本書は、ニューヨーク、ロンドン、東京という3都市の分析を通じて、「グローバル・シティ」という新しい概念を提示し、グローバル化する現代社会を読みとくサスキア・サッセンの400ページを超える大著です。
グローバルシティとは、国境を越えた戦略拠点ネットワークの機能と定義されますが、本著では製造業の地理的な分散と中枢機能(司令塔)のグローバルな統合が同時に起きており、大都市は新しい役割を負うようになったと主張するのです。
金融セクターと大企業資本が都市に集中し、都市には生産活動を支える会計・法律・経営・広告などの専門サービスセクターが発達した結果、都市の社会秩序が変化します。
大都市の中心機能が強化され、シカゴのような地域の役割は減少した結果、グローバル・シティにおける社会と空間の二極化が発生、具体的には大都市の職種が専門化するにしたがって労働者の所得の二極化が起こり、格差がますます拡大すると同時に、都市の底辺サービス産業などを移民などが支えていることで、両者の空間は近接していきます。
その仕組みと背景、そのことが示す意味を、地理(第一部)、経済(第二部)、社会(第三部)、政治(最終章)という側面から分析、検証していくのです。
グローバル化が均質化ではなく都市という単位を再度浮上させること、国民国家からグローバル・シティへと世界的な秩序を生み出す主体が変化しているということを示していくのです。
昨今、東アジア全体が「世界の工場」としての地位を揺るぎないものとして確立し、この地域の世界貿易・世界経済における重要性が急速な高まりを見せています。
それと並行して、アジアにおいては大都市の集積が着実な成長を遂げてきていますが、都市集積の重要な点は、都市が「イノベーションの基地あるいは揺りかご」としての役割を果たしていることです。
一方、グローバル都市の中心街や大都市のビジネスセンターは不動産開発や情報通信に膨大な投資がされている一方、低所得地区に対する投資は極度に不足しています。
先端部門に雇用されている高度な教育を受けた労働者の賃金が異常に高く上昇しているのに対し、同じ部門の中・下位の技術の労働者の賃金は低下しています。
このように先進諸国および発展途上国の主要都市において中心と周縁の新たな地理的力学が生まれ、既存の不均衡が拡大するだけでなく、不均衡を生み出す新たな原動力が働き始めているのです。
今後の「グローバル・シティ」東京が、どのような方向に向かって行くのか。
それを考えるきっかけを与えてくれる名著といってもよいかもしれません。
ご一読ください。