以前『易経 (周易) 』※)について整理しましたが、それを改修して、より一層精密な人間の運命を予言する書とした、前漢の思想家揚雄の一〇巻から成る『太玄経』(太玄易)という著書があります。
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当たるも八卦、当たらぬも八卦 易経って何?
易経 実際に占う方法です
易経 実際に易を占ってみましょう。
易経 本来の在り方を知ることが大事です。
干支から見る、2014年甲午から2015年乙未の解明・啓示
易経 六十四卦配列早見表!
揚雄は、人間の諸現象は『老子』の唱える「玄 (無) 」を根源とし、天・地・人を基本要因とし、その組合せでとらえられるとして、易の六十四卦にたいして八十一首の図式をつくり、その現象の終始の展開を象徴するため六爻に対して九賛を設けて、暦学、天文学、陰陽五行説などと結合した漢代易学の成果を吸収しつつ、『老子』に由来する「玄」に根本原理を求めました。
楊雄は自分を孔子に見立てていた節があり、それは『論語』にあたる『法言』(王道を論じて道徳による政治を説いた)を書き、『易経』にあたる『太玄経』を書いて、陰陽の二元の代わりに始・中・終の三元で宇宙万物の根源を論じていますが、どうもこのあたりが朱子学の開祖の朱熹の逆鱗に触れ、大きく否定されていたようです。
なお、『太玄経』は『易経』をなぞらえたものだとかパクリだとかいわれているものの、その卦の組み方は『易経』のそれとはかなり異なって「老荘思想」を多く取り入れており、易占を社会情勢に応じた合理的なものにしようとしたもので、約200年にもおよぶ前漢時代の学問の成果が詰め込まれてもいるものなのです。
『太玄経』の構成をざっと整理するとこんな感じです。
・易において爻は陰と陽の2つからなるが、太玄においては「天、地、人」から成る。
・これは、「一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず」という『老子』の考えかたに基づく。
・玄とは易における太極のようなものである。
・見て之(玄)を知ればそれは「智」、之(玄)を愛すれば「仁」、之を決断すれば「勇」となる。
・これは、1つの家(または部、州、方)が2つ、3つの家(部、州、方)に成る過程を示している。
・易が陰陽二元論から成るのなら、太玄のそれは天、地、人の三才三元論からなる。
・三才とは「天、地、人」のことで、世の中全体という、大局的な意味合いとなる。
・三元とは天元、地元、人元のことを指す。
・天元とは気であり、天干つまり甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸のことです。
・地元とは体であり、地支つまり十二支の子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥のこと。
・人元とは用であり、蔵干つまり十二支の中に含まれている十干としての作用のこと。
・『易経』において太極が陰陽に分かれ、さらに四象に分かれて八卦となり、六十四卦になっている。
・『太玄経』においては、上記のように太玄は3ずつに分かれ、八十一首が現れる。
・『易経』の六十四卦には乾為天、水雷屯、山水蒙などがあるように、八十一首にも中、周、閑、少といった名がある。
※)参考:太玄経の智恵
・その現象の終始の展開を象徴するため、『易経』の六爻に対して九賛が設けられている。
・『太玄経』の八十一首ひとつひとつが九賛から成り、この賛の数は合計729となる。
・この729という数は、1年間の時間の流れに対応しており、1年365日を循環する
例えば最初の首の「中」の9つの賛は、1月1日昼、1日夜、2日昼、2日夜、3日昼、3日夜、4日昼、4日夜、5日昼に割り当てられ、次の首である「周」は1月5日夜から始まる。
なかなか日の当たらない『太玄経』ですが、この機会に一読してみてはいかがでしょうか。