This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(26) 上方世話物『夏祭浪花鑑』

歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。

This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。
今回は、上方世話物の中から『夏祭浪花鑑』です。

『夏祭浪花鑑』は、全九段から成る人形浄瑠璃および歌舞伎狂言の演目で、通し狂言としての通称は『夏祭』、『鳥居前』(三段目「住吉鳥居前」)、『三婦内』(六段目「釣船三婦内」)、『泥場』(七段目「長町裏」)です。
玉島磯之丞と恋人琴浦を守るために奔走する団七九郎兵衛・お梶夫婦と一寸徳兵衛・お辰夫婦を中心に描いた「世話物」の「義太夫狂言」で、夏の風情溢れる作品です。
大坂の俠客団七九郎兵衛が主人のために舅を殺す悲劇を軸に、一寸徳兵衛・釣船三婦ら男伊達の俠気を描き、長町裏の本水を使う立ち回りが有名です。
通常、出獄してきた団七が徳兵衛と出会い義兄弟となる「住吉鳥居前の場」、老侠客の三婦にお梶が磯之丞を預かる心意気を見せる「三婦内の場」、団七がはずみで舅義平次を殺してしまう「長町裏の場」が上演されます。

『夏祭浪花鑑』

団七は、幼いとき浮浪児だったのを三河屋義平次に拾われ、今ではその娘のお梶と所帯を持って一子をもうけ、泉州堺で棒手振り(行商)の魚屋となっている。元来義侠心が強く、名も団七九郎兵衛と名乗り老侠客釣船三婦らとつきあっている。

団七は恩人である泉州浜田家家臣玉島兵太夫の息子磯之丞の危難を救うため、悪人大鳥佐賀右衛門の中間を誤って死なせてしまい、これで入牢となるが兵太夫の尽力で釈放され、罪一等を減じられ堺からの所払いとなる。

【一段目:お鯛茶屋】

磯之丞の放蕩と琴浦に横恋慕する佐賀右衛門の悪事に、乞食の徳兵衛に自身の落魄ぶりを述べさせ磯之丞を諭すお梶の智略などを描く。

ここは堺の町のお鯛茶屋。国主の諸士頭、玉島兵太夫 (ひょうだゆう)の息子、磯之丞は遊女琴浦を身請けして居続けで遊んでいる。同じ家中の大鳥佐賀右衛門はかねてから琴浦に横恋慕していて、磯之丞が放蕩のすえにお咎めをうけるようにそそのかしている。

そこへ磯之丞の母親というふれこみで現れたのは、お梶。もと磯之丞のうちへ奉公していたが魚売りの団七と深い仲となり、市松という子までなしたので、お暇をだされ、団七と夫婦になっている。その団七といえば、大鳥佐賀右衛門の中間と喧嘩をして、今は牢屋にはいっているのだ。

今度殿様が帰国するのを良い機会に磯之丞に家へ帰ってもらいたい玉島家と、夫を牢から出したいお梶。この二者の利害関係が一致して、お梶は夫を牢からだしてもらう口添えをしてもらう代わりに、磯之丞に家へ帰るようにと説得に来たのだ。だが磯之丞は琴浦をここへ残して家へかえるのが気の進まない。

すると庭先へ乞食たちが4人ほどなだれこんでくる。その中の一人の若者が「廓遊びで身を持ち崩した」と身の上話をするとそれを聞いた磯之丞は急に家に帰る決心をする。実はその乞食たちは、お梶が頼んで芝居をさせた者たちだった。

身の上話をした若者は一寸徳兵衛(いっすんとくべえ)。備中国玉島の生まれの流れ者。お梶は皆に褒美の金と着物を与える。

【二段目:玉島兵太夫内】

磯之丞の放逐。お梶による夫への除命嘆願により兵太夫が団七の放免を決める。

【三段目:住吉鳥居前(通称:鳥居前)】

住吉大社鳥居前にはお梶と息子の長松、三婦らが出迎えに来ている。お梶親子は早速主人の放免に社へお礼詣り。三婦はたまたま通りかかった磯之丞が駕籠代のことで、悪党のこっぱの権となまの八に絡まれているのを救い、磯之丞を近所の茶屋に行かせる。そこへ、月代と髭の伸びた団七が役人に伴われて、縄を解かれる。「これも信心いたす、お不動様のおかげじゃ、また、兵太夫様、おありがとうございます、磯之丞様は私が命に賭けてお守り申します」と喜ぶ団七に、三婦が呼びかけ再会を喜んだあと、新しい着物を与える。団七は言われるままに床屋に入る。三婦は「さあ、これで何もかもすっくり行った。・・・着物に煙草入れに・・・しもた!肝心の白旗(白い下帯=褌の隠語)忘れてきたがな!・・・まあ、ええわい。わしのは今日切りたての初穂。まあ白旗やのうて赤旗じゃがな。・・・これ床の衆!床の衆!」と自分の赤い下帯を脱いで床屋の若い者に渡し悠々と茶屋へ向かう。

