ドラマ『マッドメン』!現代にも通じる、危険と隣り合わせの虚飾の世界観の魅力にはまってみてはいかが!

1960年代のニューヨークの広告業界を描いたアメリカのドラマ『マッドメン』(原題:MadMen)。
タイトルの「マッドメン(MadMen)」とは本作品の舞台であり、現在も大手広告代理店の本社が多いマディソン・アヴェニュー(MadisonAvenue)の広告マンを指す造語である。
何と、2008年の第60回エミー賞ではドラマシリーズ部門作品賞を含む6部門を受賞、2009年の第61回エミー賞ではドラマシリーズ部門作品賞と同脚本賞を受賞、2010年の第62回エミー賞ではドラマシリーズ部門作品賞・脚本賞を含む4部門を受賞し、3年連続のドラマシリーズ部門作品賞受賞の快挙となったばかりでなく、ゴールデングローブ賞でも、65回、66回、67回と3年連続のドラマシリーズ部門作品賞を受賞している。
そして、2011年の第63回エミー賞でも作品賞受賞、そして今年の第67回エミー賞ではついにジョン・ハムが主演男優賞した程のとんでもないドラマ『マッドメン』。
2007年7月19日に放送を開始し、2015年にシーズン7をもって終了したものの、1960年代の当時の社会情勢や風俗を緻密に再現し、現在の一般企業では社会通念上許される事のない、勤務中の社内での飲酒、喫煙やセクシャル・ハラスメントまがいの発言や行為、そして人種差別などが大胆に描かれている点も大きな特徴である。

広告業界の生え抜き広告マンのドン・ドレイパー(ジョン・ハム)は、業界の中心地であるマディソン通りにある大手スターリング・クーパー社のクリエーティブ・ディレクター。
私生活では、元モデルの美しい妻ベティ(ジャニュアリー・ジョーンズ)と2人の子どもに恵まれ、幸せな家庭に不満はない。
だが、つねに女性の影が絶えず、温かい家庭ではなく愛人の元へ足が向かう日々。

仕事では野心家の若手営業マン、ピート(ヴィンセント・カーシーザー)にライバル視されるなど、生き馬の目を抜く広告業界で気が休まる瞬間はない。
自身の過去に重大な秘密を抱えるドンは、仕事と家庭との狭間で精神的に追い詰められながらも、成功者であり続けるべく、必死に踏みとどまろうとする。

登場する男性達はいずれもビシッと細身のスーツを着こなし、女性達は体の曲線や胸、腰のくびれを強調した優雅なファッションに身を包んでいることからもわかるように、あくまでも男性は男らしく、女性は女らしさを求められた時代のエレガンスは、一見すると古き良き時代へのノスタルジーをかき立てられる。
現代の世間の風潮を逆手にとるかのように、毎回のように紫煙が画面に立ち込めるこのドラマは、男性も女性もたばこを吸い、男性は仕事中にウイスキーやスコッチなどの強い酒を飲み、職場では男尊女卑がまかり通っており、60年代という時代に忠実な描写はしばしば過激で、それが『マッドメン』の大きな魅力のひとつとなっているのだ。

実はアメリカでは、本作は「大人の男性のディズニーランド」と形容されることがある。
たばこ、酒、セックス、セクハラがフリーで、権力に真っすぐ向かう男たちが中心の世界観は、確かに男性にとって、ある種の夢ではあるのかもしれない。
しかし、冒頭のタイトルバックで、当時のアメリカの繁栄ぶりを彷彿とさせる華やかな広告の画を背景に、ドンとおぼしき男性の黒いシルエットが高層ビルから墜落していくシーンが象徴しているように、ここに登場する男達が背負っているものの重さは、いわゆるアメリカン・ドリームを信じて頂点を目指すも、常に転落することを恐れているか、あるいはいつかは転落することを暗示する、非常に危険極まりないものなのだ。

そうした危険と隣り合わせの虚飾の世界観が、見ていくうちに意外な程の現代性を備えていることに驚かされ、そのために人々は次々と『マッドメン』に熱狂していくのだそう。
実際にアメリカでは、『マッドメン』で描かれる世界と、40年以上経った現代社会の実情を比較した記事も多いが、大抵の場合さして変わっていないのではないかという結論に達している程。

絵に描いたような善人も悪人も登場しないのが、このドラマの一番の魅力。
登場人物誰もが心のどこかで何か抱えており、そういう部分を激しく徹底的に掘り下げているからこそ、見る側もその魅力が味わえる本物の大人のドラマ『マッドメン』。

一度、どっぷりとその魅力にはまってみてはいかが。

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