古来から預言書の類のものは玉石混交で、政情不安になる周期においてはたびたびブームとなりますが、今回はそんな預言書について整理してみたいと思います。
その上でまずは大事な前提です。
予言はあくまで予言。
その中身を盲信したり、鵜呑みにするのではなく、自らの力で読み解き、あくまで先を予測するための要素のひとつとして捉え、客観的にしてかつ論理的に解釈することが肝要です。
未来は自ら変えていけるもので、文字に書かれた内容だけで自分の人生をコントロールされたり、思考停止に陥っては本末転倒。
自ら思考することを放棄することなく、また予言の内容を参考にしながらどう変えていくかといった観点を大事にしてください。
そこで本題に戻ります。
数ある予言書の中、有名なところでいうと、新約聖書の『ヨハネ黙示録』、ミシェル・ノストラダムスの『諸世紀』(いわゆる「ノストラダムスの大予言」です)、韓国・南師古の『格庵遺録』、古代インディアンの『ホビー大予言』、そして日本でも聖徳太子の『未来記』や岡本天明の『日月神示』等がありますが、中国でも非常に有名な七大予言書というものがあります。
・周時代の姜子牙著『万年歌』
・三国時代の諸葛孔明著『馬前課』
・唐時代の李淳風・袁天網共著『推背図』
・李淳風著『蔵頭詩』
・唐時代の黄蘖著『黄蘖禅師詩』
・宋時代の邵康節著『梅花詩』
・明時代の劉伯温著『焼餅歌』
の七書が中国の七大予言書ですが、これらは的中率が高かったために禁書となったり、著者を殺害するなど、非常に血なまぐさい歴史があり、また完本の形でないものもあります。
中でも唐の時代、七世紀に書かれた李淳風・袁天網共著の『推背図(すいはいず)』は完本の形で残っている数少ない予言書ですが、中国歴代王朝の支配者が読んだ際にあまりに的中率が高い予言書であったため、宋代の太祖は世を乱す妖書として禁書にしてしまうほどの門外不出の機密文書でした。
ちなみに「推背図」の推背とは、「背中を推す」という意味ですが、この「背中を推す」が何を意味しているのかは、諸説があります。
著者の袁と李の両人が予言を終えて一休みしようと互いに促しあって背を推したとも、「未来に向かって背を推し、前身させる」を暗示しているとも言われていますし、あまりに赤裸々に未来を書いてしまうことを恐れて「この辺で止めよう」と背を推したとも言われているのです。
そんな予言の内容は、60年周期(60象・十干十二支の60干支で象徴している予言内容)の考え方に基づき、第一象(甲子)から第60象(癸亥)までの各象で構成されています。
それぞれの象には象徴する易の卦やイラスト図が示され、イラスト図の予言内容を示す詩歌『識(しん)』、さらに深い予言内容の詩歌『頌(しょう)』がありますが、これらの詩文は暗号のようになっていることから、予言内容を紐解いていくという形式になっています。
ちなみにその背景にあるのは中国の東洋思想であり、全世界の事象をフォローしている訳ではなく、あくまで中国を中心とした予言書であることには気をつけねばなりません。
また一貫して述べられているのは、分裂と統一を繰り返してきた中国に必要不可欠な救世主待望論です。
なお、そんな推背図ですが、
・日本は消滅し、中国大陸の中で日本民族や日本文化がかろうじて存命する
・中国と台湾が統一される
と読み解ける内容も含まれているようです。
また一説には、四一象で朝鮮戦争(1950~1952年)、四二象で毛沢東による粛清・三反運動(1951年)・五反運動(1952年)、四三象で台湾の中国政策(1990年代)、四六象で湾岸戦争・東西冷戦の終結(1990~1991年)などの歴史的事件を、ほかにも太平洋戦争勃発(1939年)、チンギスハンの中国侵攻(1211年)、中国の文化大革命(1966年)、などを次々と的中させているとも言われているのです。
