【千夜一夜物語】(53)  帝王マハムードの二つの世界(第819夜 – 第821夜)

前回、”「真珠華」の物語”からの続きです。

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昔、エジプトの帝王(スルタン)マハムードは、聡明で栄光に満ちた帝王であったが、時折憂鬱な気持ちに襲われることがあった。
そんなある憂鬱な日、マグリブの地から一人の老人が謁見を求めて来た。
老人が帝王の部屋の4つある窓の第1の窓を開けると、敵の大軍が大挙してやってくるのが見えた。
窓を閉めてもう一度あけると、大軍は消え、平和な町並みがあった。
第2の窓を開けると、町は大火に襲われ一面火の海であったが、一度閉めてもう一度あけると、普通の町並みに戻った。
第3の窓を開けると、町はナイル川の大洪水に襲われ何もかも波にさらわれてしまったが、一度閉めてもう一度あけると、普通の町並みに戻った。
第4の窓を開けると、町は旱魃に襲われ草も木も枯れ果て砂漠になってしまったが、一度閉めてもう一度あけると、普通の町並みに戻った。

次に老人は、帝王の首を掴み、部屋の泉の水の中に帝王の首を沈めた。
すると、帝王は見知らぬ土地の海辺に打ち上げられた。
帝王が近くにいた農民たちに話しかけると、誰も帝王のことを知らず、農民たちは帝王を捕まえ、小屋に連れて行き、魔法で驢馬にしてしまった。
驢馬になった帝王は5年間来る日も来る日も重労働をさせられた。
5年後魔法が解けて人の姿に戻ると、人が来て、「浴場に行き、出てくる女に必ず独身かどうかを聞き、独身なら結婚するように」と言った。
帝王が声を掛けた美しい女たちは既婚であったが、3人目の醜く極めて年を取った老婆は独身で、結婚することになったが、迫られてあまりの不快に帝王は大声をあげた。

帝王が気付くと、部屋の泉の水から頭を上げた所であり、5年と感じたのは水に頭を沈めていた僅かな時間であった。
帝王は自分の境遇の幸運を感謝し、境遇を一瞬で変えられるアッラーの力を思った。
そのとき既にマグリブの老人は消えていた。

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次回は、底なしの宝庫です。

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