東洋医学の考え方は「陰陽」「五行」が基本です。
「陰陽」と「五行」はともに古代中国の世界観で、この2つを合わせて「陰陽五行説」といい、漢方を含む東洋医学の根幹を成す基本的な考え方です。
東洋医学は、この陰陽五行理論を根本に心身を診断治療します。
陰陽とは、宇宙の万物はすべて陰陽に分類され、心身もこのバランスが崩れると病気になります。
五行とは、木・火・土・金・水の五つの要素のことで、それぞれに肝・心・脾・肺・腎や筋・脈・肉・皮毛・骨などが属します。
これらのバランスの崩れもまた心身の病気へとつながります。
この陰陽五行のバランスを整え、心身の自然治癒力を引き出し、その治癒力で症状を治してゆくことが東洋医学の根本です。
※)陰陽五行に関連する内容については、以下でも整理してありますので、参考にしてください。
・陰陽五行とは?
・陰陽五行 男性と女性に当てはめると
・陰陽道 鬼門について
・陰陽五行説 万象学って何?
・九星気学 事始め
・陰陽五行 六曜を整理すると。
・陰陽五行 相生相剋・相克の関係について
・陰陽五行 八方、十干十二支を整理すると。
・干支から見る、2015年乙未の解明・啓示
・陰陽五行 色彩に関わる視点
・三英傑と光秀にみる相生相剋の関係
・徳川家康と天海僧正:鬼門・裏鬼門封じと地鎮信仰で構築した都市デザインについて
もう少し分かりやすく整理しておきましょう。
【陰陽】
「陰陽」とは、昼と夜、天と地というふうに、万物は相反する2つの要素を持っていて、それらが作用し合って宇宙が営まれているという概念です。
陰は静的な側面を持ち、陽は活動的な側面を持つ訳ですね。
具体的には、
陽 | 天 | 熱 | 活動 | 明 | 清 | 気 | 興奮 | 火 | 昼 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
陰 | 地 | 寒 | 休息 | 暗 | 濁 | 血 | 沈静 | 水 | 夜 |
といった具合です。
東洋医学的にみれば、これを人体にあてはめてみると、
陽 | 男 | 背中 | 上半身 | 皮膚 | 手足 | 体表 | 腑 | 消費 | 便秘 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
陰 | 女 | 腹部 | 下半身 | 内蔵 | 体感 | 体内 | 臓 | 栄養 | 下痢 |
となります。
このように陰と陽の関係は相互に対立しているだけではなく、相互依存・相互制約の関わりの中で統一され、健全な自然環境が成り立っています。
この陰陽に逆らった生活や職業を長期に渡って続けると色々な病気にかかりやすいので、東洋医学ではこの陰と陽がバランスよく存在するような治療・療法を考慮していく訳です。
【五行】
一方の「五行」は木、火、土、金、水という五つの基本要素の変化によって、自然界の減少を説明するものです。
またこの5つはお互いが繋がっていますが、これを「相生」「相剋」関係といいます。
・陰陽五行 相生相剋・相克の関係について
相生では、木→火→土→金→水の順番で、
相剋では、木→土→水→火→金→木の順番です。
相生は相手を生み育てる概念なので、木が燃えて火になり、火から灰になって土になり、土から金(鉱物)ができ、金(鉱物)から水(鉱水)ができ、その水は木を育てるといったような巡りの関係にあるということです。
それに対して相剋は相手を抑制する概念なので、木は土の栄養を吸収し、土は土手となり水の氾濫を抑え、水は火を消化して、火は金属を溶かして、金属は木を切るといったような関係になるのです。
五行の分類で代表的といえるのは季節と方角ですが、季節は春夏秋冬と土用、方角については東西南北と中央を木・火・土・金・水に配当しています。
「五行」を人間の体に当てはめると肝、心、脾、肺、腎の“五臓”で表しますが、これは臓器自体だけでなく、体の機能を大きく五つに分類しているものです。
以下に、五行色体表の中から病状の捉え方や養生法などに役立つと思われる具体的な項目を示しておきます。
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
---|---|---|---|---|---|
五季 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 |
五能 | 成 | 長 | 化 | 収 | 蔵 |
五悪 | 風 | 暑 | 湿 | 燥 | 寒 |
五方 | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 |
五刻 | 朝 | 昼 | 午 | 夕 | 夜 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五腑 | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
五根 | 眼 | 舌 | 口 | 鼻 | 耳 |
五主 | 筋 | 血脈 | 肌肉 | 皮膚 | 骨 |
五支 | 爪 | 毛 | 乳 | 息 | 髪 |
五志 | 怒 | 喜 | 憂思 | 悲 | 恐驚 |
五精 | 魂 | 神 | 意智 | 魄 (はく) |
精志 |
五情 | 慈 | 敬 | 誠 | 義 | 知 |
五畜 | 鶏 | 羊 | 牛 | 馬 | 豚 |
五役 | 色 | 臭 | 味 | 声 | 液 |
五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
五香 | (油臭い) | 焦 | 香 | 腥 (生臭い) |
腐 |
五声 | 呼 | 言 | 歌 | 哭 (なく) |
呻 (うめく) |
五味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹 (しおからい) |
五変 | 握 | うわ言 | きつ逆 (しゃっくり) |
咳 | 慄 (ふるえ) |
五液 | 涙 | 汗 | 涎 (よだれ) |
鼻汁 | 唾 |
五穀 | 麦 | 黍 (きび) |
粟 | 稲 | 豆 |
五菜 | 韮 | (らっきょう) | 葵 (せり) |
葱 | 豆の葉 |
五果 | 李 | 杏 | 棗 (なつめ) |
桃 | 栗 |
【陰陽と五行の関係】
上記で挙げた「陰陽」も「五行」のそれぞれも単独では存在できません。
陰陽五行論の思想ではこの世に無駄なものは何一つなく、すべては何らかの形で陰陽と五行に配当され役割をもっているとされています。
そのため東洋医学において、病とは陰陽や五行の過剰あるいは不足によるバランスの崩れた状態だと考えられます。
そしてその治療は、こうした過剰や不足に対応してバランスを取り戻すことです。
心身のバランスを取り戻して、自然に沿った生活を送る。
これが東洋医学の、「陰陽」と「五行」のバランスを考慮すれば健康を回復できるという思想になる訳です。