『三国志演義』第三十九回 荊州城に公子三たび計を求め、博望坡に軍師初めて兵を用う

孫権の軍勢に攻めたてられて将兵を失った黄祖は江夏を捨てて荊州へ逃れようとした。それを先読みした甘寧は黄祖を討ち取り孫権のもとに帰った。孫権は亡き父の霊前に首を供えて供養した。儀式が済み宴会の席で凌操の子凌統がいきり立ち甘寧に殺された父の仇を討とうとした。孫権がなだめるが怒りは消えないので、その日のうちに甘寧を夏口の守りに着かせた。

一方、劉備は劉表から配下の黄祖が討たれた事で孫権討伐を受ける。しかし、動けば曹操が攻めると言って断った。劉表は荊州を劉備に譲ろうとするが
「恩を受けているのに、弱みにつけ込んで国を奪うような事はできない。」
と断り新野に戻った。

曹操は自ら丞相となり全てを取り仕切った。そして夏侯惇に新野攻めを命じるが徐庶は諸葛亮の存在を話し止めるように進言した。しかし、夏侯惇はおそるるに足らんと勇んで出陣した。

劉備は諸葛亮の事を
「魚が水を得たようなものだ。」
と語り、関羽、張飛はそれが面白くなかった。夏侯惇が攻めてきた事を知ると張飛は、
「兄貴、水とやらを使ってみてはどうか。」
と言った。諸葛亮はすぐさま策を献じた。
夏侯惇は自ら先陣を切って攻め込み、それを迎え討った趙雲は数合いで負けたふりをして夏侯惇から逃げ出した。夏侯惇は趙雲を追おうとした。韓浩が
「伏兵があるやも知れませぬ。」
と諌めるが
「こんな敵ならば何のことはない。」
と耳も貸さず追いかけた。そこへ劉備が代わって軍勢を率いて押し出た。夏侯惇は韓浩に
「これが伏兵というやつだ。一気に新野へ打ち入るのだ。」
と攻め込み、劉備、趙雲を敗走させた。夏侯惇がひたすら追撃し山間の狭い道にさしかかったところで、于禁、李典は火計の危険を察知し、夏侯惇を止めに行った。しかし、その時一斉に火の手が上がりたちまち大混乱に陥った。それを見て趙雲は手勢を率いて襲いかかり、夏侯惇は逃げ出した。李典は慌てて逃げ戻ろうとするが関羽に襲われ血路を開いて落ち延びた。カ香蘭は張飛に一撃で馬上から突き落とされた。そして両軍明け方までもみ合って兵を引いたが戦地は一面人馬の屍で血が河のように流れていた。
夏侯惇は兵をまとめで引き上げていった。

関羽、張飛は諸葛亮のすごさに驚いていた。新野に戻ってから休む間もなく、諸葛亮は、
「次は曹操自ら大軍でやってくるでしょう。それがしに一計あり。曹操の軍勢など恐るるに足りませぬ。」
と次の計を出した。

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