錬丹術って知ってますか?不死の薬を作る中国最古の書物『周易参同契』には何が書かれている?

錬丹術って知ってますか?
錬丹術とは、丹薬(仙薬・金丹)という不老長生の薬を得ようとするものです。

以前、錬金術については少し整理してみましたが、今回は多大な影響力を持ち、後世の錬丹術師や不老長生を目指す者たちから「万古丹経の王」と呼ばれて重要視されてきた、中国最古の錬丹術の書物『周易参同契』についてです。

錬金術!現代科学に繋がる、人類の見果てぬ夢!

『周易参同契』の著者は後漢の上虞(浙江省)の魏伯陽とされており、葛洪の『神仙伝』巻1に『参同契五行相類』3巻をつくったとあるのですが真偽は未詳です。
題名の「参同契」は三位一体という程度の意味で、「易(儒教)」「黄老道(道教)」「錬丹術(仙道)」の三者は相通ずるものであるという見解の表明となっていますが、中でも周易が主となることから「周易参同契」と題されたといわれています。
本文は上篇・中篇・下篇から成っており、その題名のとおり、錬丹術や養生術を易、陰陽、五行などの論理を駆使して解説したものですが、文章には謎に満ちたたとえや隠語が多く、非常に難解な内容となっています。

そもそも道教は黄帝や老子を教祖として起った宗団ですが、そこに古代的ないくつかの呪術や魔術が混入し、上天世界に到達して神仙となることを教えていた中、それを中心のテーマとしたのがこの『周易参同契』であるといわれています。

「白を知り黒を守れば、神明自ら来る。
 白は金の精、黒は水の基。
 水は道の枢、その数、一と名づく。
 陰陽の始めにして、玄、黄芽を含む。
 五金の主にして、北方の河車なり。
 故に鉛は外黒く、内に金の華を懐く。
 褐を被りて玉を懐き、外は狂夫となる。
 金を水の母となし、母は子の胎に隠る。
 水は金の子にして、子は母の胞に蔵る。」

実際『周易参同契』は、汞(水銀)と鉛の配合を錬丹の基本としており、易理を用いて陰陽五行の複合的シンボリズムに基づくさまざまな隠語で錬丹の材料や過程を表現しています。
「鉛汞」といえば錬丹術の代名詞となり、鉛汞を表す青龍・白虎といった術語は後の内丹術に引き継がれています。
また丹薬は水銀やヒ素が含まれており、ごく微量に用いればある種の病気に有効ですが、継続的に大量服用すれば中毒となることから、錬丹術の流行によりこれらを服用して逆に命を縮める人が後を絶たなかったようです。
実際、少なくとも6人の唐の皇帝が水銀中毒で死亡したことが、清代の趙翼の著『二十二史箚記』巻19新旧唐書「唐諸帝多餌丹薬」に述べられているそうで、秦の始皇帝もそれによって死期を早めたという説もある程です。

しかし『周易参同契』の影響は絶大で、後に四世紀に入ると『周易参同契』を含めた初期の頃からの中国錬金術を集大成した葛洪の『抱朴子』が出てきます。
抱朴子より学ぶ!長生きという個人的な目的を善い行為へと転化させた葛洪の業績を見よ!
ここで重要になったのは朱色の辰砂(硫化水銀に相当)でして、これを熱して乾溜すると水銀を得られるのですが、これを硫黄と化合すると元に戻る、といった変化と回帰の性質が、改めて水銀に注目を浴びさせることとなりました。

こうした『周易参同契』ですが、魏伯陽は錬丹術を儒教の易の哲学と道教の哲学にもとづいて説明することによって、神仙への道程としての重要性を立証しようとしたのかもしれません。
その試みが成功したかどうかは、神のみぞ知る、です。

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