入れ違いに磯之丞の愛人琴浦が佐賀右衛門に言い寄れられるが、床から現れすっきりした侠客姿となった団七に救われる。琴浦を茶屋に逃がす間もなく、佐賀右衛門の子分の侠客一寸徳兵衛が現れる。「ちょっと待ってもらおうかい」「待ていうのはわしのことかい」「そうよ」「乙に時代に出かけたな」と双方にらみ合いとなって、ついに争いとなる。「言うをも聞かぬ攫み合い、打ちつ打たれつ止めても、踏み飛ばすやら蹴飛ばすやら、止めぬ仕様も並び立つ、辻札取って二人が中へ、横にこかして機転の楯」の浄瑠璃の通りに二人の争いをお梶が「曽根崎心中」の絵看板で止めに入り、徳兵衛はお梶が以前、自身の難儀を救ってくれた恩人とわかり謝罪する。また、徳兵衛の女房のお辰が玉島家の家臣だったこともわかり、団七と徳兵衛は互いの浴衣の片袖を交わして義兄弟の契りを結ぶ。

【四段目:内本町道具屋】

手代となった磯之丞に義平次が侍を騙り金子を詐取しようとする。団七の活躍で悪事は食いとめられるが、磯之丞による殺人がおこる。

【五段目:安居の森「道行妹背の走書」】

磯之丞と道具屋の娘お仲による心中騒動。三婦の機転で悪手代の伝八を身代わりに死なせ、下手人に仕立てる。

【六段目:釣船三婦内(通称:三婦内)】

七月の暑い盛り、高津神社の宵宮の晩のこと。磯之丞は、団七の紹介で内本町の道具屋の手代となったが、義平次らに金を騙し取られそうになり、共犯の仲買の弥市を殺し、琴浦とともに三婦の家に匿われている。そこへ、徳兵衛女房お辰が尋ねてくる。夫婦そろって国許に帰るための暇乞いである。三婦の女房おつぎは、早速磯之丞を一緒につれて帰ってほしいと頼む。二つ返事で快諾するお辰だが、三婦が承知しない、「こんたの顔に色気があるのじゃ」とうのが理由で、万が一お辰と磯之丞との間に関係ができてしまうのを恐れているのだ。「それでは、妾の顔が立たぬぞえ、立ててくだんせ、もし、三婦さん」と憤るお辰だが、三婦はうんといわない。思い余ったお辰は傍にあった焼き鏝を己の頬にあて、「これでも思案のほかという字の色気がありんすか」と自身の美貌を醜くしてまでの心意気を示す。感心した三婦は承諾する。

そこへ、権と八がきて琴浦を拉致しようとする。信心のため喧嘩を止めていた三婦は我慢ならず、おつぎと、「こりゃ!嬶、どうでも、切らなあかんなあ」「ほんなら、こちの人、切らしゃんすのかい」「おお、切らいでどうする」と相談する。権と八は老人と思って舐めてかかり「おお、おもろいなあ、切るんかい」「切ってもらおうかい」「さあ切れ!」「ええ、キリキリと切りさらせ!」とすごむ。三婦は、耳につけていた数珠を引きちぎり「じゃかましいわい、わいが切るのはこの数珠じゃ、切ったからには元の釣船、うぬらに遠慮がいるものかい」とあべこべに権と八をけり倒して「お前らそこで待ってけつかれ」と、着替えたあと、長ドスをひっさげ佐賀右衛門を斬りに行く。お辰はおつぎに見送られ、磯之丞とともに家を去る。

入れ違いに義平次が駕籠を連れて門口に現れ、「年取って子供に使われてます、団七に頼まれて琴浦を引き取りにきましたのでな」とおつぎに訳を話し、そそくさと琴浦を駕籠に乗せて連れて行く。そのあと、三婦、徳兵衛とともにやってきた団七はお辰から事情を聞かれるが自身が言った覚えがない。どうやら佐賀右衛門が欲深い義平次を使って琴浦を攫う算段のようだ。団七は急いで駕籠のあとを追う。

