こんなお話しがあります。
2007年、歴史家のJohn Maloof氏が近所のオークションで、多数のネガを買いました。
自著の本用に古い写真を使おうと探していたところに、たまたまオークションで３万枚以上の写真のネガが入った箱を見つけたためです。
持ち帰った多数のネガを現像したJohn Maloof氏は、後にここ100年でもっとも才能のあると言われる、しかし当時はまだ無名の写真家の作品に巡り合うことになりました。
それが、21世紀のもっとも偉大な写真の発見であると言われている、既に亡くなっていたアメリカ人写真家・ビビアン・マイアー（Vivian Maier）さんの作品との出会いです。
ビビアンは生前、シカゴとニューヨークに住み、40年に近くに渡って子守として働くかたわら、１５万枚以上の写真を個人的な趣味として撮り続けていたそうです。
Maloof氏は、彼女の作品の素晴らしさを伝えるため、まずは写真100枚をオンライン上に公開します。
すると、ビビアンの写真とその発見のストーリーが瞬く間に有名になり、2本のドキュメンタリーがつくられ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアで展示会が開催されるほどになったそうです。
まずは、ビビアンの作品をみてみてください。
Vivian Maier
結果、ビビアンはここ100年でもっとも才能のあると言われる写真家とまでいわれるようになりましたが、それもJohn Maloof氏がたまたま彼女の作品を見出したからに過ぎません。
こんなお話しを知ると、世界には果たしてどれだけのビビアンが埋もれたままになっているのだろうか、という想いを感じずにはいられません。
ホンモノの才能を秘めたアーティストなんて、ほんの一握り。
でも今は、誰もがアーティストになれる時代。
優れた作品の原石が、ネット上の膨大なにわかアーティストの作品に埋もれてしまう現実もあります。
果たして、昔と今と、芸術家にとって幸せなのはどちらなのでしょうか。。。。
