【千夜一夜物語】(19) 青銅の町の綺談(第339夜 – 第346夜)

前回、”色異なる六人の乙女の物語”からの続きです。

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ダマスの教王アヴドゥル・マリク・ベン・マルワーンは、スライマーン・ベン・ダーウド(ダビデの子ソロモン)が封じた魔神が煙となって詰まっている壺の話をきき、旅人ターリブ・ベン・サハルに親書を持たせてとりにやらせた。

親書を受け取ったマグリブの太守ムーサが長老アブドサマードを呼びだして情報を聞くと、壺が沈んでいる海の背後の山には人が住んでおり、「青銅の町」という。
そこへ至る道は魔神の版図で、旅にはかなりの困難が予想されるという。
ムーサはアブドサマードの進言に従い、遺言をのこし、ターリブ、アブドサマードと共に少人数パーティを率いて旅立った。

一行はある日宮殿に出る。
それはクーシュ・ベン・シャッダード・ベン・アード大王(アードの子シャッダードの子クーシュ ノアの子孫)の墓であった。

宮殿を出て進んでいくと、青銅の騎馬武者像を見つける。
像には「町への道を知りたくば我を動かせ」との表示がある。
一行は像の案内により正しい道を知った。

さらに進むと、石の柱につながれて半身を地上に埋められた、恐ろしげないきものを発見する。
それは鬼神ダエーシュ・ベン・アラエマーシュで、かつて海原を統べる王とスライマーンが戦ったとき、軍団の隊長を務めたものだ。
スライマーンに反逆した罪により、彼はここにつながれ、部下たちは壺に封じられて海底に沈められたのである。

鬼神を置いてさらにゆくと、ついに「青銅の町」にたどりつく。
しかし城壁には、ひとつとして扉というものがない。
城壁をよじのぼって中に入るが、警備兵も市場の人々も、ムーサらが近づくと時間がとまったかのように動きを止めてしまう。
さらに財宝に満ちた城内へ入った一同は、隠し部屋でねむる美女を見つけた。
ターリブが美女に手を出そうとすると、傍らにいた衛兵がとつぜん動きだしターリブを殺す。
ムーサらはおどろいて青銅の町を後にし、海岸へ出た。

そこには漁師たちがいた。
話を聞くと、件の壺はいくらでも手に入り、彼らは普段使いにしているという。
壺の栓をぬく前に、スライマーンへの罪を償う誓いを立てさせれば、鬼神は害をなさないのだ。
漁師たちは十二個の壺と、ふたりの人魚をムーサらに献上する。

そうして教王のもとへ壺と人魚がもたらされた。
教王が壺を解放すると、いずれも壺から黒雲が出てきて鬼神の形にかわり、反逆の謝罪を述べて消えた。
人魚たちはしばらく泉で遊ばせていたが、まもなく熱病で死んでしまった。

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次回は、イブン・アル・マンスールと二人の乙女の物語です。

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