This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(27) 江戸世話物『東海道四谷怪談』

歌舞伎は世界に誇る、日本の伝統芸能です。
しかし、元々400年前に登場したときには、大衆を喜ばせるための一大エンターテイメントだったのです。
なんとなく難しそうなので、ということで敬遠されている方も多いのかもしれませんが、そもそもは庶民の娯楽だったもの。
一度観てみれば、華やかで心ときめく驚きと感動の世界が広がっているのです。
しかも歌舞伎は、単に400年もの間、ただただ伝統を受け継いできただけではありません。
時代に呼応して常に変化し、発展・進化してきているのです。

This is ” KABUKI ” ( ノ゚Д゚) もっと歌舞伎を楽しもう!(4) 演目の分類と一覧について
前回は歌舞伎の演目をざっと整理してみましたので、ここからは具体的な演目の内容について触れてみましょう。
今回は、江戸世話物の中から『東海道四谷怪談』です。

『東海道四谷怪談』(通称『四谷怪談』)は、江戸三座のひとつ中村座で初演された、四世鶴屋南北の代表的な芝居です。
初演以来、本家の歌舞伎は言うに及ばず、平成の今日まで、落語、現代劇、映画、テレビから絵画、漫画、アニメーションまでジャンルを越えて様々なかたちで繰り返し上演、上映され、海外の舞台人にまで多大な影響を与えています。

元禄期に実際に起きた刃傷沙汰や、巷に残る伝説などを基に、71歳の南北が『忠臣蔵』の外伝という体裁で書きおろし、初演時は『仮名手本忠臣蔵』と抱合せの形で上演されました。
そのため、登場人物の多くは何らかの形で『仮名手本忠臣蔵』の世界と関係しています。
塩冶家の浪人四谷左門の娘お岩とお袖の姉妹を巡る怪談劇で、おもにお岩の夫民谷伊右衛門の極悪非道な行いによって、物語は進行していきます。
伊右衛門を孫娘の婿に迎えたい伊藤喜兵衛が仕込んだ毒薬によって、お岩の面相が変わり、恨みを残して死んでいく「元の伊右衛門浪宅の場」がとりわけ有名です。
こうした男女間の愛憎や人間の業、ともいえる暗部を赤裸々に描き、視覚的にも楽しませる舞台の仕掛け、エンタテインメント性の高い演出、登場人物たちの活力に満ちたキャラクターなど、いまなお観客の共感と好奇を呼び続けています。

『東海道四谷怪談』

塩谷(忠臣蔵での浅野の名前)の浪人四谷左門にはふたりの娘がいた。
姉のお岩は民谷伊右衛門という、やはり塩谷浪人の女房になったいたが、伊右衛門が相当なワルなのを知る父親によって家に連れ戻されている。
妹のお袖は佐藤与茂七という、これまた塩谷浪人と夫婦なのだが、今は離れ離れになっていた。

「浅草境内」~「地獄宿」~「浅草田圃」
妹のお袖は、昼は楊枝屋で働き、夜になると按摩の宅悦がやっている地獄宿で、おもんという名で客をとっていた。
父の左門は不器用で世渡り下手、姉のお岩は身ごもっていて動けない。
自分が何とかしなければ、食べていけない、生きていけない。
とはいえ夫のある身。
客に事情を話して勤めだけは許してもらっていたのだが。
そんなお袖に岡ぼれしたのが、直助という、これも塩谷ゆかりの小者。
地獄宿で彼女に迫るが、あと一歩というところで、夫の与茂七が登場し、横合いからかっさらわれた格好になって腹の虫がおさまらない。
一方、お岩の夫伊右衛門は、女房と復縁したくても、父の左門に過去の悪事を知られているから、その存在が煙ったくてならない。
そこで、ワルのふたりは考えたわけだ。邪魔なヤツは消しちまえ、と。
真っ暗闇の田圃道。直助は与茂七の提灯を目当てに切りつけ殺し、あげくに死人の面の皮を剥ぐという残酷さ。
と、その時、伊右衛門が血まみれの左門を追いかけてきてとどめを刺した。
このふたり、実は旧知の間柄。
そこへ、父を探すお岩と、与茂七を追うお袖がやってくる。
見れば、あたり一面が血の海で、父と与茂七が事切れているではないか。
思いもかけない惨事に気も動転する姉妹の前に、今駆けつけましたという顔をして伊右衛門と直助があらわれる。
伊右衛門はお岩とよりを戻し、直助はお袖と仮の夫婦になってともに仇を討ってやろうと約束する。