とはいえ、1000年以上昔の予言書ですし、すごく抽象的な予言なので、現在(ひとまずはこうであろうと)解釈されている内容をざっと並べておきます。
項目によっては随分おどろおどろしい内容ですが、一説には“第五十六象:己未”に書かれているのが『第三次世界大戦』が始まるという内容。
巷ではこれを来年(2015年)とする節もあるのですが、来年は甲午。
普通に己未として考えれば、次は2039年ですし。。。。ふむ。
第四十五象を第二次次世界大戦の終わった年1945年として考えると、中国と台湾が統一されるという第四十三象は1943年。
となるとその約30年後は1973年。大幅に先を読んで+60年だとしても2033年。
やはり、鵜呑みにするのは危険そうです。
そんな『推背図』ではありますが、(冒頭でも述べたように)自ら思考することを放棄することなく、また予言の内容を参考にしながらどう変えていくかといった観点で読み解いてください。
『推背図 目次相当の内容』
第一象 陰陽は循環する
第二象 栄枯盛衰は常のこと
第三象 権勢を誇る武則天
第四象 五英傑、唐を復興する
第五象 楊貴妃、馬嵬駅で「鬼」に逢う
第六象 安定した都の暮らし
第七象 異民族が唐に侵入す
第八象 裏切り・内部抗争で李家絶える
第九象 朱温、ついに唐を滅ぼす
第一〇象 血があって、頭がない
第一一象 誰が龍か、誰が蛇か
第一二象 無秩序だった五代時代
第一三象 漢の血筋が帰ってきた
第一四象 循環する五代王朝の興亡
第一五象 わずらわしい蜂が暗示するもの
第一六象 宋の太祖が臣下と会議す
第一七象 宋・遼の間に和議が成立
第一八象 貴婦人と犬
第一九象 過激な改革、人が去る
第二〇象 国情乱れ、農村疲弊する
第二一象 屈辱たる靖康の変
第二二象 高揚する南宋ナショナリズム
第二三象 不屈の人・節義の人、文天祥
第二四象 南宋は海の藻屑となって消えた
第二五象 ジンギスカンの幼名は「鉄木真」
第二六象 明国の夜明け
第二七象 明は「日と月」と書く
第二八象 燕王、翼を広げ領土を拡大
第二九象 明、黄金時代を迎える
第三〇象 明国六皇帝、片時も国境を忘れず
第三一象 奸臣の弾圧荒れ狂う
第三二象 顔黒反乱軍・李自成暴れまわる
第三三象 満洲族が漢族に辮髪を命ず
第三四象 白衣を着た有髪の軍隊
第三五象 清の堕落、西洋の侵略
第三六象 列国に操られる西太后
第三七象 中華民国の誕生
第三八象 第一次大戦に導入された戦車
第三九象 唐時代に真珠湾攻撃を予言
第四〇象 台湾にまつわる予言の数々
第四一象 毛沢東、血の粛清
第四二象 核に緊張する朝鮮半島
第四十三象(祖国統一=丙午・易卦は火風鼎)
約30年をかけて中国と台湾が統一される。
第四十四象(聖人が再臨誕生=丁未・易卦は火水未済)
両岸四地(中国大陸、香港、台湾、マカオ)で一国二制度が堅持され、中国に聖人が誕生し、中国が世界的なリーダー国家と認められるようになる。
第四十五象(日本が敗戦し国運が終わる=戊申・易卦は山水蒙)
日本が敗北して日本列島が沈没し、日本は武力を一切持つことなく武力解除される。
日本が領土問題を名目に戦争を挑発すれば失敗に終わる。
第四十六象(ハイテクの危機に直面=己酉・易卦は風水渙)
ハイテク技術が大きく発展したことで世界的な危機に直面するが、一人の勇士が身を挺して危機から守り、万民が死なずにすむ方法を実行する。
第四十七象(文化を重視し、軽武装になる時代=庚戌・易卦は天水訟)
