【千夜一夜物語】(2) 漁師と鬼神との物語(第3夜 – 第9夜)

前回、”【千夜一夜物語】(1) 商人と鬼神(イフリート)との物語(第1夜 – 第2夜)”からの続きです。

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ある漁師が網を打つと、スライマーン(ソロモン王)の封印がある壷が取れた。
漁師が壷を開けると、サクル・エル・ジンニーという鬼神が現れた。
ソロモンに背いた罰で壷に閉じ込められ、海に沈められた鬼神は漁師に語り始める。

最初は救い出してくれる者があれば、そいつを永久の金持ちにしてやろうと思った。
だが百年経っても誰も助けてくれない。
そこで救い出してくれる者があれば、そいつに大地の魔法を残らず明かしてやろうと心の中で呟く。
四百年経っても海の底に沈んだまま。
今度は救い出してくれる者あれば、そいつに三つの願いを叶えてやろう。
そして九百年が過ぎた時鬼神は誓った。
救い出してくれる者あらばそいつを殺してやろう。

そして鬼神は漁師を殺そうとする。
すると漁師が「本当にこの小さな壷に入れるのか」と聞き、鬼神が壷に入ったところを再度封印してしまった。
鬼神は封印を解くように懇願するが、漁師は「イウナン王の大臣と医師ルイアンの物語」を語り断った。
しかし鬼神は再度懇願したため漁師は封印を解き、鬼神はお礼に不思議な魚が取れる湖を漁師に教えた。

漁師はその湖で魚を取り、王(スルターン)に献上して多額の褒美をもらった。
王の料理人が魚を料理しようとすると、調理場の壁から乙女が出てきて、魚を黒こげにし、壁の中に消えて行った。
王は不思議に思い、漁師から湖の場所を聞き、調査に出かけたところ、湖の畔の宮殿に住む故マームード王の子であるマサウダ王に出会った。
以前、マサウダ王は、妻が黒人と浮気しているところを見つけ、黒人を殺そうとしたが、逆に妻の魔法にかかり、下半身を石にされて動けなくなり、国民は魚にされ、国は湖にされていた。
王は話を聞くと、黒人を殺し、黒人のふりをして、マサウダ王の妻に魔法を解くように命じ、魔法が解けると女を殺した。
王には子供がいなかったので、マサウダ王を養子にして、都に帰り幸せに暮らした。

【イウナン王の大臣と医師ルイアンの物語】

ルーム人(ローマ人)の国ファルスのイウナン王はらい病にかかり、誰も治せなかった。
そこにルイアンという医師が来て、「馬に乗って槌で玉を打てば治る」と言い、実際王の病気は治った。
王はルイアンを重用したが、それに嫉妬した大臣がルイアンを中傷し、殺すように進言した。
それに対し、王は「シンディバード王の鷹」の話をし、ルイアンを庇う。
これに対し大臣は「王子と食人鬼の物語」をし、王にルイアンを殺すことを決心させる。

王はルイアンを呼び出し殺すことを告げるが、ルイアンは王に一冊の本を献上し「私を殺したら、この本を開いて読めば、私の首はどんな問いにも答えるでしょう」と言った。
王は驚き、ルイアンを殺す前に本を読もうとするが、本の紙は張り付いていて、容易にページをめくることができず、王は指をなめながらページをめくるが、実は本には毒が塗ってあり、毒をなめた王は死んでしまった。

【シンディバード王の鷹】

ファルスの王シンディバードは、ある時、家来と共に狩に出て大きな羚羊(カモシカ)を見つけ「これをやり過ごした者は命がないぞ」と宣言した。
ところが羚羊は、王の頭上を飛び越えて逃げてしまい、王は自分に死刑を宣告した形になってしまった。
その時、王の鷹が羚羊に追いつき、クチバシで眼を潰して羚羊を動けなくし、王は羚羊を捕まえることができた。

王は、木の幹をつたう水を見つけ、杯に取って鷹に与えるが、鷹は杯を倒して飲まなかった。
今度は馬に与えるが、鷹はそれも倒して馬に飲ませなかった。
王は怒り、鷹を殺すが、王が水と思っていた物は、毒蛇の毒であったことを知り後悔した。

【王子と食人鬼の物語】

ある王子が狩に出たとき、大きな獣が見つかり、お供の大臣は王子に追いかけるように言った。
王子は砂漠の奥深くまで獣を追って行ったが、結局見失ってしまった。
すると、そこで王子は隊商からはぐれたインドの王女を見つけ、これを助けて馬に乗せ帰ろうとした。

帰る途中、王女は用を足しに行きたいと言い、王子は馬を休めた。
王子は王女の後をこっそりつけて行き、王女は実は女食人鬼で、王子を食べようとしていることを知った。
戻ってきた王女に王子は「私には敵がいる」と言うと、王女は「神に祈れば敵は消える」と答えた。
王子が神に祈ると、王女は消えてしまい、王子は助かった。
王子は、大臣が獣を追うように言ったことがこの危険の原因と考え、大臣を死刑にした。

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次回は、荷かつぎ人足と乙女たちとの物語です。

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