厨子!建築、工芸、絵画の粋を集めた総合芸術品!

仏像・仏舎利・教典・位牌などを中に収めた『厨子(ずし)』は、まさに仏堂建築の外観を模した小さなお寺を表す仏具の一種です。
特に、国宝として有名な玉虫厨子は法隆寺が所蔵する仏教工芸品で、今から約1200年前の飛鳥時代に、推古天皇が朝夕拝まれる念持仏として造像されたと伝わっています。
・厨子は、最下部の台脚部、その上の須弥座部、最上部の宮殿部からなり、
・装飾に玉虫の羽を使用しており、
・その羽は、2層構造の宮殿部分にも残っているといわれ、
・宮殿部正面扉には向かい合って立つ2体の武装神将像を描き、左右扉には各2体の菩薩立像を描かれ。
 宮殿部背面に描かれるのは霊鷲山浄土図、中央に3基の宝塔とその中に坐す仏、その下に岩窟中に坐す4体の羅漢像を描き、
 これらの左右には日月、飛翔する2体の天人、2体の鳳凰などを描かれた上、
・それ以外の扉の裏側や壁面には、数え切れないほどの押出仏「千仏」が描かれており、
・その中にはかつては釈迦三尊像が安置されていたが、鎌倉の頃に盗難に遭い、いまは金堂釈迦像が安置されており、
・須弥座部には密陀絵として、正面に「舎利供養図」、向かって左側面に「施身聞偈図」、右側面に「捨身飼虎図」、背面に「須弥山世界図」が描かれ、
まさに、これらに集約された建築、工芸、絵画の表現は、その後の日本芸術の手本ともなっている優れた芸術品です。
近年では制作当時の状態を再現するためや、後世にその技術を残すためにレプリカ制作も行われているようです。
高度にして緻密な古来の総合芸術。
大切にしていきたいですね。

【密陀絵】
 日本の油彩絵画技法の一つ、あるいは漆器や陶磁器の上絵装飾技法の一種・油絵で製作された絵や装飾のことを指します。
 顔料を練る乾性油(主に荏油)を使った古代の油彩技法の一種・油画に、膠と顔料を混ぜて描き、その上に乾燥促進剤として鉛の酸化物や密陀僧を加えて用いた油色という技法によるものです。
 法隆寺の玉虫厨子扉板絵、橘夫人厨子、正倉院宝物などでその技法を見ることができます。

【舎利供養図】
 中心線が対称軸で、その最上部、画面上辺に近いところに小さな花文が描かれ、その真下、画面の中心のあたりに香炉が、その少し下に舎利壷、そうして中心線の最下部、画面の下辺近く、やや大きい供物台がおかれている。
 画面上辺近くの左右に飛天が、画面の対角線に沿うように舞っている。縦に並ぶ香炉と舎利壷をはさんで、柄香炉を捧げる.=人の比丘が対称的に描かれている。

【施身聞偈図】
 釈迦の前世の物語。
 出典は『涅槃経』「聖行品」である。画風は素朴であり、山、崖などを表現する際に「C」字形の描線を多用するのが特色である。

【捨身飼虎図】
 釈迦の前世の物語。
 薩た王子(「た」は土篇に「垂」)が飢えた虎の母子に自らの肉体を布施するという物語で、出典は『金光明経』「捨身品」。

【須弥山世界図】
 須弥山の釈迦浄土図で『海竜王経』を典拠とする。
 下辺中央に接してやや大きく仏殿が描かれており、その背後左右に山稜が続き、その中央に須弥山が高く聳えている。その左右上下に四棟の小さい堂宇が建ち、軸線最上部にもう一つの仏殿が描かれている。
この堂は、最下部に描かれている仏殿に比べると、かなり小さいから、これらの上下の二つの建物の大きさの違いによって遠近感が生じ、奥へ向って広がる深い空間を感じさせる。なお画面上方左右には日月が描かれている。

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