【千夜一夜物語】(31) 陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語(第505夜 – 第515夜)

前回、”匂える園の道話”からの続きです。

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昔、アブドゥッラーという名の貧しい漁師がいた。
彼には妻と9人の子がいたが、財産は網しかなく、その日の漁でパン屋のアブドゥッラーからパンを買い、不漁の時は、つけでパンを買って一家を養っていた。

10人目の子が生まれた日、網を打つと、上半身は人間で腰から下は魚の男の人魚が網にかかった。
人魚の名はアブドゥッラーと言い、毎朝ここで陸の果物と海の宝石を交換しようという話になり、手始めに、人魚のアブドゥッラーは、漁師のアブドゥッラーに真珠、珊瑚、エメラルド、ヒヤシンス石、ルビーなどの宝石を渡した。

漁師のアブドゥッラーは、恩人のパン屋のアブドゥッラーに宝石の半分を渡し、残りの宝石は家に持って帰った。
翌朝、漁師アブドゥッラーは、籠一杯の果物を持って人魚アブドゥッラーと会い、籠一杯の宝石と交換し、その宝石を市場の宝石商に売ろうとした。
宝石商は貧乏なのに宝石をもっていることを怪しみ、王妃の宝石が盗まれたことを思い出し、漁師アブドゥッラーを捕まえ、アブドゥッラー王の前に突き出した。
しかし、漁師アブドゥッラーの宝石は王妃の物ではないことが分かり、漁師アブドゥッラーは釈放された。
王は漁師アブドゥッラーから話を聞き感心し、彼を王女「栄え」と結婚させ大臣とし、また宝石の半分を持っていたため共犯者として捕まるのではないかと恐れていたパン屋のアブドゥッラーを第2の大臣とした。
その後1年間、毎朝漁師アブドゥッラーは人魚のアブドゥッラーと会って、籠一杯の果物を籠一杯の宝石と交換した。

ある日、人魚のアブドゥッラーは漁師アブドゥッラーに家に招待したいと言ったので、漁師アブドゥッラーは裸になり、水中でも息ができるようダンダーンという魚の肝油からできた薬を体中に塗り、海の中に入って行った。
海の中では、人魚の子らが漁師アブドゥッラーを見て、魚の尾ではなく尻と足があることを珍しがり騒いだので、海の王様も興味を持って、漁師アブドゥッラーを海の王宮に召し出した。
王宮では、王と百官が漁師アブドゥッラーの尻と股間をじろじろ眺め、珍しさから大笑いした。
漁師アブドゥッラーは大量の宝石を持って帰ったが、二度と人魚アブドゥッラーに会おうとはしなかった。
漁師アブドゥッラーとパン屋アブドゥッラーは、アブドゥッラー王とともに幸せに暮らした。

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次回は、黄色い若者の物語です。

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