『三国志演義』第四十七回 カン沢密かに詐りの降書を献じ、ホウ統巧みに連環の計を授く

闞沢は黄蓋の書面を受け取ると、その夜に曹操の陣屋に向けて船を漕いだ。
曹操は黄蓋の書面を受け取り苦肉の計を見抜いたが、闞沢の能弁により偽りの投降ではない事を確信した。そこに、先に探りを入れていた蔡中と蔡和からの周瑜と黄蓋の間に起こった出来事を知らせる書面が届いた。黄蓋の投降が本心からであると確信した曹操は闞沢に「先生、まことに大儀ではござろうが、再び江東に帰って打ち合わせの上内通してくだされ。その上当方より加勢を繰り出したいのじゃが。」
と言った。
江東に戻った闞沢は黄蓋と甘寧に内通成功を話して大いに喜んだ。
そこに蔡中と蔡和が、
「実は我々も丞相の命で様子を探りに来ている。」
と打ち明け、協力を申し出た。そして、曹操に甘寧も内応する旨を伝えた。闞沢は、舳先に青い旗を付けた舟に黄蓋が乗っているという密書を送った。

一方、書面を受け取った曹操だが、心中なお疑念がはれなかった。蒋幹が再び探りに行くことを申し出たので、大いに喜んで立つように命じた。
蒋幹が来たことを知ると、周瑜は
「貴様、また俺を口説き落としに来たのであろう。このまま陣屋においてはまた何かするに決まっている。」
と言って西山の庵室に押し込めた。
ふと月夜に裏方から外に出ると書物を読む声が聞こえる。蒋幹は声のする方に行くと、大きな岩陰に草葺きの家があり、中には鳳雛と呼ばれている男、龐統がいた。
龐統は周瑜から隠れていることを語り、蒋幹は曹操に仕えることを勧めた。かくて龐統と蒋幹はその夜のうちに岸辺の舟に乗り込んで曹操のもとに帰った。曹操は鳳雛が我がもとに来たと喜んで厚くもてなした。
龐統は
「魏の兵は土地になれず、吐き気がする病にかかっておる様子。舟を鎖でつないで板を渡せば人馬が行き来できましょう。さすれば舟に揺られて病にかかる者もいなくなりましょう。」
と進言した。曹操は大いに喜んで命を下した。
さらに龐統は、
「今、江東の英傑は周瑜を恨む者が多く、それがしが丞相のために皆を口説いてお連れいたします。」
曹操は大いに喜んで龐統を江東に行かせた。龐統が舟に乗り込もうとしたところに、袖をつかんで、
「黄蓋の苦肉の計、闞沢の偽りの投降状、そして今度は貴様の連環の計か。丞相は騙せてもこのわしの目はごまかせんぞ。」
と言われ、あっと仰天した。

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