This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(22) 上方世話物『曽根崎心中』

歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。

This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。
今回は、上方世話物の中から『曽根崎心中』です。

『曽根崎心中』は、元々は人形浄瑠璃として上演された近松門左衛門作の「世話物」で、実際に起こった心中事件に取材して作られました。
日本のシェークスピアと呼ばれることもある近松は、それまでは『出世景清』など英雄豪傑を描く時代物の作者として知られており、市井の題材を扱った世話物の作品は『曽根崎心中』が初めてでしたが、以後『冥途の飛脚』『心中天網島』『女殺油地獄』など世話物にも名作を残しています。

天満屋の遊女お初となじみの徳兵衛は、友人の九平次に金を騙し取られるなどして、次第に追い詰められていきます。
天満屋で心配しているお初のもとに徳兵衛がやって来たため、お初は他の客に見られないように縁の下に匿います。
やがて心中を決意した2人は、曽根崎の森へと向かうという、相愛の若い男女の心中の物語。
「此の世のなごり。夜もなごり。死に行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜」
で始まる有名な道行の最後の段は
「未来成仏うたがひなき恋の手本となりにけり」
と結ばれ、お初と徳兵衛が命がけで恋を全うした美しい人間として描かれています。

『曽根崎心中』

【生玉神社境内】

お初「会うに会われぬその時は、この世ばかりの約束か。三途の川は堰く人も、堰かれる人もござんすまい」

堂島新地の天満屋遊女お初は平野屋の手代徳兵衛と深く愛し合う仲だった。
ところが、徳兵衛に、店の主人で叔父である久右衛門から、持参金付きの縁談が持ち上がる。
徳兵衛の実家の継母は、徳兵衛に知らせずにこれを承諾し、持参金銀二貫目(約240万円)を受け取っていた。
徳兵衛がこれを断ると、お初のせいだと怒った久右衛門は、持参金の返済を迫り大坂から追い出すと息巻く。
生玉神社で、お初にめぐりあった徳兵衛は、もう会う事が出来ないと嘆くが、お初は徳兵衛に二人の仲はこの世だけではない強い絆だと励ます。

しかも、徳兵衛はやっとの思いで継母から取り戻した二貫目を、金のやりくりに困る親友の油屋九平次に少しの間貸していたが、期日が来ても返済されていない。
ちょうど来合わせた九平次に向かい、徳兵衛は証文を手に返済を求める。
九平次は「証文に押された印判は先日紛失した物だ」と言い立て、徳兵衛こそ証文を偽造した犯罪者だと騒ぎ、大勢の前で徳兵衛を散々に痛めつける。
詐欺の濡れ衣まで着せられた徳兵衛は、商人の面目を失って死を覚悟する。

【北新地天満屋】

お初「この上は徳さまも死なねばならぬ品なるが、死ぬる覚悟がききたい…」

生玉で別れたままの徳兵衛の身を案じるお初は、天満屋の門口に立つ傷だらけの徳兵衛を見つけ、ひそかに店の縁の下に忍ばせる。
そこへ酔った九平次がやってきて、徳兵衛の悪口を散々並べる。
怒りに震える徳兵衛をお初は必死で足で押しとどめ、九平次に向かって「徳さまは死なねばならぬ」と言いながら、縁の下の徳兵衛に足で心中の覚悟を問いかける。
徳兵衛はお初の足を刃物のように喉に当て同意を示す。

夜も更けて皆が寝静まった後、お初と徳兵衛はが天満屋を抜け出した。
そこへ油屋から知らせが来て、印判を偽った九平次の悪だくみが露見し徳兵衛の無実が明らかになる。
徳兵衛を心配して天満屋に来ていた久右衛門も実は二人を添わせる心だったと明かし、門口に立ち「死ぬなよ」と叫ぶ。
すでに時は遅かった。

【曽根崎の森】

「この世の名残、夜も名残。
死にに行く身をたとふれば仇しが原の道の露。
 一足づつに消えて行く、夢の夢こそ哀れなれ。」

街を離れた二人は、曽根崎の森を分け入っていく。
闇路にさまざまな心残りも浮かんでくるが、暁を知らせる七つ時の鐘の音を聞くと覚悟をきわめる。
手を合わせて目を閉じたお初の胸に徳兵衛が刃を向け、ついに二人は心中して果てるのだった。

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