられ、平安時代以降高度に発達したと言われていますが、蒔絵という言葉自体は竹取物語※)が最古といわれ、語源は国家珍宝帳に記載される〈末金鏤(まつきんる)作〉から末金絵になったとする説や、金銀粉を蒔き付ける技法から来たとする説があるようです。
※)竹取物語については、”十三夜再び 171年ぶりの「後の十三夜」”もご参考ください。

漆で文様を描き、その上に細かな金銀粉や色粉を蒔きつけて付着させるもので、
・金粉を蒔き放すか又は磨いて仕上げる平蒔絵
・金粉を蒔いて漆で塗り込み、研ぎ出して文様を表す研ぎ出し蒔絵
・漆下地などで立体的に盛り上げた文様の上に金粉を蒔く高蒔絵
など、いろいろな技法が存在する上に、絵以外の地の装飾としても、梨子地・塵地・平目地・沃懸(いかけ)地などがあります。

主な技法をざっと、整理しておきます。

【平蒔絵】
蒔絵の中で、最も基本的な技法は平蒔絵という技法で、消し平蒔絵と磨き平蒔絵がある。
平蒔絵は、漆で文様を描き、金銀粉を蒔いた後に、文様の部分だけに摺り漆をして研磨したもの。
器面全体を漆で塗り込めない点が研出蒔絵と異なる。
消し平蒔絵は、漆を使って出来るかぎり薄く文様を描き、その上に消し金粉とよばれる金粉を粉筒または、真綿に付けて蒔く。
漆が乾いたら、摺り漆(金粉の上から灯油で希釈した透漆を施すこと)をし、再度乾かす。
磨き平蒔絵は、消し金粉より粒子の粗い金粉を蒔く。
その後は消し平蒔絵と同じ手順で、最後に漆が乾いた後、金粉の上から更に磨き作業を行うことで、より光沢のある蒔絵になる。

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【研ぎ出し蒔絵】
金粉や銀粉を蒔いた後に、器面全体に漆を塗りかぶせ、乾燥後に木炭で漆を研磨して下の蒔絵層を出す技法。
研磨した後には、器の表面は平滑になる。
金銀粉の精製技術が未発達で、粉の粒子が荒かった平安時代までは、この技法が蒔絵の主流であった。
平蒔絵に対して、研ぎ出し蒔絵は漆と蒔絵の面が均一になっているために、表面を強く傷つけたり、意識的に削らない限り金粉が取れない。
研ぎ出し蒔絵は平蒔絵のような直接の光り方をせず、落ち着いた光を放つ。

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【高蒔絵】
文様部分の漆を高く盛り上げて浮き彫り状に表現したもの。
高く盛り上げる技法にはいくつかあり、
・上塗りを施し乾燥させた器の蒔絵の部分に漆を厚めに塗り盛り上げる漆上げ
・蒔絵を施す部分を厚めに塗った漆の上に炭粉や焼錫粉を蒔いてさらに盛り上げる炭粉上げ、焼錫粉上げ
・水練りした砥粉に生漆を混ぜた錆漆で盛り上げる錆上げ
などがある。
高蒔絵は、盛り上げて形を作った上に平蒔絵や研ぎ出し蒔絵などを施すという工程になるため、かなりの時間と労力がいる。

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【肉合(ししあい)蒔絵】
高蒔絵と研出蒔絵を合わせた技法。
文様の一部を浮き彫り状に盛り上げた上で、器面全体に漆を塗りかぶせ、木炭で研ぎ出す。
研出蒔絵と異なり、研磨後、器の表面は平滑にならない。

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【卵殻蒔絵】
模様に主として卵殻を多く使う蒔絵であり、色漆の中でも白色の漆は、卵殻の白色を用いる。
卵のカラを割り螺鈿の様に漆面に貼り、金銀粉と共に蒔絵に使う。
卵には、薄く繊細な表現に向いているためウズラの卵の殻をよく使用する。

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【スクリーン蒔絵】
大量生産が行われるようになり、従来の手書き蒔絵にかわる近代技法として登場した。
シルクスクリーン技術を用いることにより、同じ柄を大量に短時間で描くことが可能となったが、金属粉を蒔く工程は今でも職人の手作業で行われる。
漆の代わりにウレタン塗料などが用いられることも多く、使用する金属粉も伝統蒔絵で用いられるものとは異なる場合がある。

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漆工芸の代表であり、日本オリジナルの伝統工芸・漆器の芸術性を高める上でも欠かせない蒔絵。
日常の生活の中で使われることも少なくなってきた蒔絵ですが、グローバル化する中で独特の文化工芸技術のひとつとして、改めて見直してみることが大切ですね。

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