【七段目:長町裏(通称:泥場)】

堺筋の東側にある長町裏。団七は駕籠に追いつき義平次をなじるが、「おれはお前の愛想尽かしを待っていたのじゃ」と反省の色もない。団七はとっさに石を懐に入れ、「親父どん、友達ちゅうのはええもんでんなあ。わしが入牢中に頼母子講で三十両集めてくれましてな。今、ここにござりますねん」と嘘を言う。義平次は金を貰えると聞いて態度を一変させ駕籠を返すが、「アニよ、その金は?」「さあ、その金は・・・」「その金は?」「・・・その金、ここにはござりませぬわい」と金子に見せかけた石を出す。怒った義平次は団七を打ち据え、「ようもようも、この仏のような親をだましくさったなあ」とついには団七の雪駄で額を打ち傷を負わせる。「ああ痛タ・・・おやっさん~、何ぼ何でもこないにドクショウに打たいでもええやろが」とぼやきながら団七は額に手を当て、血がついていてびっくり。「こりゃこれ男の生き面を・・・」と憤る団七「打った、はたいた、打ったがどうした、なんとした」とにらみ付ける義平次。思わず刀に手をかける団七。「何じゃい、何じゃい、われはわしを切りさらすのか」「あ、いやおやっさん、さようなことができまっかいな・・・」舅といえば親も同然。我慢に団七は我慢を重ねる。義平次は図に乗り、「これよく聞け、舅は親じゃぞよ、親を切ればな、一寸切れば一尺の竹鋸で引き回し、三寸切れば三尺高い木の空で、逆磔じゃぞよ、さあ切れ、これで切れ」と刀をつかんで挑発する。「おやっさん、やめとくんなはれ、危ないがな」「さあ、殺せ、殺しさらせ」と言い合ううち、ついには刀を取り合う揉みあいとなる。

刀の鞘が走って団七は義平次の肩先を斬ってしまう。「うわあ、切りやがった、親ごろし〜」「親父どん、何いうんじゃい、ええ加減にだだけさんすな」と義平次の口を押さえたときに、団七は血糊に気づきもはやこれまでと、だんじり囃子の聞こえる中、義平次を惨殺する。屍骸を池に捨て、井戸水で身体を洗った後「悪い人でも舅は親、親父どん、堪忍してくだんせ」とだんじりの群集にまぎれて去っていく。

【八段目:田島町団七内(通称:蚤とり場)】

三婦と徳兵衛の情けでお梶と長松は備中へ。捕り手の乱入後徳兵衛は縄をかける代わりに逃亡資金として金子を団七に渡す。

団七の家に玉島に帰る徳兵衛が暇乞いに来る。徳兵衛は長町裏で拾った団七の雪駄の片方を見せて義平次殺しの罪を替わって引き受けようとするが、団七は取り合わない。さらに「(蚤を)とった」と大声で叫び、逃げろとほのめかすがそれでも団七は承知しない。仕方なく徳兵衛はわざとお梶に不義をしかける。三婦のはからいでお梶は離縁されることになり、団七は舅殺しの罪から救われる。しかし捕手が乱入し、捕縛を買って出た徳兵衛は屋根上で団七を捕えるが、縄のかわりに追ちのびるための路銀を首にかけてやる。

【九段目:玉島徳兵衛内】

佐賀右衛門の悪事露見と磯之丞の勘当が解け、三婦とお梶に伴われた長松が団七に縄をかけるが、兵太夫により団七の減刑が約束される。

あの事件以来、団七は家へとじこもっている。そこへ徳兵衛がやってきて、「玉島へ帰るから一緒にいかないか」と団七を誘う。
団七が断ると徳兵衛は殺しの現場で拾った団七の雪駄の片方を見せ、いざという時は身代わりになろうと申し出るが団七は奥へはいってしまう。

帰ろうとする徳兵衛をお梶が「着物がほころびているので繕ってあげましょう」と、着物を脱がせる。裸になった徳兵衛は突然お梶を口説き始める。怒って出てきた団七は、義兄弟の契りを結んだ時に取り交わした袖を投げ返し、激しい喧嘩になる。

そこへやってきた三婦は団七に離縁状を書かせ、お梶と市松親子と徳兵衛を連れて団七の家を後にする。実は三人とも団七が義平次を殺した事を知っていて、尊属殺人の罪で極刑にさせないために、わざとしくんでお梶を離縁させたのだった。

しかしすでに役人が団七の家をとりかこんでいたので、徳兵衛は進んで捕縛の役をかって出る。そして屋根の上に逃げた団七を捕らえると見せて逃がしてやるのだった。

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