先に八正道※)について触れましたが、思いや考えを八正道によって規定し、それらをどういった形で行動に移していくのか?
ここで、菩薩(仏道修行者)の実践するべき基本的な六つの徳目のことを六波羅蜜といいます。
※)八正道については、”八正道!「苦」を滅するための8種の徳目!”も参考にしてください。
「波羅蜜」とは到彼岸、度とも言い、サンスクリットで彼岸※)に至るという意味で、「到達」「完遂」「達成」「獲得」を指します。
※)彼岸については、”自然界の摂理 彼岸について”も参考にしてください。
大乗仏教の中で『般若経』では、人間が完成していくためには六つの道筋があって、その一番目は「布施」、つまり「与える」というところからはじまるわけです。
(『華厳経』などではこれに4種を加え10種(十波羅蜜)を数える。『摩訶般若波羅蜜経』は九十一波羅蜜を列挙する)
各修行で完遂・獲得するものと、達成すべきものをまとめておきます。
・布施波羅蜜
– 檀那もしくは檀:
とことんまで人に何かを与えていくこと。
具体的には、財施(喜捨を行なう)・無畏施・法施(仏法について教える)などの布施である。
たとえば「ほほえみ・愛読」など、手ぶらでも人をしあわせにする布施を高く評価する。
・持戒波羅蜜
– 尸羅(しら):
戒律を守る、決められたことは守っていくということ。
尸は屍に通じる。在家の場合は五戒(or八戒)を、出家の場合は律に規定された禁戒を守ることを指す。
・忍辱波羅蜜
– 提(せんだい):
耐え忍ぶこと。「認める」というニュアンスもある。
私が受ける災難は私への指名であって、誰にも代わってもらえない、と確認するのが「認」、すなわち「忍」と同じ意味となる。
確認できれば、歯を食いしばってではなく、納得して耐えることができる。
・精進波羅蜜
– 毘梨耶(びりや):
努力する、励むこと。
・禅定波羅蜜
– 禅那(ぜんな):
特定の対象に心を集中して、散乱する心を安定させること、身心を安定すること。
・智慧波羅蜜
– 般若(はんにゃ):
諸法に通達する智と断惑証理する慧、いわゆる智慧のこと。
前五波羅蜜は、この般若波羅蜜を成就するための手段であるとともに、般若波羅蜜による調御によって成就される。
ちなみに前述の八正道と六波羅蜜の関係ですが、ざっと以下のような対応付けとなります。
「八正道」 「六波羅蜜」
正見(立場) 智慧
正思惟(思想) なし
正語(言論) なし
正業(行為) 持戒
正命(生活) なし
正精進(努力) 精進
正念(精神) 禅定
正定(三昧) なし
なし 布施
なし 忍辱
修行者が実践すべき徳目といわれていますが、私達が忘れがちな日常生活を送る上での基本的な所作を示しているにすぎません。
新年の目標や心構えを立てる上での基として捉えてみてはいかがでしょうか。