能と狂言、能楽、歌舞伎というのが、なんとなくぼんやりとした範囲でしか分類できていなかったので、ちょっと調べてみたものをメモ書きとして残しておきます。
個人的には、歌舞伎に比べて能や狂言の方は敷居が高くて、自ら積極的に観に行こうという気持ちが起き難く、たまたまオープンスペースの能楽堂などでチラッと拝見する、ぐらいしか見たことがないものです。
でも、能や狂言の演目を調べてみて、改めてじっくり鑑賞すべき日本の伝統芸能であることがわかりました。
テレビではなく、是非とも生で観るべきですね。
【能】
世界的に知られている日本の舞台芸術で、歴史のある神話や物語を題材にした悲劇が多いようです。
能面と呼ばれる面を使用し、能舞台で「シテ」と呼ばれる演者が演じます。
一般的に能とは猿楽能を指します。
現代において例えるなら、古典舞台劇ですね。
例えばハムレットとかリア王のようなシェイクスピア的な壮大なストーリー展開のあるものです。
【狂言】
世界的に知られている日本の舞台芸術で、能とは異なり、一般庶民の日常生活や人間のこっけいな部分を題材にした、笑いの劇を行う寸劇です。
演者は能面は着けずに演じることが多く、現代でも充分理解できる話の内容が多いです。
猿楽能の滑稽な部分を劇化した最古の喜劇です。
現代において例えるなら、お笑い舞台劇ですね。
例えばよしもと新喜劇とかワハハ本舗のように日常の笑いをひたすら面白おかしく構成しているものです。
【能楽】
日本の伝統芸能であり、式三番(翁)を含む能と狂言とを包含する総称です。
重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。
式三番は、能が成立する以前の翁猿楽(老人の面を付けた神が踊り語って祝福を与えるという芸能)の様式を留める芸能です。
もともとは五穀豊穣を祈る農村行事であり、翁は集落の長の象徴、千歳は若者の象徴、三番叟は農民の象徴であるとされています。
要は、能と狂言は能楽という芸能の二つの要素を表すもので、それぞれがシリアス芸(悲劇)とコメディ(喜劇)の役割によって分かれているものです。
基本はひとつの舞台で、能の合間に狂言が演じられたり、能の中の役者として狂言方が出演するものですが、それぞれ独立しても演じられます。
能や狂言は、武士や公家など権力者によって保護された芸能として成立してきました。
能楽の流派は、大和猿楽四座の系統の流派と、それ以外の日本各地の土着の能に分けられるようです。
大和猿楽四座には、観世座、宝生座、金春座、金剛座があり、金剛座から分かれた喜多流を併せて四座一流と呼ぶそうです。
狂言の流派は、元々大蔵流(宝生座、金春座、金剛座)、鷺流(観世座)、和泉流の3派があり、現存するのは大蔵流と和泉流だけのようです。
【シテ、ワキ、ツレ、アド】
能楽にはシテ方、ワキ方、囃子方、狂言方という4つの役があり、それぞれの役者はその専門分野の役のみを担当します。
シテ方は、能の主役であるシテのほかツレや子方、謡の吟唱部分を斉唱する地謡、シテの装束の乱れを直したり、代役を勤めたりする後見などの役を担当します。
シテの役柄は、能の主題によって様々ですが、男女の霊、草木の精、神、鬼、妖怪などの役で登場し、それぞれにふさわしい能面をかけて、舞を舞うのが原則です。
ワキ方は、能におけるシテの相手役で、ワキ、ワキツレなどの役を担当します。
(ツレとは連れ、お供のことです)
ワキは、神職、僧侶、武士など、常に現実に生きている男性の役で登場し、面をかけることはありません。
囃子方は、能、狂言において笛、小鼓、大鼓、太鼓の4種類の楽器を演奏し、それぞれの担当ごとに笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方に分かれています。
狂言方は、能においてはアイ(間)と呼ばれる役を担当します。
アイは、シテが中入りで退場している間にゆかりの物語を語ったり、筋の展開に沿って活躍したりします。
狂言においては、主役のシテ、脇役のアドなどの役を担当します。
【歌舞伎】
民衆の娯楽芸能として生まれた、舞踊的要素を備えた演劇です。
能楽と違い、派手で、楽しませることを目的にしたような演技が特徴です。
奇抜・奇妙な格好や振る舞いを意味する「カブく」が語源。
出雲の阿国(おくに)という女性がその発祥とも言われていますが、次第に女性の歌舞伎が禁止され、現在はすべて男優が演じる形態となりました。
現代において例えるなら、エンターテイメント性の高い舞台劇ですね。
例えば宝塚のように新旧いろいろな要素を取り入れて、その時代にあった感性をそのまま観客に提供するようなものです。
かぶきの家系も複雑すぎてわかりにくいので、ざっと並べておきましょう。
【市川団十郎家】
歌舞伎界最高の名跡。江戸歌舞伎のボス的存在で特に市川宗家と呼ばれる。屋号は成田家、定紋は三升。
市川海老蔵が歌舞伎界の申し子と呼ばれる所以は、ここにあります。
【松本幸四郎家】
もともとは市川団十郎家の弟子筋にあたる。屋号は高麗屋、定紋は四つ花菱。
【中村歌六家】
大阪に生まれ3世中村歌右衛門の門弟だった初世を祖とする家系。屋号は萬屋、定紋は桐蝶。
【中村歌右衛門家】
屋号は成駒屋、定紋は祇園守(中村歌右衛門)、イ菱(中村鴈治郎)。
【尾上菊五郎家】
市川宗家と共に250年以上の歴史を誇る名門。屋号は音羽屋、定紋は重ね扇に抱き柏。
【市川段四郎家】
スーパー歌舞伎で有名な現3世市川猿之助の家系。屋号は沢瀉屋、定紋は三つ猿。
【坂東三津五郎家】
屋号は代々大和屋、定紋は三ツ大(坂東三津五郎)、花かつみ(坂東玉三郎)。
【片岡仁左衛門家】
京都を本拠とする歌舞伎界の名門。屋号は松島屋、定紋は七つ割り丸に二引き。
【沢村宗十郎家】
元禄時代から続く歌舞伎界の名門。屋号は紀伊国屋、定紋は丸にいの字。
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