【千夜一夜物語】(47)  カマールと達者なハリマとの物語(第780夜 – 第787夜)

前回、”薔薇の微笑のファリザード”からの続きです。

゚★☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・☆★゚

昔、エジプトのカイロにアブド・エル・ラーマーンという商人がいて、彼には真に美しい息子カマールと娘「暁星」がいたが、邪視を恐れて14歳になるまで家の外に出さず、誰にも会わせずに育てた。
カマールが14歳になったある日、アブド・エル・ラーマーンは相続人がいないと思われ死後財産が没収されることを恐れ、カマールを始めて外に連れ出したところ、あまりの美しさに、多数の見物人が現れ、その中に、ある修道僧がいた。
その修道僧は、カマールを見つめて次のような話をした。

その修道僧が以前バスラに行ったとき、丁度金曜日の午前であったが、町の店は全て店を開けて商品を並べているのに、通りにも店にも誰もいなかった。
修道僧は空腹を覚え、店頭の肉やパンやシャーベットを勝手に食べていると、音楽が聞こえてきた。
修道僧が物陰に隠れると、美しい乙女たちの行列がやって来て、行列の中心には真に美しい女王のような女がベールも着けずに牝馬に乗っていて、その脇には大剣を持った女奴隷が付き従っていた。
行列が通り過ぎると、町の人たちがどこからともなく現れ、町は通常の姿になった。
修道僧は不思議に思い、床屋に行き話を聞くと、床屋というものは話し好きで、あの行列を見るものは誰でも剣を持った女奴隷に切り殺されるので、町の人は行列が通り過ぎるまで隠れているということを聞いた。
修道僧は怖くなってバスラの町を離れ、カイロまで来たところ、カマールが牝馬に乗った女に似ているので見つめていたのであった。

話を聞いたカマールは、話の女に心を奪われ、何としてもバスラに行きその女を見てみたいと思い、両親に頼み、9万ディナールの金と多数の宝石を持ってバスラに旅立った。
カマールがバスラに金曜日の午前に着くと、話の通り美しい女の行列が来た。
カマールは物陰から見て牝馬に乗った女に恋をしてしまった。
カマールが床屋で話を聞くと、床屋は自分の妻を紹介し、床屋の妻は次のように話してくれた。

昔、バスラの帝王(スルタン)がインドの帝王から見事な大粒の真珠をもらったので、それに穴を開け糸を通して首飾りにしようと思ったが、宝石商人たちは誤って真珠を傷つけることを恐れ、穴あけを引き受けようとはしなかった。
しかし、宝石商人の長老オスタ・オペイドだけは、上手く穴を開ければ望みの褒美をもらえるが、誤って傷つけると死刑になるという条件で穴あけを引き受け、見事穴を開けた。
オスタ・オペイドは妻のハリマと話をし、褒美として、毎週金曜日、オスタ・オペイドの妻が行列を組んでバスラの町を散歩し、その間誰も行列は見てはならず、見たものは死刑にするという特権をもらった。
それが先ほどの行列であったのだ。

床屋の妻は、牝馬に乗った女と近づきたいのなら、オスタ・オペイドの店に行き、持っている宝石を指輪に加工することを依頼しなさいと言った。
カマールは床屋の妻に金を払い、言われた通りにすると、オスタ・オペイドは店に来たカマールの美しさに驚き、うかつにも自分の妻にカマールという美しい客が来たことを言ってしまった。
次の日、指輪ができたので、カマールが取りに行ったが、カマールは床屋の妻に入れ知恵されて、その受け取りを拒否し、指輪をオスタ・オペイドに与え、別のもっと大きい宝石の加工を依頼した。
オスタ・オペイドは指輪を妻に与え、カマールの裕福振りを妻に言ってしまった。
その次の日、2個目の指輪ができたので、カマールが取りに行ったが、やはりカマールは床屋の妻に入れ知恵されて、その受け取りを拒否し、指輪をオスタ・オペイドに与え、別の更に大きい宝石の加工を依頼した。
オスタ・オペイドは指輪を妻に与えたが、オスタ・オペイドの妻は、これだけの宝石をもらったのだから、カマールを食事に招待しなさいと言った。