武力解決を避ける時代となり、高度な文化交流が盛んになる高度文化時代が到来する。
王制がなくなり、農民出身の徳の高い偉大な指導者が誕生する。
第四十八象(風雨にさらされる50年間=辛亥・易卦は天火同人)
辰と巳の年に朱という姓の指導者が登場し、50年間、中国に君臨し、国を指導する。
第四十九象(短期的な世界混乱期=壬子・易卦は坤為地)
各組織が聯合戦線を組み、東西南北に世界が分裂し、八つに分かれるような動乱の動きになる。
第五十象(資源争奪戦=癸丑・易卦は地雷復)
資源争奪戦が寅年から始まり、人々はこの争奪戦のために生活が大変になり、苦労が増大する。
第五十一象(夫唱婦随の女性の価値が高まる時代到来=甲寅/易卦は地沢臨)
新時代には男女一組の指導者が誕生し、特に女性指導者の品行方正ぶりが高く評価される。
女性指導者の良妻賢母ぶりや女性的な感性と知性が国の安泰をもたらし、70年間は興隆する。
第五十二象(聖人が二度危機を救い、新時代が到来=乙卯・易卦は地天泰)
聖人が新時代の人類を指導していくが独自路線で非常な孤独を抱え、快楽の方向へ国を向かわせて危機に直面。楚(湖北省)呉(江蘇省)の指導者によって危機を乗り越える。
第五十三象(中華再復興の時代=丙辰・易卦は雷天大壮)
秦の姓を持つ陝西省出身の指導者が国を治め、儒教の孝の精神を重視する徳政を行う。
第五十四象(新風巻き込む中華文化時代=丁巳・易卦は沢天夬)
旧態依然の中華文化と新しい中華文化が融合して強大で持久力のある新しい中華文化時代が到来する。
そこには一人の傑出した人物の重要な作用があり、再び世界に新しい中華文化の魅力を再現できるようになる。
第五十五象(東方文化の興亡と盛衰=戊午・易卦は水天需)
日本は沈没し、大部分の流民になった日本国民は大部分が中国に受け入れられ、日本文化は中国の中で根づいて存続するようになる。
第五十六象(第三次世界大戦の勃発=己未・易卦は水地比)
兵士のいない戦争が起こり、その戦争は激烈で中国にも戦火が及ぶ。
第五十七象(天才少年が救世主となって戦争のない世を治める=庚申・易卦は兌為沢)
第三次世界大戦で荒れ果てた地球に身長100センチ以下の天才少年が『毒を以て毒を制す』武器を使って戦争を終結させる。その天才少年は呉越(浙江省あたりかベトナム)に誕生する。
呉越についてはこの解釈だけではなく、場所の正確な予測はできにくい。
第五十八象(大統一時代が到来=辛酉・易卦は沢水困)
第三次世界大戦で大動乱が終わり、各国が手を握って協力し合い、平和的な大統一時代が到来する。
第五十九象(人類の個人差がなくなる時代=壬戌・易卦は沢地萃)
大統一時代に入り、個人差が徐々になくなり、都市や政府がなくなり、自他の区別がなくなるようになる。
五色人種の壁がなくなり、東西南北が和睦し、人類一家族時代となる。
第六十象(古い世界が終わり、新世界が始まる=癸亥・沢山咸)
矛盾や対立がなくなり、新世界が始まる時となる。
参考:
2010年 庚寅
2011年 辛卯
2012年 壬辰
2013年 癸巳
2014年 甲午
2015年 乙未
2016年 丙申
2017年 丁酉
2018年 戊戌
2019年 己亥
2020年 庚子
2021年 辛丑
2022年 壬寅
2023年 癸卯
2024年 甲辰
2025年 乙巳
2026年 丙午
2027年 丁未
2028年 戊申
2028年 己酉
2030年 庚戌
2031年 辛亥
2032年 壬子
2033年 癸丑
2034年 甲寅
2035年 乙卯
2036年 丙辰
2037年 丁巳
2038年 戊午
2039年 己未
2040年 庚申