”古代から現代までの知の饗宴。
孔子、プラトンからアインシュタイン、ケインズまで、人類の歴史に大きな影響をもたらした世界の名著100冊を、縦横無尽に論じた驚嘆のブックガイド。”
といううたい文句を冠に沿えた、「人類の歴史に大きな影響を与えた」という観点でマーティン・セイモア・スミスが選んだ人文学の入門ガイド本『世界を変えた100冊』。
ここでは、マーティン・セイモア・スミスが選んだそれぞれの本について触れてみたいと思います。
今回は、その第四弾。
31 In Praise of Folly – Desiderius Erasmus 1511
エラスムス著、痴愚神礼讃
痴愚の女神モリアー(モリアエ)が聴衆を前に大演説会を開き、聖書伝説やギリシア・ローマの古典からの夥しい引用、縦横に繰り出される警句とともに人間社会の馬鹿馬鹿しさや繰り広げられる愚行を饒舌に風刺するというものである。痴愚女神は軽妙洒脱な語り口をもって王侯貴族や聖職者・神学者・文法学者・哲学者ら権威者を徹底的にこき下ろし、人間の営為の根底には痴愚の力が働いているのだ、人間は愚かであればこそ幸せなのだ、と自画自賛の長広舌を繰り広げる。
32 The Prince – Niccolo Machiavelli 1513
ニッコロ・マキアヴェリ著、君主論
『君主論』は、ニッコロ・マキャヴェッリによる全体で26章から成る政治学の著作である。
歴史上の様々な君主および君主国を分析し、君主とはどうあるものか、君主として権力を獲得し、また保持し続けるにはどのような力量(徳、ヴィルトゥ)が必要かなどを論じている。
その政治思想から現実主義の古典として位置づけられる。
33 On the Babylonian Captivity of the Church – Martin Luther 1520
マルティン・ルター著、教会のバビロニア捕囚
『教会のバビロニア捕囚』は、ドイツの宗教改革者マルティン・ルターによる著書。
1520年に発表された彼の三大論考のひとつ(『ドイツ貴族に与える書』、本書、『キリスト者の自由』)。
彼はこの論考において、教皇制のもとにある全てのキリスト者をバビロニアの支配下に置かれたエルサレムの人々になぞらえ、そこからの解放を訴えた。
34 Gargantua and Pantagruel – Francois Rabelais 1534
フランソア・ラブレー著、カーニバルの祝祭空間:ガルガンチュアとパンタグリュエル
『ガルガンチュワとパンタグリュエル』(Gargantua, Pantagruel)とは、フランス・ルネサンス期の人文主義者フランソワ・ラブレー(François Rabelais)が著した物語『ガルガンチュワ物語』『パンタグリュエル物語』のこと。
ガルガンチュワ(ガルガンチュア、ガルガンテュアとも)、パンタグリュエルという巨人の一族を巡る荒唐無稽な物語である。
第二之書・第一之書はアルコフリバス・ナジエ(Alcofribas Nasier)という筆名(ラブレーのアナグラム)で、第三之書以降は本名で刊行した。
1532-1552年に4巻までが出版され、ラブレーの死後に第5巻が刊行されたが、偽書説もある。
35 Institutes of the Christian Religion – John Calvin 1536
ジャン・カルヴァン著、キリスト教綱要
プロテスタント神学の最初の組織神学書である。
1536年3月にバーゼルにおいてラテン語で執筆され、その後5度に渡って改訂増補され、1559年に出版された第5版が最終版となった。
カルヴァンが『綱要』を執筆した目的は聖書に対する神学的な手引きであり、特に、改革派教会の神学的基礎を記している。
その中心的な思想は、「神の権威と聖書における唯一の啓示」の主張(一般に「神中心主義」としてまとめられる)である。
36 On the Revolution of the Celestial Orbs – Nicolaus Copernicus 1543
ニコラウス・コペルニクス著、天球の回転について
『天球の回転について』(On the Revolutions of the Heavenly Spheres by Nicolaus Copernicus of Torin 6 Books)は1543年に出版されたニコラウス・コペルニクスの地動説を主張した著書である。
1512年から行われた第5ラテラン公会議においては、教会暦の改良についても議論された。このとき意見を求められたものの、1年の長さと月の運動の知識が不十分であったため問題の解決ができなかったことを認識したコペルニクスが、太陽系の構造を根本から考えなおしたものである。1539年にゲオルク・レティクスがコペルニクスの弟子となりコペルニクスの手稿を読み、レクティスの天文学の師のヨハネス・シェーナーに概要を送り、1540年に Narratioとして出版された。
37 Essays – Michel Eyquem de Montaigne 1580-88
ミシェル・ド・モンテーニュ著、エセー
『随想録』もしくは『エセー』(仏: Les Essais)は、フランスのモラリスト、ミシェル・ド・モンテーニュが107の随筆を集めて1580年に刊行した書物である。
モンテーニュは随筆という、特定の話題に関する主観的な短い文章の形式を発明したのであり、この書物はそのエセーを収めている。
人間のあらゆる営為を断続的な文章で省察することによりモンテーニュは人間そのものを率直に記述しようとし、モラリスト文学の伝統を開いた。
38 Don Quixote – Miguel de Cervantes 1605-15
セルバンテス著、ドン・キホーテ
スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説。
騎士道物語を読み過ぎて妄想に陥った郷士(下級貴族)の主人公が、自らを伝説の騎士と思い込み、「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と名乗り、痩せこけた馬のロシナンテにまたがり、従者サンチョ・パンサを引きつれ遍歴の旅に出かける物語である。
主人公の自意識や人間的な成長などの「個」の視点を盛り込むなど、それまでの物語とは大きく異なる技法や視点が導入されていることから、最初の近代小説ともいわれる。
39 The Harmony of the World – Johannes Kepler 1619
ヨハネス・ケプラー著、宇宙の調和
球もふくむ6つの惑星は、調和音を奏でながら太陽の周りを運動する。
処女作『宇宙の神秘』(1596)で提唱した5つの正多面体による宇宙モデルと、ティコ・ブラーエとの共同研究により第1、第2法則をうち立てた
『新天文学』(1609)の成果を統合し、第3法則を樹立した歴史的名著。
40 Novum Organum – Francis Bacon 1620
ベーコン著、ノヴム・オルガヌム – 新機関
ベーコンがその大計画「諸学の大革新」の要の部分として大いに力を注いだ書。
旧来のアリストテレス論理学関係の諸研究(オルガノン)を批判し、新しい論理学の方法を提唱して諸学問近代化への途を開いた。
論理学は本書により、近代社会の入口に立った人々の学問建設への力強い道具となった。