スコットランド独立の住民投票に見る

スコットランドの英国からの独立を問う住民投票が、いよいよ明日(2014/9/18)となってきました。
当初は、反対派が大勢を占めており大きなニュースにもなっていませんでしたが、このところ賛成派が過半数に迫る勢いを見せ、英国のキャメロン首相(保守党)が、連立与党の自由民主党党首のクレッグ副首相、野党労働党のミリバンド党首とともに急遽スコットランド入りし独立を支持しないように訴えたり、果てはエリザベス女王までもが政治的な発言に触れるなど、慌ただしい動きとなっています。
ちなみに、住民投票で独立賛成票が過半数を超えると、2016年3月にも独立してしまいます。

そもそも住民投票で独立が出来るの?なんて、日本に住んでいると現実味がない話題なのですが、スコットランド議会には歴史的な背景もあってかなりの権限が委譲されていたため、このような住民投票ができることになっています。(日本では、例えば沖縄が琉球國(琉球王国)を復活させるからといって沖縄県議会が「県民の住民投票を実施します」と宣言してもどうにかなるものではありませんが、それが出来る下地があるお国柄がすごいですよね)

スコットランドについては、バグパイプやキルト、スコッチウイスキーぐらいしか思いつかないのが本音ですし、最近のニュースでも英国の国旗として見慣れた「ユニオンジャック」のデザインが変更されるかも、ぐらいの上っ面な扱いしかされないのが大半なので、そこを深堀りしておくためにも良い機会だと思い、なぜこのような騒動になっているのかを、少し整理しておきたいと思います。

では、まず英国の国旗「ユニオンジャック」からです。
英国の旗はイングランド、スコットランド、アイルランドの3つの国旗を掛け合わせてできており、
イングランド:白地に赤い縦横十字のセント・ジョージ・クロス
スコットランド:青地に白い斜め十字のセント・アンドリュー・クロス
アイルランド:白地に赤い斜め十字、セント・パトリック・クロス
が時代と共に順々に組み合わされて今の「ユニオンジャック」のデザインになっています。
スコットランドが独立すると、これが白地に赤い縦横斜め十字の寂しい色合いになってしまうというのが、ニュースで報道されている中身です。

Union_Jack

そもそも英国の正式名称は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)。
イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの非独立国から構成される立憲君主制国家であり、英連邦王国の一国です。
なお、王室属領及び14程の海外領土があるのですが、これらは「連合王国」に含まれていないので、今回の話題からは外しておきます。

で、あれっ、と思いましたよね、ウェールズが「ユニオンジャック」に含まれていないって。
そう、、ウェールズは「ユニオンジャック」が作られるよりもずっと前、13世紀末には既にイングランドに服属して国権の一体化が進んでいたため、国旗の中にウェールズの国旗の意匠が取り入れられなかったそうなんです。(個人的には、ウェールズのシンボルとなっている「赤い竜」が組み込まれているとカッコいいと思うんですが。。)

スコットランドに話しを戻しますと、イングランドに合併されたのが1707年ですから、もし独立すれば300年ぶりとなります。
そこで、なぜ今になってスコットランドで独立論が浮上しているのか、ということを調べてみました。

グレートブリテン島北部にあるスコットランドは、英国面積約24.5万平方kmの1/3にあたる約8万平方kmの国土に、国民の約1/12にあたる525万人が住んでいます。
元々主要産業は石炭だったのですが、北海油田(石油・天然ガス)が開発されて産業転換した後も、その財源が英国政府に管理されていることからくる経済的不満から、今回のような騒動になっているようです。
強い民族意識と経済利権に絡む生活面での不満、というのが大きな理由でしょう。

しかし、仮に独立したとして問題が山積しており、これらを如何にうまく舵取りできるかが大きな課題になってくると思います。
・英国王室の扱い(現在の英国王室(スチュワート家)のルーツは元々スコットランドです)
・通貨の扱い(現在でもスコットランドでは独自通貨のスコットランド・ポンドが流通していますが、ロンドンなどですら使えない利用範囲が限られた通貨です。英国ポンドも流通していますが、独立するとなると英国政府が使用を認めるとも思えません)
・EUの加盟(加盟には幾つかの基準があり、そのハードルをクリアできるかが焦点です。参考までに仮に日本が加盟を希望しても、財政赤字などの幾つかの基準を全くクリアできません)
・国防(核ミサイル搭載戦略原潜は英国に戻す、としています)
・etc…..

また、スコットランドが本当に独立するか、それに近い状況にまで行った場合、スペインなどユーロッパで同じような独立希望地域を抱える国々が一斉に同じような動きを取りはじめそうですし、慌しい世情になりそうな予感がします。(既にきっかけは作られた感あり、ですね)

スコットランド独立を問う住民投票は、もう間もなくです。
[amazonjs asin=”4634632705″ locale=”JP” title=”世界歴史の旅 スコットランド”]