This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(29) 江戸世話物『三人吉三巴白浪』

歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。

This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。
今回は、江戸世話物の中から『三人吉三巴白浪』です。

『三人吉三廓初買』通称『三人吉三巴白浪』『三人吉三』の作者は、白浪物を得意とした河竹黙阿弥で、百両の金と庚申丸という刀によって、同じ吉三の名前を持つ3人の盗賊の身に降りかかる因果を描いた世話物、白浪物です。
元は僧だった和尚吉三、女として育てられたため女装で登場するお嬢吉三、元旗本の御曹司お坊吉三の3人が出会って、義兄弟となる「大川端の場」から、悪事のために追われる身となった3人が、雪の中で捕手に捕まる「本郷火之見櫓の場」までが上演されます。

特に有名なのが「大川端庚申塚の場」で、数ある歌舞伎の演目の中でも横綱級の人気があります。
節分の夜、大川端庚申塚で、ひょんなことから夜鷹を川に突き落とし小判百両を奪ったお嬢吉三。
そこで朗々とまるで唄いあげるかのように廻すのが次の科白です。

「月も朧に 白魚の
 篝も霞む 春の空
 冷てえ風も ほろ酔いに
 心持ちよく うかうかと
 浮かれ烏の ただ一羽
 ねぐらへ帰る 川端で
 竿の雫か 濡れ手で粟
 思いがけなく 手に入る百両

 (舞台上手より呼び声)御厄払いましょう、厄落とし!

 ほんに今夜は 節分か
 西の海より 川の中
 落ちた夜鷹は 厄落とし
 豆だくさんに 一文の
 銭と違って 金包み
 こいつぁ春から 縁起がいいわえ

この「厄払い」と呼ばれるお嬢吉三の独白は、歌舞伎の名科白中の名科白として知られています。

『三人吉三巴白浪』

序幕

幕が開くとここは夜更けの大川端(おおかわばた=隅田川の河畔)。
やって来たのはおとせという、夜の仕事で暮らす貧しい少女ですが、前夜の奉公人風の客が金を落としたので大切な店の金と思い行方を探しています。
そこへ現われた美しい娘はいかにも良家のお嬢様、しかしおとせが「百両」と口にすると実は男と正体を現わして財布を奪い、おとせは川へ・・・。
さらにその金を取ろうとした男の刀を奪って「思いがけなく手に入る百両」とほくそ笑みますが、その様子を駕籠の中からじっと見つめる人物がいます。

[荏柄天神社内の場]

[同 松金屋座敷の場]

[笹目ヶ谷柳原の場]

[同 新井橋の場]

二幕目

[両国橋西川岸の場]

[大川端庚申塚の場]

今宵は節分、ここは隅田川のほとりの庚申堂前。夜鷹のおとせが、昨晩若い客の落としていった百両と言う大金を持ち主に返そうと探し歩いている。すると後ろから振袖姿の若い娘が追いついてきて道を尋ねる。おとせが親切に道案内していると、突然娘は男となって物取りの本性をあらわし、百両を奪っておとせを川に蹴落とす。

その百両を横取りしようと切りかかってきた男から奪ったのが名刀「庚申丸」。

するとそこへ打ち捨てられていた駕籠から男が出てきて、「その百両を貸せ」という。互いに名乗りあって判った名前は「お坊吉三」に「お嬢吉三」といううわさに聞いた盗賊同士。斬り合いになった二人の間に割って入ったのは所化くずれの「和尚吉三」と名乗る、名うての盗賊。

和尚吉三の鮮やかな仲裁で、その気っ風に惚れたお坊とお嬢は、三人で義兄弟の契りを結ぶ。そして百両の金は和尚が預かる。

三幕目

[新吉原丁字屋の場]

[割下水伝吉内の場]

和尚吉三の父親、土左衛門伝吉は夜鷹宿(売春宿)を営んでいる。伝吉は、客が落とした百両を返そうと出かけていった娘のおとせがまだ帰ってこないので心配している。

じつは金を落とした客、十三郎は身投げしようとしたのを伝吉に助けられて、今伝吉のうちにいるのだ。そこへ八百屋久兵衛に川から助け上げられたおとせが久兵衛に伴われて帰ってくる。

