前回、”奇怪な教王”からの続きです。
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シャミク王にイブラーヒームという大臣がおり、その娘は美と教養、歌舞音曲にすぐれたすばらしい娘で「蕾の薔薇」と呼ばれていた。
王は宴会にいつも「蕾の薔薇」を侍らせていたが、ある日の宴会で、彼女は「世の歓び」という美しい若者に出会い、恋に落ちる。
しかしそれを知った大臣は、王が娘を気に入っていることから大事になるのではと案じ、彼女をバハル・アル・コヌーズ海上にうかぶ「子をなくした母の山」に幽閉する。
「蕾の薔薇」がいなくなったことを知った「世の歓び」が嘆いていると、獅子に出くわす。
獅子がお世辞追従に弱いことを思い出し、もちあげる詩をうたい自分の苦境を訴えると、獅子は一連の足跡を彼に示す。
それを追っていくと、海岸に出たところで足跡が終わっている。
ほど近い山の洞窟には隠者が住んでおり、その助言に従って網につないだカボチャにつかまり三日間海の上に浮かんでいると、島についた。
島には城壁があり、しばらく待っていると中から宦官が出てくる。
自分はイスパハーンからの漂流者だと名乗ると、宦官は同郷だと言ってなつかしみ、彼を城内に招じ入れた。
宦官によれば、次に扉が開くのは一年後、たっぷり備蓄した食料を補充するときだという。
一方「蕾の薔薇」は、シーツを伝って幽閉先を脱出する。
漁師の助けを借りてある岸へつくと、その国の王デルパスが彼女の漂着に気づき、保護する。
事情を聞いた王は協力を申し出、シャミク王に同盟を持ちかける使者を出し、「世の歓び」を娘の婿にもらうことを条件としてつけることにした。
そして使者の大臣に、もし「世の歓び」を連れ帰らなければ免職すると固く言い渡した。
同盟の申し出を受けたシャミク王は、大臣イブラーヒームに「世の歓び」捜索を申しつける。
国中を探索するが見つからず、やがて「子をなくした母の山」にまでたどり着く。
そのころ「世の歓び」はすっかりみじめな様子に変わってしまっていて、誰も彼の存在に気づく者はなかった。
娘と会おうとしたイブラーヒームは、そこで初めて娘の姿が消えていることを知る。
「世の歓び」もまた失踪を知り、絶望して気を失ってしまった。
その姿は、至高なるもののそばにいる聖者であるかのように、人々には見えた。
デルパス王の大臣は、いったんあきらめて帰ることにし、気を失っている若者を一緒に連れ帰る。
数日して、帰途の途中で意識をとりもどした「世の歓び」は、大臣から罷免についての相談を受け、王様の前に私を出しなさいと答えた。
そして彼はデルパス王に、自分が「世の歓び」であることを明かす。
デルパス王は「世の歓び」と「蕾の薔薇」の婚礼をとり仕切り、シャミク王も、ふたりの結婚に祝福を送った。
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次回は、黒檀の馬奇談です。