『三国志演義』第四回 漢帝を廃して陳留位に即き、董賊を謀らんとして孟徳刀を献ず!

 「大事が決まっていないのに、みだりに人を殺してはなりませぬ。」と、またも董卓を諌めたのは軍師李儒。
 袁術は宝刀をひっさげたまま落ちて行った。
「袁術は策は企てるが実行力に欠ける男。渤海郡の太守にでもしてやれば罪を免れたことを喜ぶでしょう。」と重臣達に言われ董卓は、袁術を渤海郡太守にした。

 ついに陳留王を帝にし、少帝、何太后を幽閉した。
 その後、軍師李儒により少帝、何太后は毒殺された。
 洛陽は董卓のものとなり、悪逆非道の世となった。

 司徒オウインの誕生日の日。
 旧臣を集めた席で、司徒オウインは激しく泣き出した。
 一同驚いて問うと、
「実は今日は私の誕生日ではありません。話をしたくとも疑われてはと、かく申したのです。
 漢帝国が董卓の手で葬られようとしているのに泣いたのです。」と、司徒オウインは言う。
 これに一同も涙を流した。
 と、一人、笑う者がいる。
「朝廷の大臣諸公が、夜は夜で泣きあかし朝になれば夜まで泣きとおされて、まだ董卓を泣き殺すことが出来ぬのでござるか。」
 見れば、曹操である。
「それがし、ご一同が董卓を殺す計をなにもない事を笑ったまで。」
 一計を献じた曹操は、司徒オウインより宝刀七星の剣を授かった。

 曹操は、董卓のもとに参じるが傍らに呂布がおり隙がない。
 曹操に馬を与えるために呂布が席を外したときに七星の剣を抜き暗殺を企てた。
しかし、鏡に映った曹操を見た董卓は
「何のまねだ。」と問うた。
「宝刀所持しておりましたので献じようと思ったのでございます。」と曹操は答える。
 呂布の連れてきた馬を見て、試乗したいといってそのまま東南の方へ走り去った。
 董卓はしばらくして追手を放った。

 曹操は、中牟県の関所で捕らえられてしまうが県令陳宮に助けられた。
 そして、2人で故郷に向かった。
 途中、商人の呂伯奢に世話になるが、呂伯奢の留守に
 「ふん縛って殺したらよかろう。」と言う声に、殺されると思い皆殺しにしてしまった。
 廚をさがすと豚が一頭縛ってある。
 2人は馬に乗って逃げた。
 途中、呂伯奢に会うが、これも殺してしまう。
 陳宮問えば、
「家の者が殺されているのを見れば黙っておるまい。もし人を集めて追って来れば大変なことになる。」と言う。
 陳宮は何も言えない。
 その夜、曹操が宿で眠れば、陳宮
「これほど残忍な男とは。このまま生かしておけば、必ずや後の禍いとなるであろう。」と白刃をかざす。

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