「浪宅」~「伊藤家」~「浪宅」
伊右衛門の元へ戻ったお岩だったが、産後の肥立ちが悪く病の床に。
そんな女房が煩わしく、生まれた我が子も疎ましく、日増しに冷たくなる伊右衛門。
それでも、父の仇を討ってもらいたくて、お岩はじっと我慢していた。
そこへ、隣の伊藤家から乳母のおまきがやってきて、誕生祝いとして赤ん坊には小袖を、お岩には血の道の妙薬をくれた。
お礼を言いに伊藤家に出かけた伊右衛門に、主の喜兵衛は大金を差し出し、孫のお梅の婿になってくれと言い出した。
しかも、先刻届けさせた薬は、実は顔を崩れさせる毒薬で、お岩が醜くなれば別れてくれるだろうと企んだことを白状する。
どうせ、お岩が疎ましくなっていたところだ。
ついでに高家に仕官できるのなら、それも悪くなかろうと伊右衛門は承諾した。
家に帰ってみると、喜兵衛が言ったとおり、お岩の顔が醜く変わっていた。
途端に邪険になる伊右衛門。
婿支度に金がいるからと、お岩の身ぐるみを剥いで、赤ん坊の蚊帳まで持って行ってしまう。
その上、途中で会った宅悦に金を渡し、お岩に間男を仕掛けてくれと頼む。
仕方なくお岩を口説こうとした宅悦だったが、拒絶され実は・・・と打ち明ける。
怒ったお岩は伊藤家に怒鳴り込もうと身だしなみを整えはじめるが、髪を梳けば大量の抜け毛。
しかも、その中から血がしたたり落ちるではないか!
びっくりして止めようとする宅悦ともみ合ううち、はずみで小平の刀で喉を切って死んでしまう。
そこへ帰ってきた伊右衛門。
これ幸いと、女房の仇として小平も殺し、お岩と小平を不義に見せかけ戸板の表裏に打ち付けて川に流そうという算段。
一騒動がすんだ頃、喜兵衛らに付き添われて、お梅が嫁入りしてきた。
いよいよ床入り。
が、しかし、そこにいたのは死んだはずのお岩!
首を討つと、その首はお梅だった。
喜兵衛を起こしに行くと、今度は小平!
驚いて討てば、その首はやはり喜兵衛。
お岩の怨念の仕業か。

「隠亡堀」
事件がもとで伊藤家は取りつぶされた。
残された喜兵衛の娘お弓はおまきとともに隠亡堀で非人の暮らしをしていたが、おまきは鼠に導かれるようにして、あやまって堀にはまってしまう。
その後で、やってきたのは、今は権兵衛と名を変えて鰻掻きをしている直助。
鰻のかわりにかかった、べっ甲の櫛をふところに。
そこへ、伊右衛門が母親のお熊と連れ立ちやってくる。
昔もらった高師直のお墨付きがあるとはいえ、今の状態では仕官もならぬ。
伊右衛門はすでに死んだものと見せかけようと卒塔婆を立てに来たのだ。
その卒塔婆を見つけ憎き仇が死んでしまったと嘆き悲しむお弓を見た伊右衛門は、後ろからお弓を掘に蹴り落としてしまう。
これで伊藤家は残らず滅びたことになる。
そろそろ暮れた。
伊右衛門が帰ろうとしたところに戸板が流れてくる。
見ればお岩の死骸、そして裏には小平の死骸。
ともに恨めしい口をきく。
伊右衛門が切りつけると、たちまち骨になって落ちた。

「深川三角屋敷」
一方、お袖は、直助に身体は許さねどもともに暮らし、洗濯を小商いにしていた。
裏の法乗院に、戸板に打ち付けられた男女の死骸が運びこまれたとの噂話。
お袖のところに持ち込まれた着物は、どうやらその男女が着ていたものらしい。
直助が隠亡堀で拾った櫛を金にかえるため出かけようとしたら、女の着物を浸けた盥の中から手がにゅうと出て直助の足首をつかむ。
直助もこれには仰天。
盥の中に櫛を落としてしまう。
お袖が、盥の中を探り、着物を絞ると水が血汐に変わりしたたり落ちる。
姉の身に何かあったのでは、と案じるお袖。
そこへ按摩の宅悦がやってきて、お岩の櫛に目を止め、事件の話をする。
姉の身にとんでもないとこが起きていたことを知り驚くお袖に、直助は、父親、与茂七、お岩の三人の仇が女手ひとりで討てるのかと水を向ける。
こうなったら直助に加勢してもらわねば。
お袖は、守ってきた操を捨てる。
寝静まった頃、たずねてきた男。
なんと死んだとばかり思っていた与茂七だった。
お袖は我が身の因果を嘆き、わざとふたりの夫に刺されて命を捨てる覚悟。
そのお袖が持っていた実の親の形見の品というのを見て、びっくり。
な、な、なんと、お袖は直助の血を分けた実の妹だったのだ!
その妹と契ったとあってはもはや畜生、生きてはいられぬ、と自害して果てる。

「夢」~「蛇山庵室」
美しいお岩がいた。その美しさに魅かれてお岩を抱くが、化け物に変わる。
なんと恐ろしい夢・・・。伊右衛門はお岩の亡霊に悩まされ続けて、すっかり弱り果てていた。
念仏を唱えてもらっていないとうなされてしまうのだ。
そして、またしてもお岩の亡霊があらわれる。
赤ん坊を抱いているので、伊右衛門があやそうとすると石の地蔵に変わってしまった。
お岩の亡霊は、伊右衛門の母親お熊やワル仲間の長兵衛までもとり殺す。
あらためてお岩の怨念の強さを思い知らされた伊右衛門を、忍び寄った捕手が囲む。
逃げようとした伊右衛門を、駆けつけた与茂七が討ち取るのだった。

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