ところが久兵衛の話を聞くうちに伝吉は十三郎は昔自分が捨てた、おとせの双子の兄弟だと気がつく。久兵衛が帰ったあと和尚吉三が百両の金(実は十三郎が落とした金)を父親にやろうと持ってくる。しかし、伝吉は「どうせよからぬ金だろう」と受け取らない。

帰った振りをして、和尚吉三は「おとせと十三郎が実は双子で、知らぬ事とはいえ畜生道(近親相姦)に落ちてしまった」という恐ろしい秘密を盗み聞きしてしまう。百両の金をそっと仏壇の前において帰る和尚。だが伝吉は丁度来合わせた釜屋武兵衛を和尚と間違えその金を投げつけてしまう。

四幕目

お坊吉三の父は将軍家から預かった名刀・庚申丸を何者かに盗まれて切腹、お家は断絶となっています。
その刀を盗んだのが和尚吉三の父・伝吉ですが刀を川に落とし、やがて廻りまわって大川端でお嬢吉三が手にした刀が実は庚申丸。
一方、百両を手にした和尚がその金を父に渡そうとしますが汚れた金と受け取らず、さらにふとした手違いからお坊の手に入り、伝吉がそれを取り戻そうとしますがお坊に斬り殺されてしまいます。
父の身を案じてやって来たおとせと十三郎は変わり果てた姿に悲しみますが、下手人の証拠の品を見つけます。

[新吉原日本堤の場]
[同 丁字屋二階の場]
[廓裏大恩時寺前の場]

五幕目

[根岸丁字屋別荘の場]

六幕目

[巣鴨在吉祥院の場]

ここは和尚の住む吉祥院。追っ手を逃れて和尚を訪ねてきたお坊から、身の上話を聞いて和尚は「自分の父親こそ、お坊の親の敵だ」と気づく。そこへ十三郎とおとせがやってきたので、お坊は隠れるが話しを聞くうちに「和尚の父親を殺したのは自分だ」と言う事を知る。

和尚がおとせと十三郎を裏の墓場に連れて行った間に、お坊は死のうと決心する。その時本堂の欄間のところに隠れていたお譲も「自分が金を奪った相手は和尚の妹のおとせだった」と言う事を知り、二人で一緒に死のうと遺言を書く。

お坊とお譲が自害しようとするところへ、和尚が二つの切り首を抱えて飛び込んできて二人を止める。和尚が抱えたその首は、おとせと十三郎の首だった。

おとせと十三郎には「二人は兄妹だから夫婦にはなれない」ということを知らせないまま、和尚は「義兄弟の為に身替りになってくれ」と頼んだのだ。犬のようになって苦しみながら死んでいった二人。(それは二人の親伝吉がその昔「庚申丸」を盗んだ時に、殺した孕み犬の崇りだった)

その話しを聞いて、お坊とお譲は仰天するが、和尚はそもそもの因果関係を二人に話して聞かせる。お坊が殺した伝吉はお坊にとっては親の敵。又おとせを救ってくれた十三郎の養父、八百屋久兵衛はお譲の実の親。

お譲がおとせから奪った金は和尚から伝吉に返したのに、それを受け取らなかった伝吉が悪いのだと和尚は二人に説く。

はからずも畜生道に落ちた自分の弟妹は、それと知らない間に死なせてやる方が良かったのだから、二人の首を役人に身替りとして差しだすその間に、逃げられるだけ逃げてくれと和尚は二人に頼む。

七幕目

[本郷火の見櫓の場]

あちらこちらから追っ手がかかって行き場のなくなった三人吉三。とうとう「町の木戸は三人吉三がつかまったという合図の、火の見櫓の太鼓が鳴らない限り開けてはならない」というお触れが出る。

追い詰められたお坊とお譲はある雪の降る日、閉められた木戸をはさんで再会する。和尚が捕まったと言う話しを聞き、お譲は火の見櫓に登って太鼓を打つと、木戸が開かれて和尚が落ちのびてくる。

そこへやってきた八百屋久兵衛(実はお譲の父親)に、お坊は安森家を再興するためにと「庚申丸」を、お譲は十三郎のなくした百両を託す。三人揃った吉三たちは大勢の取り方に囲まれて最後の時を迎えるのだった。

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