易経 本来の在り方を知ることが大事です。

易を、単なる占い手法のひとつぐらいに捉えられることは大きな誤解を生じるので、改めて易の在り方のついて補足しておきます。

易は易経といって、中国の古典である四書五経の中の大切な経典の1つです。
易経は本来、中国の歴史千数百年にわたる天地自然と人世界の相関関係を積み上げた統計的研究であり、その英知を尽してまとめ上げた論理的思想体系ですので、いわゆる人生の指南書といっても過言でない思想学問なのです。
古典の中でも難解な書物のひとつに挙げられる程のレベルにあるため、易の厳粛な理法を知ることで不透明で大きな変革期にある現代の指針ともなる重要な書物でもあるのです。
従って、これを学ぶことでいわゆる流言や迷信についても解釈の誤解を戒めることができ、運命は変えられない宿命だ、と諦めるのではなく、自分で主体的に自分の運命を創造していくための指針となる立命の学問です。
要は、易は占うものではなく、それを学び知ることで自分で判断して決定ができる学問なのです。

もう少しだけ細かく説明しておきます。
ここまででご理解頂けていれば、以下は割愛ください。

易の本義は、三義にあります。

その第一義は、変易です。
変化・変わるものということですね。
易では、世界は常に変化して停滞・固定しないものと捉え、自然も人生も絶えず変化して止まない(化)ものと解するのです。
しかし変化は、その根本に不変があって初めて成り立つものだということを理解する必要があります。

易の第二義は、不易です。
不変・変わらないものということですね。
例えば人のあるべき姿、仁・義の徳といったものです。
この不変の原理に基づいて、変化を自覚・意識するのです。
そこから、変化の中に不変の真理・法則を探求し、それに基づいて変化を意識的・積極的に参じていくという観点が生じることになります。

易の第三義は、簡易です。
創造的進化の原理に基づいて変化して止まない中に変化の原理・原則を探求し、それに基づいて人が意識的・自主的・積極的に変化していく(化成)ということであり、簡単にいえばシンプル、ということです。
すなわち、人が創造主となって自己を創造していくことが必要だ、ということです。

そもそも、人の生き方は動いて止まざる自然と人生のことであり、他律的・予定的なものではないということを“運命”といいます。
また、人は初めから自然や遺伝に従って決められた存在であるという予定的な考え方については“宿命”といいます。
一方、動いて止まない運命の理法を探求して原理を解明し、大自然・宇宙・神・人の思考や意志に基づいて、自分の存在・生活・仕事というものを創造していくという考え方を“立命”といいます。
易では、この運命を宿命に留めることなく立命にするための思想学問であり、宇宙の創造的進化の理法に基づく大いなる自己の創造を説くものなのです。

従って、運命を立命とするために動いて止まざる運命の理法を認識することが肝要となってきます。

易学では、
命:天地創造の絶対的作用、天地自然人を通ずる創造、進化、造化などという絶対性を表す。
数:その命という絶対造化の働きの中にある因果の関係理法を表す。
を定義した上で、運命とは、常に変化して止まない様を表す”運”が”命”に結合して、動いて止まない自然と人を意味するものであり、しかもその”命”の中に原因結果の理法たる”数”が含まれることから、運命そのものに原因結果の理法が含まれることになると説いているのです。
動いて止まざる運命の理法を認識することは、その”数”を認識することに等しいので、易では六十四卦に代表される独自の理論に基づいて”数”を解する訳です。
しかしここまでですと、宿命の範疇で留まってしまいます。

易の本義は、前段でも述べたように、運命の理法に従って自分が望む自分を主体的に創造していくことにあり、それこそが運命を立命とすることに他なりません。
私達は、”命”に縛られて思索・行動をしがちですが、そのような因果の関係・理法を論理的に解明して自分の持つ”数”を認識した上で、さらに自ら人生を創造していくことこそが、易の究極的な本義といえるのです。

運命の理法を踏まえた上で自らを創造していくとは、運命から宿命を脱して立命となることにあります。
人は運命に翻弄される存在ではなく運命を乗りこなすべき存在であり、立命を志向する限り無限の可能性が秘められているのですから。

無限に広がる可能性の中で、人生を創造していく喜びが自ずと生まれてくれば、通俗的な占いによる運命鑑定に一喜一憂することが如何に徒労かがよくわかります。
人生を創造するのは自分であり、選択権も自分にあるからです。

困難が人を成長させると考えれば、創造したい人生を志向して立命し続けることこそ、人が進むべき道として相応しいはず。
それはいくつになっても変わることがないもの。

立命を志向し、学びと成長を続ける日々でありたいものです。

[amazonjs asin=”4003320123″ locale=”JP” title=”易経〈下〉 (岩波文庫 青 201-2)”]