【千夜一夜物語】(41) 不精な若者の物語(第666夜 – 第671夜)

前回、”ザイン・アル・マワシフの恋”からの続きです。

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ある日、教王(カリーファ)ハールーン・アル・ラシードは、正后ゾバイダから無数の宝石をちりばめた王冠の中央につける大きな宝石が欲しいと頼まれ、バグダード中を探させるが見つからず、そのような宝石はバスラに住む「ぐにゃぐにゃ骨のアブー・ムハンマド」しか持っていないと商人が口々に言っていることを知った。
教王は人をバスラに遣わし、ぐにゃぐにゃ骨のアブー・ムハンマドを召し出した。

教王に謁見したぐにゃぐにゃ骨のアブー・ムハンマドは、多数の宝石や、黄金の幹にエメラルドとアクアマリンの葉を付けてルビーとトパーズと真珠の実がなった木や、無数の宝石が縫い付けられた天幕で口笛を吹くと宝石の鳥たちが歌いだすというものを献上した。
教王はぐにゃぐにゃ骨のアブー・ムハンマドの名前の由来と、これほどの財宝をどのようにして得たかを聞いたため、アブー・ムハンマドは次のように語った。

アブー・ムハンマドは貧しい家に生まれ、まったく体を動かさず寝てばかりであったため「ぐにゃぐにゃ骨」と呼ばれるようになったが、15歳のとき父親がなくなり、母の働きで暮らしていた。
ある日、となりの長老ムーザファルが商隊を組んでシナ(中国)へ貿易に出かけることになったので、銀貨5ドラクムをムーザファルに預け、シナで何かを仕入れてきてもらうよう頼んだ。

ムーザファルは無事シナに着き、商売をし、船で帰途に着くが、途中でアブー・ムハンマドの仕入れを忘れたことに気付き、船をシナに戻そうとする。
しかし他の商人たちが反対し、それぞれ金貨5ディナールをアブー・ムハンマドのために払うので、引き返さないことになった。
船は補給のためある島に寄港したところ、20匹ほどの猿を持った猿売りがいて、うち1匹は他の猿からいじめられて、ひどい状況だった。
ムーザファルは哀れに思い、その猿の値段を聞いたところ、銀貨5ドラクムだったので、アブー・ムハンマドのためにその猿を買った。
猿を船に連れて行くと、猿は海に飛び込み、真珠の貝を海底から次々拾ってきた。
猿が拾い終わると、船は出港し、無事バスラに戻った。
ムーザファルは、金貨と、猿と、猿が拾った真珠をアブー・ムハンマドに渡した。

アブー・ムハンマドはその日以降起きて、真珠を売る商売を市場で始め、金持ちになった。
ある日、猿が雄鶏の羽をむしり、一本一本土に植え、鳥の血を掛け、砂嚢を取り出し土の上に起き、呪文を唱えると、猿は消え、羽根一本一本が黄金と宝石の木になり、砂嚢は宝石の天幕になり、莫大な富を得た。
アブー・ムハンマドはこの財力のため、バスラの王族の娘と結婚できた。

この話を聞いた教王は感心し、献上品を上回る褒美を与えた。
アブー・ムハンマドはバスラに帰り、幸せにくらした。

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次回は、若者ヌールと勇ましいフランク王女の物語です。

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