その次の日、3個目の指輪ができたので、カマールが取りに行ったが、やはりカマールは床屋の妻に入れ知恵されて、その受け取りを拒否し、指輪をオスタ・オペイドに与え、4個目の宝石の加工を依頼した。
オスタ・オペイドはカマールを食事に招待した。
オスタ・オペイドの妻ハリマは、物陰からカマールを見て、美しさに感動した。
ハリマは食事に麻酔薬を入れカマールとオスタ・オペイドを眠らせ、眠っているカマールの顔が腫れるほどキスをし、カマールの一物に乗り快楽をほしいままにした。
翌朝、ハリマはカマールの懐に骨のおはじきを入れて、カマールとオスタ・オペイドを起こした。
2人は朝食を取り分かれた。

カマールが床屋の妻の所へ行くと、床屋の妻は顔の腫れから昨夜の情事を言い当てたが、カマール本人は眠っていたため自覚がなく、骨のおはじきの意味は「お前はおはじきで遊ぶような子供だ。
」と解説してくれた。
オスタ・オペイドはその日もカマールを夕食に招待したが、カマールとオスタ・オペイドは麻酔薬で眠ってしまい、昨夜と同じく、ハリマは眠っているカマールの顔が腫れるほどキスをし、カマールの一物に乗り快楽をほしいままにした。
翌朝、ハリマはカマールの懐に小刀を入れて、カマールとオスタ・オペイドを起こした。
2人は朝食を取り分かれた。

カマールが床屋の妻の所へ行くと、床屋の妻は顔の腫れから昨夜の情事を言い当てたが、カマール本人は眠っていたためやはり自覚がなく、小刀の意味は「今度眠ったら殺す」という意味だと解説してくれた。
オスタ・オペイドはその日もカマールを夕食に招待した。
カマールは床屋の妻の入れ知恵で食事を食べず、オスタ・オペイドだけが麻酔薬で眠ってしまった。
ハリマとカマールは激しく愛し合った。

次の日、カマールはオスタ・オペイドの家の隣に引越し、ハリマは壁に穴を開けて秘密の通路を作り、その日以来2人は密会を続けた。
ハリマはオスタ・オペイドに離婚させようと、オスタ・オペイドがハリマに与えた見事な宝石細工の短剣をカマールに渡し、カマールがオスタ・オペイドに「この短剣は市場で買った物だが、売主は愛人からもらったと言っていた。
」と言うように言った。
これを聞いたオスタ・オペイドはハリマが浮気したと思い激怒し、ハリマの所に行ったが、ハリマは秘密の通路を使い、カマールから短剣を受け取り戻ったので、ハリマが短剣を持っていてオスタ・オペイドは恥をかいた。
次の日、カマールはハリマを連れてオスタ・オペイドの所に行き、「この女は私が買った奴隷です。
」とオスタ・オペイドに言った。
オスタ・オペイドは驚き家に帰ったが、ハリマが先回りしていたので、「そっくりな女がいるものだ」と思い再び恥をかいた。

オスタ・オペイドがハリマを離婚しないので、カマールとハリマは駆け落ちし、カイロのカマールの父アブド・エル・ラーマーンの所に行ったが、アブド・エル・ラーマーンはカマールに非を認めさせ、ハリマを監禁し、カマールをカイロきっての美人である法官(カーディー)の娘と結婚させた。
結婚の宴に乞食がいたが、それはハリマを探す旅にでたが、盗賊に身ぐるみ剥がされたオスタ・オペイド老人であった。
アブド・エル・ラーマーンは、誘惑されれば男の本能は制御できなくなるので、悪いのは誘惑した女だと言って、ハリマをオスタ・オペイドに引き渡し、オスタ・オペイドはハリマを絞め殺した。
アブド・エル・ラーマーンは、償いとして、娘の「暁星」をオスタ・オペイド老人の妻とした。

゚★☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・☆★゚

次回は、羊の脚の物語です。

404406910744800384694480038477448003848544800384934480038507448003921X448003840X