奈良の春日大社は、現在20年に一度の「式年造替」。
社殿を修築し、来年(平成28年)11月6日の正遷宮まで、さまざまな行事が予定されています。
世界遺産 春日大社 公式ホームページ
「式年」とは「定まった一定の年限」、「造替」とは「社殿を造り替える」という意味。
神様がお社ごとお引越しされることを「遷宮」といいますが、春日大社では本殿の位置は変えずに建て替え、修復を行うことを「造替」といいます。
春日大社は今からおよそ1250年程前、奈良に都ができた頃の神護景雲2年(768年)11月9日に、日本の国の繁栄と国民の幸せを願い、御蓋山のふもとに壮麗な社殿を造営し、四柱の尊い神々を祀り創建されました。
そもそも御蓋山浮雲峰は、春日大社祭神の一柱タケミカヅチノミコト様が降り立った場所といわれており、そこに本宮神社が鎮座しています。
以来、世界遺産に登録された30万坪の境内は、春日の霊峰に抱かれ古と変わらぬ神聖な姿が保たれ、清々しくも尊厳な国宝・春日造りの御本殿で神々様が広大無辺なる御神徳を発揮されているのは、ほぼ20年毎に一度、御本殿以下の諸社殿を建て替えと御神宝の新調の「式年造替」が連綿と行われてきたからにほかなりません。
この儀式は、神さまがお鎮まりになる神殿や、神さまの御料で御殿の中にお納めをする御神宝などを造り替え、御修繕を行うことによって、御神威のさらに若々しく力強いご発揚を願う、日本人固有の信仰に基づいて行われるものです。
「式年造替」は、20年に一度お住まいを改めることによって若々しい力強い御神威のご発揚を願うもの。
造替によって広大無辺の神様の尊さを再認識し、人々が再確認し、私達に新たなお力でご加護を頂きたいとの願いから式年造替の制度が始まりました。
一方、造替によって生じる文化、建築技術、伝統の継承を未来永劫継承していくためにも20年という期間はちょうどよいと考えられています。
御殿のその耐用年数を見据えて、定期的なスパンで造替を行うことにより、奈良の時代から今日まで文化、建築技術、伝統を守り続けてきたともいえる訳で、更に次世代へとご存在を伝え継ぐ行事であると共に人造りの叡智でもあります。
第六十次式年造替は平成19年の一ノ鳥居より始まり、神様に西隣の「移殿」へ一時お遷り頂く「仮殿遷座祭(下遷宮)」は平成27年 3月27日に執行されていますが、本殿の修復が終われば、元の本殿にお還り頂く「本殿遷座祭(正遷宮)」が平成28年11月 6日に執行され完了する予定です。
実際、造替で修復を予定・実施されているのは国宝の御本殿をはじめ、中門、御廊、移殿、幣殿、直会殿ほか10棟に及ぶ重要文化財指定建造物の保存修理と摂社、末社の御修理です。
神様を大切にお祀りし、日々の恵みを感謝する心を忘れないこととその想いを今日に繋げていくことが造替の原点ですが、同時に文化、建築技術、伝統を連綿と継承していく尊い所作でもあります。
たまにはこうした静謐な気が溢れる神域に足を運んでみてはいかがですか。